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UV_EB研究会リスト

放射線研究会リスト

放射線シンポジウムリスト

 

2021年度ONSA賞授賞者

[ONSA1] イオンビームとX線の併用によるがん治療高度化に向けた治療生物学的な研究 (授賞公開論文)

若狭湾エネルギー研究センター 研究開発部 粒子線医療研究室 主任研究員 前田 宗利

 近年、複数の治療法を組み合わせて抗腫瘍効果を拡大させる集学的がん治療が積極的に用いられ つつある。若狭湾エネルギー研究センターにおける基礎研究から、陽子線および X 線を併用した混 合化学放射線治療の抗腫瘍効果の向上に資する成果が得られた。本講演では、陽子線と X 線を併用 した場合における、「照射の順番」や「間隔」、「線量の組み合わせ」が細胞致死効果に与える影響 およびその作用機序、担がんマウスを用いた治療効果の検証について概説すると共に、今後の展望 を紹介する。

[ONSA2]  ニュークリアフォトニクスで拓く 「シングルショット中性子分析」 (授賞公開論文)

大阪大学 レーザー科学研究所 教授 余語 覚文

 超高強度( >1018 Wcm-2 )の短パルスレーザーを薄膜に照射すると、1 mm 以下の領域から 10 MeV 級 のイオンが加速される。本研究では、レーザー加速イオンを 2 次ターゲットに照射して高強度のパ ルス中性子を発生することで、中性子 1 パルスで 1 計測を完了する「シングルショット中性子分析」 を追求している。講演では、中性子・X 線同時ラジオグラフィ、および中性子共鳴吸収分析の進展に ついて報告する。

 

2020年度ONSA賞授賞者

[ONSA1] 質量分析イメージング法によるPET診断用低酸素イメージング剤の腫瘍内集積機序の解明:薬物相互作用の探索,創薬への展開 (授賞公開論文)

京都大学 医学部附属病院 助教  志水陽一

 ニトロイミダゾールを母核に有するPET診断用低酸素イメージング剤は、低酸素環境下細胞内の還元代謝により低酸素特異的に集積すると考えられてきたが、その詳細は不明であった。本講演では、化学形態を区別して組織内分布を可視化できる質量分析イメージング法を用いた本薬剤の腫瘍低酸素組織への集積機序の解明、集積機序に基づく本薬剤の薬物相互作用の探索、腫瘍低酸素のPET診断により最適な薬剤開発への展開について紹介する。

[ONSA励賞2]  低線量X動画イメージングによる新しい肺機能画像診断技術の創出 ―息止めしないレントゲン検査 ― (授賞公開論文)

金沢大学 医薬保健研究域 准教授 田中利恵

 「大きく息をすって〜、ゆっくりはいてくださ〜い。はい、ゆっくりすってくださ〜い。撮影終了です」。このような合図で呼吸状態を撮影した胸部X線動画像には、横隔膜や胸郭の動き、肺血管・気管支の密度変化に起因する白黒濃淡変化が描出されている。これらの動的変化を数値化・可視化することで、造影剤や放射線医薬品を用いない肺機能画像診断を実現した。本講演では、開発した動画解析技術と最新の臨床研究成果を紹介する。

[ONSA32]表面を一原子層単位の深さ精度で磁性探査できる新技術を開発 ―鉄の磁石の「表面の謎」を解明!― (授賞公開論文)

量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学部門 上席研究員 三井隆也

 量子科学技術研究開発機構は、放射光から放射性同位体線源よりも10万倍も輝度の高いγ線を発生させる技術を独自開発して材料研究に応用している。最近、この新しい量子ビームを用い、金属表面の磁性を原子層単位の深さ精度で調べる手法を実用化することで、40年前に予言された鉄の表面の磁力が原子層毎に増減する現象の観測に初めて成功した。本講演では、一原子層単位での局所磁性探査法の原理から応用までを紹介する。

 

 

2019年度ONSA賞及びONSA奨励賞授賞者

[ONSA] 放射線損傷ヌクレオシドであるジヒドロチミジンを指標とした新規照射食品検知法の開発 (授賞公開論文)

地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所
 主幹研究員 福井直樹、主幹研究員 高取聡、
研究員 藤原拓也、主幹研究員 北川陽子

 食品の放射線照射( 照射) は、その保存性を高める手法として有用である。食品の照射を適切 に管理するためには、照射履歴の検知法が必須である。既存の各検知法における適用可能な食品は限局的である。我々は、食品に普遍的に含まれるDNA が照射された際に生成する放射線損傷ヌクレオシドであるジヒドロチミジンを指標とすることにより、多様な食品に適用可能な検知法を新たに開発したので、本講演で紹介する。

[ONSA奨励賞] イオン照射によるナノ組織制御を用いた超伝導材料の高伝導材料の高特性化に関する研究 (授賞公開論文)

関西学院大学 准教授 尾崎壽紀

<現在、各種放射線の利用が日本の科学技術、社会・経済発展に非常に重要な役割を果たしている。特にイオン照射技術を利用した機能材料研究・開発は、今後大きな発展が期待できる科学技術分野である。本講演では、エネルギー機能性材料である超伝導材料に、比較的低いエネルギー(数MeV以下)でイオン照射を行うことによる超伝導特性の高特性化について紹介する。 > 

 

平成30年度ONSA賞及びONSA奨励賞授賞講演 (授賞記念写真)

[ONSA] 新規材料開発への放射線利用の開拓推進−金属材料改質合成と高速陽電子装置開発− (授賞公開論文)

大阪府立大学 大学院工学研究科 准教授 堀 史説

 放射線と材料科学の関係は、以前はX線や電子顕微鏡などの評価法利用と原子力や宇宙環境等での照射劣化に関連するものが大半であった。近年、物質と放射線の相互作用を積極的に利用して、材料への特性制御や機能性付与、液体中での放射線還元による新機能材料も作成されるようになってきた。また評価法でも高速陽電子など新しい放射線利用形態を進めている。これら材料科学への放射線の新展開について紹介する。

[ONSA奨励賞1 ] 研究用原子炉による放射化分析法を用いた固体地球化学試料中のハロゲン及び微医療元素定量 (授賞公開論文)

京都大学複合原子力科学研究所 助教 関本 俊

 中性子放射化分析は、元素分析法の一つで、元素によっては極めて少ない量を感度良く、正確に調べることが可能である。我々はハロゲン元素(塩素、臭素、ヨウ素)に注目しており、岩石試料中の微量ハロゲンを精密に定量する方法を開発した。講演では、この手法の特長を説明し、これを用いて、米国地質調査所他が発行した標準物質のハロゲンを分析した結果を示す。また得られた値を、報告済みの文献値と比較することにより評価する。

 

[ONSA奨励賞2 ] 骨髄移植前処理における全身放射線照射が予後に及ぼす影響の解析(授賞公開論文)

京都大学 医学部附属病院 助教 新井康之

 難治性造血器腫瘍(血液がん)の代表格である、急性白血病に対しては、同種造血幹細胞移植(いわゆる骨髄移植)が有効な治療である。その際、腫瘍細胞を根絶させ、ドナー細胞生着のスペースを作出するために、大量抗がん剤に加えて、全身放射線照射(標準12Gy)を組み合わせた「前処置」が用いられる。放射線照射の効果を最も効率よく引き出す前処置を見いだすべく、大規模データベースを用いた研究成果を提示する。

 

平成29年度ONSA賞授賞講演 (聴講記) (授賞記念写真)

[ONSA(応用研究・開発部門)受賞講演] 新しいガンマ線ビームを使った光核反応計測と核変換(授賞公開論文)

兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 教授 宮本修治

 

 相対論的電子と磁場により高輝度なX線を発生する放射光施設は、世界中で広範囲な応用に使われている。この放射光施設を使った、高輝度なガンマ線ビーム光源の利用が広がっている。このガンマ線は、波長は原子の1/1000以下で、偏光とエネルギーを自由に制御ができるため、光核反応の精密なデータ取得に使われる。このガンマ線を使った、核変換応用や、発生する中性子・陽電子を用いた利用について紹介する。

 

平成28年度ONSA賞及びONSA奨励賞授賞講演 (聴講記) (授賞記念写真)

[ONSA] イオンビーム照射レジストの除去技術の確立とレジスト材料の開発 (授賞公開論文)

大阪市立大学 大学院工学研究科 化学生物系専攻 教授 堀邊英夫

 半導体集積回路製造のために重要なレジスト材料、プロセス開発に従事し、化学増幅型レジストの開発に貢献すると共に、レジスト除去という実用的な観点に注目して、環境にやさしいレジスト開発を進展させた。

[ONSA奨励賞1 ] 静注用放射性酸素-15と持続注入法を組み合わせたラットの脳循環代謝測定法の開発(授賞公開論文)

金沢大学 医薬保健研究域 附属研究増進科学センター テニュアトラック 助教 小林正和

 放射性同位元素を用いた核医学分子イメージングを専門とし、実験動物用核医学イメージング装置等を開発し基礎研究を活発に推進した。

 

[ONSA奨励賞2 ] 粒子線照射が誘起する固相重合反応を活用した機能性ナノワイヤの開拓と粒子線の飛跡検出(授賞公開論文)

京都大学 大学院工学研究科 分子工学専攻 助教 櫻井庸明

 有機化学的な手法では実現が困難であり、例の少ない固相重合反応に着目して、高エネルギー粒子線を用いた独創的な手法により、汎用的に低分子化合物の一次元固相重合反応を誘起し、機能性ナノワイヤを作製する手法を開発した。

 

平成27年度ONSA賞及びONSA奨励賞授賞講演 (聴講記) (授賞記念写真)

[ONSA ] 放射光を利用したレジストの開発に関する研究(授賞公開論文)

兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所所長 教授 渡邊健夫

 ニュースバルにおいて世界でOnly Oneの装置開発を進めてきた。レジストの開発研究を通じて、EUVリソグラフィ技術開発に大きく貢献した。学術研究成果の産業利用にも尽力し、これらの装置を産業界に共用することで、放射光の利用を促進してきた。

[ONSA奨励賞 ] チャバネアオカメムシにおける光周性の神経内分泌機構 (授賞公開論文)

大阪市立大学 大学院理学研究科後期博士課程 (現在は京都大学大学院理学研究科 研究員) 松本圭司

 チャバネアオカメムシを用いて、光周期による卵巣発達に必要な幼若ホルモン(JH)合成活性の調節機構について研究を行ってきた。この成果は、昆虫の季節による生活史調節の神経メカニズムの解明に繋がり、昆虫生理学・神経生物学において大きなインパクトを与えることが期待される。

 

平成26年度ONSA賞及びONSA奨励賞授賞講演 (聴講記) (授賞記念写真)

[ONSA] 核融合プラズマおよび大気圧プラズマの計測と応用に関する研究(授賞公開論文)

大阪府立大学地域連携研究機構・准教授 松浦 寛人

 プラズマは物質の第4形態とも称され、通常の気体に放電等の過程でエネルギーを注入して生成されるため、高いエネルギ一状態にあり、周辺の固体や液体に常にエネルギ一を伝達する。しかし、この熱流束はプラズマと固体との間のシースと呼ばれる境界層で制限される。
このシースの構造はプラズマ状態のみならず、固体の物性や表面反応に依存するため、理論的な予想は極めて困難であり、プラズマの利用の為には実験的な熱流束の計測法の開発が必要である。
授賞者は、広く利用されている誘電体バリア放電型のブラズマジェットの熱流束を日本で初めて定量的に評価した。
さらに、プラズマ中に多量に生成されるラジカルの表面反応が熱流束に及ぼす寄与が無視出来ないことを逆に利用して、触媒プローブ法という新しいラジカル計測法の開発を行い、新たなプラズマプロセスの分野を開拓した。

[ONSA奨励賞 ] 小動物用マイクロCTを用いた生体微細構造評価と病態モデルへの応用(授賞公開論文)

大阪大学医学系研究科保健学専攻 医用工学講座・助教  齋藤 茂芳

 病理組織学検査は、脳や骨髄などの中枢神経系の微細冓造、組織特異的な染色による病態評価が可能であるが、脳骨髄全体に渡る多断面での評価には多くの労力を要する。
一方、マイクロCTを用いた場合、白質と灰白質のCT値の差はほとんどないため中枢神経系の評価には向かないが、Ex-vivoにおいてマウスの脳および脊髓組織に対し、造影剤浸透下でのマイクロCT画像を取得し、脳の白質および灰白質の同定、詳細な白質線維の描出を行った。
またマウス脊髓組織の高磁場MRI画像とマイクロCT画像、免疫染色との比較を行い、成長遅延マウスの大脳の構造異常を、マイクロCT画像を基にした形態計測および免疫組織により明らかにした。

 

平成25年度ONSA奨励賞授賞講演 (聴講記)(授賞記念写真)

1.放射光その場観察を利用した新しい水素貯蔵合金の開発(授賞公開論文 )

(独)日本原子力研究開発機構量子ビーム応用研究部門・研究副主幹 齋藤 寛之

 放射光その場観察と高温高圧合成法を組み合わせることで、アルミニウム系合金の侵入型水素化物など、これまで報告例の無い新しい水素貯蔵合金の合成に成功した。放射光その場観察により高温高圧下での合成条件を迅速に決定することを可能とした。

平成24年度ONSA賞授賞講演(聴講記)(授賞記念写真)

1.有機シンチレーション物質の高性能化に関する研究(授賞公開論文)

京都大学原子炉実験所 中村 秀仁

 放射線計測はなじみが薄く、ハイテクと思われているが、ごく身近にある物質(プラスチック)でも十分な計測手段になることを、実証しその物性を明らかにした。

 

2.3次元蛍光X線分析装置の開発とその応用研究(授賞公開論文)

   大阪市立大学大学院工学研究科 辻 幸一

 実験室で利用できるいくつかのX線管とポリキャピラリーX 線レンズとを組み合わせ、得られるマイクロX線ビームの特性(ビーム径、輝度(ゲイン)、透過率、エネルギー依存性など)を実験的に評価する等の基礎研究を行うと共に、微小部 XRF 分析装置や 3次元 XRF 分析装置を研究室で試作し、様々な試料に応用した。

平成23年度ONSA賞授賞講演(聴講記)(授賞記念写真)

1.レーザー励起X線源を用いた軟X線顕微鏡による細胞内小器官のその場観察技術の開発(授賞公開論文)

()日本原子力研究開発機構関西光科学研究所 加道 雅孝

 高強度レーザーを金属薄膜に集光して発生させた軟エックス線の顕微鏡によって、光学顕微鏡でも電子線顕微鏡でも見ることの出来なかった生きた細胞の内部構造を90ナノメートルという高解像度で観察することが可能になった。

このシステムにより細胞内小器官のその場観察技術の開発を行った。

平成22年度ONSA賞授賞講演(聴講記)(授賞記念写真)

1.放射光メスバウアー吸収分光法の研究(授賞公開論文)

京都大学原子炉実験所  瀬戸 誠

  これまで、水素貯蔵合金や超伝導体などといった様々な特性や機能を持つ物質が開発されてきた。このような物質で新規な機能や特性がどのようにして発現しているのかを調べるためには、物質を構成しているそれぞれの元素(原子)の役割や状態を明確にする必要がある。

元素の状態を調べる方法としてメスバウアー分光法がある。放射光という新たな線源を利用することで、より多くの元素をより詳細に調べる事を可能にし、多大の成果を挙げた。放射光を利用したメスバウアー分光法について解説する。

平成9年度ONSA賞授賞講演

1.放射性トレーサーを用いた無機元素の環境中挙動研究(授賞公開論文)

京都大学原子炉実験所 藤川 陽子

 近年、科学技術およびそれらを応用した産業の地球・人間環境への影響が世界的に問題となるに伴い、環境保全に配慮した包括的な科学技術体系の開発が急務となってきた。人類社会に大きな恩恵をもたらしてきた放射線の利用技術もその例外ではなく、殊に、我が国において電力の安定供給に寄与してきた原子力発電について、その環境影響が広く一般社会において問われる時代となっている。

 本研究は、環境保全に配慮した放射線利用技術体系の開発に係り、特に原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の確立を目指したものである。長半減期(数千・数十万年以上)の放射線各種を多く含む高レベル放射性廃棄物は、その地層処分の安全性評価においては、10万年以上の長期にわたり放射能の深地層一人間生態圏中での挙動を予測・評価する必要がある。このため、室内・屋外実験データの収集、およびこれらのデータに基づく安全性予測手法の開発が必須である。

授賞研究では、プルトニウム、ウラン、セシウム、セレン等、その移行挙動が地層処分の安全性評価の鍵を握る長半減期放射性核種について、種々の放射性物質をトレーサーとして用い、(1)室内実験による岩石中の拡散・収着・移行挙動の解明、(2)数字モデル開発と移行予測シュミレ一ションの実施、(3)野外におけるプルトニウム等の核種移行調査、等の広範囲な基礎的研究を行なってきた。

わが国における地層処分技術開発がその緒についた現在、授賞研究は、原子力システム開発完成のための最後の技術的課題について、実験的・理論的基礎を提供するものである。授賞研究の特色は、環境保全に配慮した放射線利用技術体系の開発のため、放射能による(放射能を利用した)放射能の環境安全研究を行ってきた点にある。

 

2.超伝導小型SR装置を用いた軟X線SR−CT法の開発(授賞公開論文)

住友電気工業株d磨製作所 片山 誠、高田 博史

 XCT(コンピュータトモグラフィ)は、医療用のCTスキャンに代表される検査技術であり、検査試料の複数のX線透過像から断面の像を再生するものである。 工業材料のCT装置としては、X線管球や中型S R装置から得られるlOkeV以上のエネルギーの硬X線を光源としたものが使用されている。これにより、コンデンサ等の製品検査や合金基複合材料の応力破断メカニズム解明など、内部状態の観察が可能になっている。

近年の材料開発の進展に伴い、このXCTの手法を用いてボリエチレン等軽元素材料中の異物やボイド、添加物の拡散・偏祈の様子など、従来の硬X線ではコントラストが不足し、観察できない対象の検査が必要となってきている。コントラスト向上には、よりエネルギーの低い軟X線(110keV)の単色光源を用いる必要がある。小型SRは、軟X線領域で強い放射特性をもつ白色の光源であり、光線の広がりが十分小さく、X線像のぼけが小さい、空間.時間的にも強度が安定している等、CT光源としてふさわしい性能を有している。

このような背景により、当社では自社開発•社内設置の小型SR装置「N I J I™ — V」を光源として用い、各種軽元素材料検査が可能な軟XCTシステムの開発を行なった。

平成8年度ONSA賞授賞講演

1.γ(ガンマ)線多重層ビルドアップ率の表示式に関する研究(授賞公開論文)

京都大学大学院工学研究科 秦 和夫

 放射線利用施設における放射線の遮蔽計算は安全評価の基本的事項である。中でもビルドアップ率はガンマ線の線量評価の基本データとなっている。
 ガンマ線のビルドアップ率の研究の歴史は古く、1954Goldstein-Wilkinsがモ一メント法を用いて一連のデータを算出して以来、多くの研究がなされてきた。1991年には米国原子力学会のもとで包括的な"ガンマ線の減衰係数とビルドアップ率標準データが作成され、ANSI/ANS6.4.3レポ一卜として公開されたため、
これに基づ<点減衰核計算コ一ドが世界的に広く利用されることとなった。その後もビルドアップ率の精度向上の努力は続けられている。  しかしながらガンマ線ビルドアップ率については非常に大きい問題が残されている。それは多重層体系のデータがいまだに欠落しているという点である。現実の体系は多くの場合単一物質によってできているわけではないので、本当は多重層体系のデータが必要とされる。

 

2.画像サンプリングを応用したX線ストリークカメラによる超高速2次元X線画像計測法の開発(授賞公開論文)

大阪大学レーザー核融合研究所 白神 宏之

 レ一ザ一を用いた慣性閉じ込め核融合実験は、大阪大学レ一ザ一核融合研究センターのガラス・レーザー激光Z号や、米国ローレンス.リバモア国立研究所のNOVAレーザ一、ロチェスター大学レ一ザ一・エネルギー研究所のOMEGAレ一ザ一、フランスのリメイユ研究所のPHEBUSレーザ一等で行なわれている。これは、重水素等の核融合燃料を封入した直径数mmの燃料ペレットに周囲から多数のレ一ザ一ビ一ムを照射し、噴出するプラズマの反作用で燃料を内向きに圧縮し同時に加熱する方式で、このプロセスを爆縮(implo-sion) と呼ぶ。

燃料プラズマのlOkeV程度までの加熱[1]と固体密度の数100倍までの圧縮[2]は既に達成されており、現在は核融合点火・燃焼と高利得夕一ゲット爆縮の実現に向けた研究が展開 されている。

 レーザ一核融合実験の特徴は、計測対象としてのプラズマが(1)空間的スケールが10ミクロン〜数mmと小さいこと、(2)時間的スケールが数十ピコ秒〜数ナノ秒と非常に高速であること、さらに、(3)プラズマ密度が固体密度の11000倍程度の超高密度となることである。これらはいずれもプラズマ計測技術に対し、非常に高い空間分解能(数ミクロン程度)、時間分解能(数ピコ秒程度)を要求し、なおかつ高オパシティのため圧縮されたプラズマの中身が見えないという厳しい条件を与える。

  

平成7年度ONSA賞授賞講演

1.SPECTを用いた心筋代謝イメージングの開発(授賞公開論文)

大阪大学医学部 西村 恒彦

 高齢化社会になって、心筋梗塞、狭心症及び高血圧に伴う肥大心などの疾患が増加している。これらの診断には20施設でPETが研究的に用いられているが、本研究はSPECT装置を利用して診療することを目的とした研究である。123-置換化合物を用い、化合物の体内化学変化、心筋異常発生過程の解析などの研究を基礎に新しい心筋イメ-ジング方法を展開した。血流異常等の兆候が検出できることを明確にした。

 

2.放射線を利用した新規有機合成反応の開発と有機ケイ素材料科学の研究(授賞公開論文)

大阪府立大学先端科学研究所 岡 邦雄

 有機ケイ素化合物の特徴を上手に生かしてγ線照射による高G値のラジカル反応を導き新しいヘテロ元素ポリマー合成の道を開いた。反応、物性に対する物理化学的研究である。ポリシランなどケイ素高分子材料は機能性材料として期待されているが、この種の低分子化学反応促進化機構の基礎的解明がさらに進めば、低迷している放射線利用の再活性化への足掛かりになる。

 

3.超電導小型SR装置を用いたセラミックス微細加工技術の開発(授賞公開論文)

住友電気工業株d磨研究所 高田 博史、平田 嘉裕

 圧電振動子として鉛化ジルコネートチタネート(PZT)セラミックスの超微小構造体の放射光利用による製造法に関するものである。PZTを用いて高アスベスト比の柱集合体を制作するため、高感度レジスト材を開発し、レジスト型をプラズマエッチッングにより除去し、柱の倒壊を防止する方法を開発した。この技術は多くの分野のセンサー製造、多様な材料への応用可能性がある研究である。

  

平成6年度ONSA賞授賞講演

1.放射能ハロゲンの一電子ベース化学(授賞公開論文)

大阪大学理学部 高橋 成人

 アスチタンは短半減期の放射性ハロゲン元素で実験に用い得る量は1011原子程度の極微量であるため、その化学的性質は調べられていなかった。ハロゲン元素の物理化学的性質は良い規制性が成り立っているのでその反応速度論からアスタチン化学形は二原子分子であることを確認した。また原子炉から環境へ放出される極微量放射性ヨウ素の化学的挙動を放射性の単体ヨウ素、ヨウ素分子や不純物との反応機構を考えることにより、それらの異常性を解明した。この手法は、小数原子の化学的性質を解明する手法となりうる。

 

2.ニュークリア マイクロプローブによる分析技術の開発(授賞公開論文)

大阪大学基礎工学部 高井 幹夫

 高エネルギーイオンビームをミクロンからナノメートルまでに集束したニュークリア マイクロプローブを形成し、これを用いたマイクロエレクトロニクスデバイスプロセスの3次元非破壊分析技術が可能になった。この技術により、16Mbitメモリー素子の設計開発の指針を明らかにした。その実行効果と波及効果は多大である。

  

平成5年度ONSA賞授賞講演

1.アバランシェ・トランジスタを用いた超高速パルサーの開発(授賞公開論文)

京都大学原子炉実験所 高見 清

 シンクロトロン放射光の発生には極短時間巾(1ns以下)の入射電子パルスが要求される。これを実現するためアバランシェトランジスタの特性を改良して立ち上がり時間0.11ns、パルス巾1ns、振幅900Vの安価なパルサーを開発した。現在SPring-8の試験に実用されている。

 

2.超小型SRリングの開発(授賞公開論文)

三菱電機梶@山田 忠利、奥田 荘一郎、中村 司朗

 シンクロトロン放射光は基礎科学から産業用まで極めて広分野で利用出来るが、装置が巨大である不都合があった。そこで産業に利用出来る取扱容易な世界最小の小型SRリング(電子軌道週長9.2m)を開発した。超伝導電磁石2台の液体ヘリウム消費量は3g/hの世界最小量を達成している。

  

平成4年度ONSA賞授賞講演

1.実時間中性子ラジオグラフィによる液体金属流れの可視化と測定(授賞公開論文)

神戸大学工学部 竹中 信幸

 中性子線が多くの金属に透明であることを利用して実時間ラジオグラフィーによる液体可視化を行い、画像処理によって流速や相変化の限界を測定する方法を開発した。本開発により液体金属の強制対流、自然対流、相変化界面の測定が可能であることが実証された。

 

2.照射食品に保持されたガス量の測定を指標とした放射線照射の検知手段の開発(授賞公開論文)

大阪府立大学付属研究所 古田 雅一

 照射食品に保持されたガス量の測定を指標とした放射線照射の検知手段の開発  食品の放射線照射は従来の加熱や薬剤処理法に代わる保存法であるが、食品への照射の有無、適正な線量照射の確認等が望まれている。この研究は放射線照射により食品にHCOガスが発生しそのまま食品中に保存されることを発見した。このガスを回収し測定すれば検知できることに着目し、ガス回収による検知システムを開発した。

 

3.放射線カラーインジケーター(商品名1KフィルムS)(授賞公開論文)

光陽化学工業梶@河田 章、西田 節夫

 照射食品に保持されたガス量の測定を指標とした放射線照射の検知手段の開発  食品の放射線照射は従来の加熱や薬剤処理法に代わる保存法であるが、食品への照射の有無、適正な線量照射の確認等が望まれている。この研究は放射線照射により食品にHCOガスが発生しそのまま食品中に保存されることを発見した。このガスを回収し測定すれば検知できることに着目し、ガス回収による検知システムを開発した。

  

平成3年度ONSA賞授賞講演

1.照射欠陥の基礎的解明と極低温中性子照射装置の開発(授賞公開論文)

京都大学原子炉実験所 岡田 守民

 原子炉、核融合炉材料にアルカリ土類酸化物が注目されているが高速中性子照射欠陥が導入されやすい。その挙動を明らかにするためMgOに不純物としてCrイオンを添加し、不純物の電子遷移から照射欠陥の挙動を解明した。また高速中性子がMgO中に作るF中性子線量に比例することから高速中性子線量計となりうることを見出した。またわが国唯一の極低温原子炉照射装置の責任者として多大の貢献を行った。

 

2.放射線大量測定法の開発研究(授賞公開論文)

大阪府立大学付属研究所 中村 茂樹

 ライナックによるX線・電子線照射の経験からツェナーダイオード素子を利用した小型で高温下使用可能な大線量計を開発した。計測範囲は101010Rで従来のものより約千倍の大線量を測定できる。測定線量範囲、測定温度限界、温度依存性、経年変化、線質特性等基本特性の検討に顕著な功績があった。

 

平成1年度ONSA賞授賞講演

 

1.放射線薄層グラフト重合による高分子材料表面の改質

日本原子力研究所 梶 加名子

 疎水性で用途が限られているポリエチレン発泡体を親水化するため電子線照射による薄層グラフト重合法を用い照射条件とグラフト重合物の構造解析、気泡中の酸素除去方法等検討を行うことにより、PVAをグラフト重合した吸水性ポリエチレン発砲体の開発に成功した。また難燃性オリゴマーのグラフト重合とにより難燃化できた。現在実用化開発を行っている。

 

2.繊維強化プラスチックの極限環境下での劣化に関する研究

三菱電機梶@園田 克己

 原子力、核融合、宇宙等強放射線環境における繊維強化プラスチックの高信頼化長寿命化を目的として放射線劣化について研究されたものであり、ガラス繊維、炭素繊維及びアラミット繊維強化プラスチックの電子線照射、宇宙線照射等放射線照射が及ぼす機械的劣化挙動、電気絶縁特性に及ぼす機械的応力の研究に顕著なものがあった。

 

 

3.トリチウム標識核酸塩基の放射性壊変の化学的効果

大阪府立大学付属研究所 朝野 武美

 放射性壊変による生物影響の研究の一環として核酸塩基に対するトリチウムのβ壊変効果のうち、核壊変による効果と放射線による効果を区別するため希釈剤添加法を考案し、それを用いて核壊変による分解生成物を確認するとともに、分解率及び収率を求める式を誘導し、実験データを解析したものである。

 

  

昭和63年度ONSA賞授賞講演

 

1.メタノール液シン法による14C測定

大阪府立放射線中央研究所 柴田 せつ子、川野 瑛子

 従来からのメタノール液シン法に改良を加え、メタノールの収率及び純度をあげ14C微弱放射能の測定法を確立し、これにより日本各地より継続的に収集した米粒中の14C濃度を測定し地域変動から化石燃料大量消費の影響を測定した。またこの手法により府下の埋蔵文化財、シルクロードの地中海の沈船の木片等考古学資料の解明に貢献している。

 

2.放射線防護材料の開発とその応用

三菱電線工業梶@藤沼 忠志、井尻 康夫

 原子力発電所の隔壁貫通ケーブル構造物及び電線の開発技術経験を生かし、柔軟性があり繰り返し使用出来る中性子を含む放射線防護材・従来品に比べ軽量でガンマ線遮蔽効果の優れた放射線遮蔽防護服・鉄に近い遮蔽効果のある放射線遮蔽用シール材・放射線医療従事者を放射線から防護し軽量軽かつ機能性にとんだ放射線防護服の開発を行った。 

 

 

昭和62年度ONSA賞授賞講演

 

1.ボツリヌス菌毒素の分子構造と作用機構の解析

大阪府立大学農学部 小崎 俊司、鎌田 洋一

 ボツリヌス菌はヒトの中毒を起こし、神経症状を呈し致死率が高い。この研究は毒素の分子構造と作用機構の解明を目指したものである。単クーロンを作成し125I標識化し、毒素の抗原性状の分析を行ったものである。毒素の精製、125I標識毒素の作成できる研究室は世界に数カ所しかなく、この研究成果は神経、脳研究への基礎応用研究にも発展する。

 

2.小型サイクロトロンを利用した実時間中性子非破壊検査技術の開発

大阪府立大学付属研究所 谷口 良一

 サイクロトロンを中性子線源とし、高効率の中性子光変換コンバータ、高感度テレビカメラ及びデジタル画像処理システムを開発し、従来不可能であったロケット用火工品の品質管理、航空機用構造材の検査や自動車用ショックアブソーバ作動油、同燃料ポンプ用油、プラスチック射出成形機内ペレットの溶融状態などの動的観察を可能にした。また独特の中性子立体透視装置を開発した。

 

3.テレビジョン受信機用高圧線の開発

住友電気工業梶@宇田 郁二郎

 通常のポリエチレン絶縁電源はブラウン管やトランスの発熱による熱で絶縁体が流動し絶縁破壊を起こし火災の原因にもなるので耐熱変形性が要求される。この開発は高エネルギー電子線照射により工業的レベルで優れた架橋体を得た国内テレビ受信機CRT70%にこの電線が利用されており、わが国における電子線利用の推進に大きく貢献した。

 

昭和61年度ONSA賞授賞講演

 

1.放射線障害回復促進物質の研究

大阪府立放射線中央研究所 米沢 司郎

 薬用にんじんの抽出物が骨髄細胞の細胞分裂を促進することに着目し、放射線照射後投与すると救命効果が上がることを動物実験によって明らかにした。以来、作用機序の解明、有効成分の検索等実用化に向けての基礎研究を積み、2件の特許を取得した。癌の放射線治療の際の造血障害の回復剤として著しい効果があることを明らかにした。

 

2.シングルフォトン エミッションCT装置の開発

鞄津製作所 山岡 信行、東 義文、永田 孝

 脳血管障害、脳腫瘍等の種々の疾病の診断には脳の血液分布や代謝に関する情報が不可欠である。この開発はNaI検出器をリング状に配列しターボファン型回転ドラムコリメータを開発し装着したもので、従来の形式のものに比べ感度を10倍、空間分析機能を約2倍に高めた独創的なものである。

 

3.耐放射線性光ファイバーの開発

住友電気工業梶@白石  敏、藤原 国生、黒崎 四郎

 光ファイバーは光を主に伝達するコア部の屈折率を周囲のクラッド部より高くするため、石英にGeOを添加するが、光を吸収するカラーセンターを生じやすいので、クラッド部の石英にBOを添加して屈折率をコアより逆に下げる方法を開発した。これにより、カラーセンター生成による損失が著しく改善され耐放射線性が極めて高く、原子力分野への光ファイバー導入が可能になった。

 

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