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放射線研究会リスト

放射線シンポジウムリスト

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第50回 放射線科学研究会概要 (聴講記)      

 平成25年4月19日(金) 住友クラブ

1. イオンビーム突然変異を利用した小麦の遺伝子解析と品種改良 (会員ページ )

  (公)福井県立大学生物資源学部遺伝資源学 教授 村井 耕二

  小麦の乾燥種子にイオンビームを照射することにより、遺伝子突然変異体が作出できる。私たちは10年におよぶイ オンビーム照射実験の結果、1万を超える小麦突然変異系統を作出した。これらの中から、小麦の収穫時期の早晩性に 関する突然変異体の解析を進めている。本講演では、これらの知見を利用した小麦の品種改良について紹介する。
 
2. 1つの粒子による多機能複合ナノ材料の形成 (会員ページ )

大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 教授 関 修平

  近年の微細加工技術は、光や放射線の相互作用の本質である励起・イオン化とそれに伴う化学反応を、 「集束」されたビームを用いて一定の空間限定することによって実現されている。一方で放射線を用いた化学反応解 析が、G値に代表されるように高い定量性を示す最大の要因は、放射線の高い透過能に起因した均一な活性種の分布が その根底にある。ここでは、両者の「優位性」をあえて無視し、単一の粒子によって引き起こされる“不均一性 ”と、高い透過能に由来した“次元制御性”を巧みに用いた、「ありとあらゆる材料」のナノ構造化のための手法と 、複合機能を有するナノ材料の形成に関する一連の研究成果について紹介する。
 
3. 福島第一原子力発電所事故からの復興に貢献する放射線利用技術 (会員ページ )  

(独)日本原子力研究開発機構 量子ビーム応用研究部門

研究推進室長代理  松橋 信平

 原子力機構では、東日本大震災をきっかけとする福島第一原子力発電所事故により広く環境中に拡散した放射性セシウムを除去し、環境の回復を図る活動を展開している。この中で、水中に極微量溶けているセシウムを除去できる捕集材の開発や、土壌中のセシウムを吸いにくいイネの開発など、復興への貢献を目指した研究開発を進めている。この講演では、これまでの放射線利用研究で培ってきた知識や経験を活かした私達の取り組みについて紹介する。
 
4. 放射線疫学の基礎的手法 (会員ページ )

  (公財)放射線影響研究所 疫学部  小笹 晃太郎

  放射線影響研究所は前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)以来、被爆者追跡調査によって原爆放射線による健康後影響のリスク評価を行ってきた。本講演では、そのための疫学方法論について、対象者、影響を評価すべき因子、および結果指標の定義および情報収集の方法、当該因子の結果に対するリスク評価方法と因果推論、および偏りや交絡、因子間の交互作用の評価方法等について概説する。
 
  

第49回 放射線科学研究会概要 (聴講記)      

 平成24年10月19日(金) 住友クラブ

1.セメント材料およびエネルギー材料分野における中性子散乱技術の利用 (会員ページ )

京都大学原子炉実験所粒子線基礎物性研究部門 中性子材料科学研究分野
 准教授 森 一 広

  近年、大強度陽子加速器施設/物質・生命科学実験施設(J-PARC/MLF、東海村)の完成によって、中性子散乱装置の性能が大幅に向上しています。それに伴い、特に産業応用の分野では、中性子を利用する研究者・技術者の数が飛躍的に増えています。このような背景を踏まえて、本講演では、中性子散乱の基礎に加え、セメント材料やエネルギー材料の話題を中心に中性子散乱の利用例についてご紹介致します。 
2.陽電子消滅法による耐熱鋼のクリープ劣化評価
      −陽電子消滅法で耐熱鋼のクリープ余寿命は予測できるのか?−(会員ページ )

東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センター 准教授 井上 耕治

  陽電子は、電子の反粒子であり正の電荷を持っています。そのため材料中では、陽電子は、正の電荷を持つ原子核が存在しない場所、例えば空孔や転位などの空孔型欠陥に局在し、その位置で電子と対消滅しγ線を放出します。このγ線を検出することで、空孔型欠陥の情報を得ることが可能です。我々は、この手法(陽電子消滅法)を耐熱鋼のクリープ試験片に適用し、陽電子による空孔型欠陥の挙動観察から耐熱鋼のクリープ余寿命予測を行おうとしています。その研究について紹介します。
3.低線量被ばくを考える −福島第一原発事故を受けて−(会員ページ )

福井大学 高エネルギー医学研究センター がん病態制御・治療部門 准教授 松本 英樹

  現在,放射線および放射能なくして医療は成り立たなくなってきています。また人類の生活エネルギーとして原子力エネルギーが利用され始め,地球温暖化問題によりその利用が見直されてきていた矢先,昨年3月11日,東日本大地震が起き,そして福島第一原子力発電所の事故が発生しました。
   今回のセミナーでは,日本の現状に鑑み,低線量放射線に対する細胞の応答のしくみを概説し,また福島および近隣県での教育セミナー活動の経験を紹介します。
会員サロン
◇大阪府放射線技師会の歩みと活動報告(会員ページ )

社団法人 大阪府放射線技師会 土谷 輝美

  大阪府放射線技師会は、昭和23年に関西放射線技師会として大阪大学付属病院に誕生しました。そして、来年度には65周年を迎えることとなりました。診療放射線技術の向上、診療放射線技師の職業倫理を高揚、そして府民の健康維持並びに増進に寄与することを目的として活動しています。患者本位の医療の確立と診療放射線技師の地位の向上を目指すべく行ってきたこれまでの歩みと活動をご紹介します。
  

第48回 放射線科学研究会概要 (聴講記)      

 平成24年7月13日(金) 住友クラブ

1.アモルファス金属への粒子線照射によるナノ構造•特性変化(会員ページ )

大阪府立大学大学院工学研究科 物質・化学系専攻 准教授  堀 史説

  アモルファス金属は結晶性を持たない物質で非平衡に作成されるため、外部からのエネルギー付与による状態変化は結晶材料とは異なり様々な変化が起こり得る。さらに局所的に高エネルギーを付与できる粒子線照射を用いると、照射条件によっては正反対の性質の変化が現れることなどが解ってきた。このような特異性を利用して、種々の照射条件から結晶材料では得られない新しい改質材料の開発の可能性などについて紹介する。
2.高速重イオン照射によるナノ粒子の形状・特性制御(会員ページ )

(独)物質・材料研究機構 量子ビームユニット 主席研究員 雨倉 宏

  エネルギーが10−1000 MeVと極めて高い重イオンビーム(高速重イオンと呼ばれる)をガラス中に分散した球形の 金属ナノ粒子に照射すると、ビームと同方向にナノ粒子が伸び、球形から楕円ナノ粒子そしてナノロッドへと変わる 現象が報告されている。本講演では、現時点で提案されている変形メカニズムとその基礎を解説したのちに、我々の 偏光分光法などの実験結果とモデルの適合性について論じる。
3.コンプトン散乱を用いた電子状態研究(会員ページ )

(公財)高輝度光科学研究センター 利用研究促進部門 副主幹研究員  伊藤 真義

  X線の散乱現象としてコンプトン散乱はよく知られているが、それが物性研究に使われていることはあまり知られていない。クライン・仁科の公式では、電子は静止しているとして導かれているが、実際には電子は運動しておりドップラー効果として散乱X線に電子運動量の情報を与える。また、入射X線が円偏光している場合は、 電子スピンの向きによって散乱断面積が変化する。講演ではコンプトン散乱を利用した電子状態研究、磁性研究例を紹介する。
4.クラスターイオン照射に対する固体の応答(会員ページ )

(独)日本原子力研究開発機構 高崎量子応用研究所 研究主幹 鳴海 一雅

  複数の原子が結合しイオン化した分子/クラスターイオンを固体に照射した場合、固体内で時間・空間的に非常に近接した原子衝突が起こる。その結果、単原子イオンの場合とは異なる照射効果(クラスター効果)が観測される。講演では、固体内原子衝突に由来する種々の現象について、MeV領域の炭素クラスターイオン、keV領域のC60イオンを固体に照射した場合に観測されたクラスター効果を紹介し、その起源について議論する。  
  

第47回 放射線科学研究会概要 (聴講記)      

 平成24年4月20日(金) 住友クラブ

1.放射性セシウムの地水圏環境での動態と関西地域でできる東北支援(会員ページ )

京都大学原子炉実験所原子力基礎工学研究部門 准教授 藤川  陽子

  放射性物質の環境動態や廃水・固体放射性廃棄物の処理処分に関する研究において、放射性のヨウ素・セシウムはもっともよく研究されてきた核種に属する。これは、発電用原子炉等からの高レベル放射性廃棄物の最終処分の安全評価では、長半減期の放射性同位体であるI-129, Cs-135が重要核種として問題になるためである。本講演では、Cs-137の地水圏環境における動態解明研究の結果等を紹介し、放射性セシウムの特性をふまえて、関西地域が行える東北支援のあり方について聴講者の方々と共に考えたい。
2.エネルギー弁別型X線装置 〜X線でのエネルギースペクトルの検出と活用(会員ページ )

静岡大学電子工学研究所 准教授           
株式会社ANSeeN 取締役最高技術責任者 青木 徹

  これまでX線のエネルギー情報は先端物理の世界で使われてきました。今回は、半導体検出器の高性能化と信号のフルデジタル処理でダイナミックレンジを大幅に拡大し、適用範囲を一気に実用X線撮像機まで拡大したデバイスを紹介します。工業・医療等の実用的な撮像を想定しCT撮像などでの材質識別、高コントラスト画像などを紹介します。また、個人が所有できるレベルの小型の線量計などの新しい展開を併せて紹介します。
3.低線量放射線影響の虚像と実像:ニューラルネットワークス統計による解明(会員ページ )

京都大学名誉教授 佐々木 正夫

  原爆放射線影響は放射線人体影響の定量評価の基礎となっているが、この研究領域は戦後我が国の研究者には封印されてきた。福島原発事故に遭遇し研究者の対応の軸足もぶれ、逆輸入の科学の学術的基盤の瑕疵が浮き彫りとなった。最近、原爆被爆者の追跡調査結果がデータベースとして放射線影響研究所より公開された。ニューラルネットワークス理論の新しい統計法を考案し、原爆被爆者の発がん・非がん影響を解析した結果、低線量影響の実体とその分子生物学的背景が浮き上がってきた。  
会員サロン 
 ◇体質研究会と放射線(会員ページ )

(公財)体質研究会・JAPI  中村 清一

  体質研究会は昭和16年に設立されました。しかし、戦後、社会情勢の変化で活動困難な状態に陥っていました。昭和59年、菅原努先生により大改革が行われ、現在、体質研は、ライフスタイルと健康、放射線の健康影響、放射線照射利用の普及 等に関する調査・研究活動を、また、「環境と健康」の発刊、講演会の開催などを行っています。このうち、放射線と関係のある活動(JAPI、高自然放射線地域の健康調査)について紹介します。

第46回 放射線科学研究会概要 (聴講記)     

 平成23年10月21日(金) 住友クラブ

1.前立腺小線源療法のこれから(会員ページ )

多根総合病院放射線治療科 部長 石井 健太郎

  前立腺癌に対する放射線治療は手術と同等の効果が期待できることが知られています。その中でもI125線源を用いた小線源療法と IMRT(強度変調放射線治療)は根治的治療として重要な位置を占めています。小線源療法は低リスク群のみならず、外照射と併用する ことにより中間リスク群から高リスク群の前立腺癌にまで適応が広がりつつあります。今回は、小線源療法の最近の動向をIMRTとの 比較を交えて紹介します。
2.放射線加工による金属捕集材の開発と金属資源回収への応用(会員ページ )

(独)日本原子力研究開発機構  量子ビーム応用研究部門 環境・産業応用量子ビーム技術研究ユニット長 玉田 正男

  高分子の放射線加工技術であるグラフト重合は、特定の金属イオンに対して親和性の高い官能基を繊維状の高分子基材に導入できる ことから、回収したい金属資源に応じた金属捕集材を合成することが可能です。講演では、放射線グラフト重合の特長と合成した 金属捕集材の応用として、低濃度で存在するため、これまで見逃されていた海水中のウランや温泉水中のレアメタルであるスカンジ ウムなどの金属資源を回収した成果を紹介します。
3.イメージングプレートにおける消えない潜像〜ゴースト像の原因と解決(会員ページ )

東北大学大学院薬学研究科 講師 吉田 浩子

  二次元画像センサーであるイメージングプレート(IP)は、読み取り後、可視光照射により残像を消去し何度でも再使用できる特長を もつ。しかし、比較的高い線量を照射したり、繰り返し使用したIPでは、潜像は完全に消去されずゴースト像として観察される。我々は、 従来考えられてきた600nm近傍の光で励起される準位の電子の他に、より短波長側の光によって励起される深い準位に電子が局在する ことを明らかにし、これがゴースト像の原因であることを示した。
4.高活性な光触媒の開発と放射光利用による局所構造解析(会員ページ )

大阪府立大学 理事・副学長 地域連携研究機構長・21世紀科学研究機構長・学術情報センター長 安保 正一

  自然エネルギーの利用が一層重要になってきた今、クリーンで無尽蔵の太陽光を有効に利用する高活性な可視光応答型光触媒の開発は 環境・エネルギーの課題に関連して重要である。講演では、光触媒の応用実用化の現状を紹介し、その後、イオン工学技術を駆使した 高活性な可視光応答型光触媒の開発に関し、光触媒機能とXAFSによる局所構造の解析結果の関連性に注目して解説する。

第45回放射線科学研究会概要  (聴講記)        

 平成23年7月22日(金) 住友クラブ

1.量子ビームを利用した無機材料の磁性改質とその評価(会員ページ )

大阪府立大学 21世紀科学研究機構 教授 松井 利之

 室温付近に強磁性―反強磁性一次磁気相転移をもつB2型FeRh合金に MeVからkeV領域のエネルギーを持つイオンビームを照射すると、弾性的 はじき出しに伴う付与エネルギーに依存してその磁気特性が変化します。講演ではイオンビーム照射による磁気改質、特にイオンマイクロビー ムや集束イオンビームを用いた局所磁気構造の作製について述べるとともに、放射光を利用したXMCD解析やPEEMによる磁区構造観察結果につい て言及します。
2.放射光X線による応用磁性材料の磁気評価技術(会員ページ )

(財)高輝度光科学研究センター利用研究促進部門 分光物性IIグループ 主幹研究員 中村 哲也

 磁性体は磁気記録装置やモーターなどの要となる材料です。レアメタル問題や省エネとも密接に関係しており、一層のこと磁性材料研究の 重要性が増しています。このような動向を背景に、近年では先端的な磁気評価技術として放射光が大きな役割を担うようになっています。講 演では、材料中の磁化を含有磁性元素毎に分離して評価可能な「X線磁気円二色性実験」について、実用材料への応用例とともに紹介します。
3.三次元アトムプローブによる原子力材料のナノ組織観察(会員ページ )

(財)電力中央研究所 材料科学研究所 西田 憲二

 原子力プラントに使用されている材料は中性子や熱にさらされることによって材料の特性が変化します。これらの変化を精度良く評価・ 予測するためには材料内部で起こっている現象の理解が必要ですが、これらの現象は数〜数十ナノメートルの極めて小さなスケールで起こ っていることが多くあります。三次元アトムプローブはこのような極微小領域の元素の分布を高感度に分析できる装置であり、本講演では 鉄鋼やステンレスといった原子炉材料内部で起こっているナノ組織変化を三次元アトムプローブにより直接観察した結果を紹介します。
4.イオン照射によって導入される点欠陥のふるまいを利用した新しいナノテクノロジー(会員ページ )

高知工科大学 物質・環境システム工学科 教授 谷脇 雅文

 高速イオンが物質に照射されると原子と衝突します。はじきとばされた原子は次々と衝突をくりかえし、結晶の中に、原子空孔とそれと 同数の格子間原子が形成されます。ほとんどの物質ではこれらの点欠陥はいずれ合体消滅するのですが、いくつかの半導体ではこれらが生 き残り、微細なセル状構造ができます。この現象のメカニズムと、それを利用したナノ技術を紹介します。

第44回 放射線科学研究会概要   (聴講記)    

 

 平成23年4月22日(金) 住友クラブ

1.臨界実験装置を用いた加速器駆動未臨界システム実験と原子力人材育成(会員ページ )  (会員専用・講演資料)    

京都大学原子炉実験所 原子力基礎工学研究部門 教授 三澤  毅

 京都大学原子炉実験所の臨界実験装置(KUCA)は1974年より運転を開始した低出力原子炉で、主に原子炉物理の基礎実験を行うために 利用されてきた。特に近年、新しい原子力システムとして提唱されている加速器駆動未臨界システムの基礎実験を世界に先駆けて開始 した。また、35年以上にわたり学部学生・大学院生向けの原子炉実験教育を行ってきており、国内外の原子力人材育成に大きく貢献してきた。
 
2. 放射線加工ゲルによる和紙の改質(会員ページ )

(独)日本原子力研究開発機構 高崎量子応用研究所 産学連携推進部 吉井 文男

 著者らは、放射線橋かけハイドロゲルによる湿潤環境で傷治療を行う創傷被覆材(ビューゲル)を製品化し、その技術を更に発展させ、 カルボキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体が水とのペースト状照射でハイドロゲルになることを見出した。これを手漉き和紙 に細かく分散させたところ困難とされていた吹き付けコーテイングが可能になり、得られた製品の強度が著しく改善でき、機械漉き和紙の 収縮性も抑制できことを実証し、製品化に繋げた。
 
3.大阪府立大学附属獣医臨床センターにおける放射線治療について(会員ページ )

大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 獣医学専攻 教授 久保 喜平

 近年、伴侶動物の飼育環境の向上に伴い、人と同様、高齢化に伴う疾患が増加している。これに伴い、腫瘍疾患の放射線治 療に対する需要が高まりつつある。関西唯一の獣医系大学である大阪府立大学では、平成21年のりんくう地区移転を契機に、高エネル ギー放射線治療を開始した。今後、獣医領域において、放射線治療を中心とする新たな高度診療技術の整備が一層求められる。
 
会員サロン 
 ◇PET検査薬の供給について(会員ページ )

日本メジフィジックス梶@神戸ラボ ラボ長 井上 善雄

 PET検査は、質の高い検査が可能である反面、使用する核種の半減期が短いため、長い間PET検査薬の院内製造が可能な施設でのみ検査が 行われてきました。弊社ではPET検査の普及に向け、2005年8月からPET検査薬であるFDGスキャン注の供給を開始しました。ここでは、FDGス キャン注の製造出荷並びに安定供給への取り組みについてご紹介します。

第43回 放射線科学研究会概要  (聴講記)    

 

 平成22年10月15日(金) 住友クラブ

1.放射光および中性子を応用した高分子材料の構造解析(会員ページ )

JSR株式会社四日市研究センター 主任研究員 冨永 哲雄

 近年新しい機能を持つ高分子材料が次々と開発されており、これら新規機能性高分子の開発には精密な構造解析が求められている。放射光および中性子を応用した構造解析技術は、大型研究施設の充実に伴い近年急速に発展しており、高分子材料についても強力なツールとして期待されている。本講演では,放射光および中性子を用いた高分子材料の構造解析技術および弊社高分子材料への応用例について紹介する。
 
2. 医療と放射線(会員ページ )

京都大学原子炉実験所、副所長、原子力基礎科学研究本部 放射線安全管理工学研究分野 教授 高橋 千太郎

 現在では、放射線は医療にとってなくてはならないものとなっている。特に、周辺の科学・産業(情報科学やライフサイエンスなど)の発展に伴って、新しい利用・技術が生まれつつある。一方、「日本人のがんの3.2 %は診断X線による」という記事がメディアに取り上げられるなど、一般の方々の放射線に対する不安感は依然強い。最近の医療分野における放射線の新しい利用を概観するとともに、放射線安全について考察する。
 
3.食品照射の内外における動向について(会員ページ )

大阪府立大学大学院理学系研究科 准教授 古田 雅一

 放射線照射による食品や農産物の保存技術、「食品照射」は殺菌のみならず、成熟、発芽、老化等を放射線照射により抑制する農作物や食品の物理的保存技術である。本講においては食品照射の技術開発の流れを踏まえて照射処理の実際について簡単に紹介するとともに安全性や消費者動向などについて最近の内外の動向を経済規模の視点も含めて述べる。
 
会員サロン 
 ◇食品照射検知法の最近の動き(会員ページ )

   株式会社 コーガ アイソトープ 生産部課長 廣庭 隆行

 2005年の原子力政策大綱等により、食品照射を進める上での食品照射検知法の必要性が取り上げられ、2007年には熱ルミネッセンス法(TL法)による照射検知の公定法が発行された。さらに2009年度までに検査品目を増やすためのTL法の改訂やシクロブタノン法の追加、ESR法の検討などが行われている。これらの最近の動向について特にESR法を中心に紹介する。
 

第42回 放射線科学研究会概要    (聴講記

 

平成22年7月16日(金) 住友クラブ

1. 地球生命の起源はパンスペルミア(宇宙胚種)か?(会員ページ )

      広島大学生物圏科学研究科 准教授 長沼 毅

  パンスペルミアは「宇宙に漂う生命の種子」であり、それが地球など適当な惑星に降下してその惑星生命の起源となるというパンスペルミア仮説(胚種広布説)が古くから提唱されている。宇宙空間を生物が移動するとき、最も過酷な条件は真空でも無重力でもなく、放射線である。この講演では、いろいろな微生物の放射線「超」耐性の生物学的背景や生残条件などを考察しながら、パンスペルミア仮説の可否を検討する
2.多段サイクロトロンシステムRIBFの挑戦(会員ページ )

理化学研究所仁科加速器研究センター加速器基盤研究部 高安定化担当副部長 福西暢尚

  仁科加速器研究センターが推進するRIビームファクトリー計画においては、自然界に安定に存在しない短寿命RIを大強度で発生させ、宇宙における元素合成仮説の実験的検証及び短寿命RIの構造、反応様式の解明を目的とし、計4台の大型サイクロトロンからなる多段加速器システムを建設し、2006年末より運転を開始した。本講演では世界に類をみないRIBF多段サイクロトロンシステムについてご紹介させていただく。
3.陽電子による照射環境下に生じる格子欠陥のその場観察(会員ページ )

京都大学大学院工学研究科附属量子理工学教育研究センター(兼 原子核工学専攻) 准教授 土田 秀次

  陽電子は、材料科学(物質の物理的・化学的性質の探査)や医療(PETによる画像診断)などの幅広い分野で利用されている粒子(電子の反粒子)です。この陽電子は、物質中に在る原子レベルの格子欠陥を調べることに威力を発揮します。本講演では、陽電子ビームを用いてイオンビーム照射中の物質にできる格子欠陥をその場観察した研究結果を紹介します。
4.重イオンビームを用いた高エネルギー密度状態の生成と実験室惑星科学(会員ページ )

東京工業大学大学院総合理工学研究科創造エネルギー専攻 教授 堀岡 一彦

  誘導加速モジュレータをベースにした新型のイオン加速器が研究開発中であり、バンチあたり109〜1010個程度のGeV級の重イオンを供給出来ると期待されている。GeV級の重イオンの固体標的中での飛程は大きく阻止能は良く知られているため、高出力ビームを標的照射することにより大体積/均一で、良く定義された物質の状態を形成出来る。そのようなビーム照射標的物質は、超高圧力、高温/高密度、高い歪速度等で特徴づけられ、新物質の創成、エネルギー科学、さらには惑星科学などに貢献できる可能性がある。

第41回 放射線科学研究会概要    (聴講記

 

平成22年4月23日(金) 住友クラブ

1. 放射線によるクラスターDNA損傷とは何か?(会員ページ )

日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター     

放射線作用基礎過程研究グループ 鹿園 直哉

  複数個のDNA損傷が近接して存在する「クラスターDNA損傷」は、放射線の生物影響に深く関与すると考えられてきた。実験的に調べることが難しいことからクラスターDNA損傷の生物学的意義は長らく不明であったが、新しい手法の開発に伴い近年理解が進んでいる。本講演では、クラスターDNA損傷の概念が生まれた研究背景を概観しつつ、我々のグループを含めたクラスターDNA損傷研究の現状を紹介する。
 
2.X線によるナノメータ構造の形状計測技術(会員ページ )

株式会社リガク 中野 朝雄

  現在の情報化社会の進展を支える電子デバイスでは、工業的に製造されるデバイスの微細構造が既に数十ナノメータ程度になっている。これらのデバイスを高品質でしかも低価格で市場に供給するためには、半導体デバイスの配線や磁気ディスクのトラックに代表される超微細加工ライン幅を正確に計測する必要がある。今回、極薄膜の膜厚や超微細構造を計測する方法として注目されているX線によるナノメータ構造形状計測技術を紹介する。
 
3.アサリやシジミは水をきれいにしているのか?

−安定同位体比分析による二枚貝の食性解析−(会員ページ )

京都大学大学院農学研究科 笠井 亮秀

 河口域には豊かな生態系が築かれており、河川から流入する有機物は河口域生態系に取り込まれ,その一部は食物連鎖を通して系外に除去されている.特に二枚貝は、水中の有機物を濾過・吸収することで水質浄化に大きく貢献しているといわれている。しかしながら二枚貝の食性については、これまで不明な点が多かった。本講演では、安定同位体比分析を用いて二枚貝の食性を解析し、水質浄化に果たす役割を推定した例を紹介する。
まとめ
 これまでは河川に入り込んだ陸上植物に由来する陸上起源有機物・セルロースは、水底に棲むパクテリアなどの微生物が分解すると考えられてきた。しかし、シジミも河口域で、森林におけるシロアリのような役目(消化管のセルラ一ゼ遺伝子による有機物の分解)を果たし、水質浄化に貢献していることが明らかになった。
 
会員サロン(40分)    
 ◇短波長紫外放射の先端技術製品製造における応用(会員ページ ) (会員HP )

   セン特殊光源(株)代表取締役 菊池 清

 短波長紫外線の照射による洗浄脂質技術は性能が高いだけでなく、薬剤による表面腐食やプラズマの高工ネルギー粒子によるダメージがない特長があるお陰で、微細化・高集積度が進むほど利用価値が高まっている。
廃棄物は唯一オソンガスであるが、オゾンは最終には酸素に戻るので、環境の面でも優れている。低圧水銀ランプは水銀を使うが、照明の電球のエネルギー効率が悪いので、近年は電球を廃止して水銀を使う蛍光ランプに変えようという動きが欧米で進んだように、エネルギー面でも見直されている。。
性能面では洗浄に止まらず、改質効果があることも紫外線技術の優位点で、今後のさらなる応用面の拡大が期待される。