HPトップ頁

UV_EB研究会リスト

放射線研究会リスト

放射線シンポジウムリスト

次ページへ

 

81回 放射線科学研究会
「関西におけるガンマ線利用施設の現状と将来」概要
(講演案内)

20241210日(火)zoom開催が主体、ONSA会議室 サンエイビル4階

 

1. はじめに 〜ONSAの現状と本研究会の目的〜30分) 

 

  ONSA専務理事 奥田 修一

 

 (一社)大阪ニュークリアサイエンス協会(ONSA)は、40年を超える歴史があるが、新しい方針の下で活動を開始した。そこで設置された専門部会の一つである「ガンマ線照射利用部会」が本研究会を主催する。学術研究や様々な試験のための関西のガンマ線照射施設は、利用の停止が相次いでいる。本研究会でこの現状を報告いただくと共に、今後の利用継続の方法を探る。

 

 

 

2. 日本および関西のガンマ線照射利用施設とその状況 30分)

 

ONSA専務理事、大阪府立大学 名誉教授 奥田 修一
ONSA技術顧問、京都大学 名誉教授 義家 敏正

 

  これまで長年にわたり基礎研究や様々な試験に利用されてきた日本のガンマ線照射利用施設には、維持管理の継続が困難な問題がある。各施設が公にしている状況を取りまとめて報告する。 関西では、主要な2つの施設が2023年度で利用を停止した。このうち大阪公立大学の施設は民間にも広く利用され、ONSAの活動基盤となってきた。また京都大学複合原子力科学研究所では、研究用原子炉と共に放射線利用研究を支えてきたが、今後の展開も模索している。これまでの経緯や利用の状況を中心に報告する。

 

 

 

3.大阪大学産業科学研究所のガンマ線照射施設の状況と将来30分)

 

大阪大学産業科学研究所 量子ビーム科学研究施設 助教 藤乗 幸子

 

 阪大産研量子ビーム科学研究施設の現在の主要装置に2台の電子ライナックとコバルト60ガンマ線照射装置があ り、学内外の共同利用・共同研究に広く提供している。コバルト60ガンマ線照射設備は、各種物質に対するガンマ線照射効果の研究に広く用いられている。照射室は、高レベル線量照射のための重コンクリートに囲まれた6 m2と10 m2の照射エリアを持つ2基のホットケーブがある。現在3種類の60Co線源が利用可能となっている。ガンマ線照射設備の利用、課題と今後の方針について発表する。


4. 株式会社コーガアイソトープの施設の利用状況と将来 30分)

 

株式会社コーガアイソトープ 取締役 廣庭 隆行

 コーガアイソトープは、西日本唯一の民間ガンマ線照射受託施設として、43年に渡り様々な照射を行ってきました。公的機関のガンマ線照射施設が減っている中で、当社の施設の状況、今後の取組などを紹介させていただきます。

5. 民間施設のガンマ線照射施設の利用による新たな基礎研究の推進
― 被災文化財の救出、修復時のカビ殺菌への放射線利用を目指して ― 30分)

 

大阪公立大学 名誉教授 古田 雅一

 

 洪水、台風、津波などの自然災害の重篤化に伴い、汚損された貴重な歴史的記録である古文書のカビ汚染は文化財の劣化の原因となるばかりではなく、文化財の修復作業時における作業者の中毒やアレルギー疾患などのリスク要因ともなる。そこで文化財の保全に必要とされる殺菌処理への放射線処理の適用を目指し、江戸時代期の古文書を材料として行った民間放射線滅菌受託用照射施設を用いて行った実証試験について概説する。さらに被災地域から救出された文化財と放射線施設とを結ぶネットワークの構築の可能性についても展望したい。

6. 意見交換(テーマの例) (30分)

 

 学術研究や試験におけるガンマ線照射利用の意義
ガンマ線照射施設の今後の見通し
民間の照射利用施設の状況と学術研究などへの適用
その他自由な意見交換

 

80回 放射線科学研究会 「2023年度ONSA賞授賞講演会」概要(講演案内)

2024820日(火)zoom開催が主体、ONSA会議室 サンエイビル4階

 

1. アスタチン-211標識リコンビナント抗体を用いたアルファ線がん治療法のための研究開発 (会員ページ )50分) 

 

  国立研究開発法人 理化学研究所 仁科加速器科学研究センター 核化学研究開発室 技師 金山洋介

 

 アスタチン-211(At-211)はアルファ線放出核種であり、病変部位周囲の正常組織へのダメージを抑えたまま高い治療効果が期待できるアルファ線標的治療薬としての利用が有望な核種の一つである。我々はこのAt-211を代表的な小児がんの一つである神経芽腫に適用したいと考え、非天然アミノ酸を導入したリコンビナント抗体を用いて標識法開発を行った。本講演では神経芽腫細胞移植担癌マウスへのAt-211標識抗体の治療効果について報告を行う。

 

 

 

2.高分解能パルス冷中性子分光器による水クラスターのダイナミクスの解明 (会員ページ )50分)

 

東北大学 多元物質科学研究所 講師 岡 弘樹

 

  水の特異的な現象(過冷却状態、4℃での密度最大化など)は、現在でも科学研究の主要課題の一つである。講演者は、液体状態の水が、非極性溶媒下で構造化(クラスター化)することを世界に先駆けて発見した。これまでの研究で、そのクラスター構造が通常の水の水素結合状態とは異なり、より強固な水素結合により構成された構造であり、"氷の核"に類似した低エントロピーな水の状態であることを示している。まさに氷の核かもしれない同クラスターの挙動を放射光によって解明する。

 

 

 

3. 真空内微小液滴を用いた高速重イオン誘起反応の質量分析学的研究 (会員ページ )50分)

 

京都大学 大学院工学研究科 原子核工学専攻 准教授 間嶋拓也

 

 高速重イオンは、X線や電子線とは異なる線質効果を示すとされているが、その分子レベルの反応は極めて複雑であるため、その多くが未解明のままである。本研究では、重イオン誘起反応の基礎的な過程の一端を明らかにするため、高真空内の微小液滴を標的とする独自の実験システムを開発し、生成物イオンの質量分析学的研究を可能にした。本講演では、開発した実験システムの特徴と得られた成果を紹介する。

 

79回 放射線科学研究会 「2022年度ONSA賞授賞講演会」概要(講演案内)

2023731日(月)zoom開催が主体、ONSA会議室 サンエイビル4階

 

1. 低酸素生物学を基盤にした「がんの放射線抵抗性の理解と克服」に関する研究(会員ページ )50分) 

 

  京都大学大学院生命科学研究科 がん細胞生物学分野 教授 原田浩

 

 悪性固形腫瘍(がん)内部の酸素環境は不均一で、腫瘍血管から十分な酸素が供給されない低酸素領域が存在する。低酸素領域内のがん細胞は悪性形質と治療抵抗性を獲得し、がんの浸潤・転移や、治療後の再発を引き起こす。本セミナーでは、低酸素がん細胞の特性を概説するとともに、腫瘍低酸素の克服を目指した我々の試みも紹介する。

 

 

 

2.Formation of clustered DNA damage in vivo upon irradiation with ionizing radiation: visualization and analysis with atomic force microscopy(会員ページ )50分)

 

量子科学技術研究開発機構 量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 主幹研究員 中野敏彰

 

  重粒子線を用いた放射線治療では、高いブラックピークを利用する事で従来のX線と比べて患部以外の正常細胞への影響を軽減することができるため治療効果が高いと言われている。しかし未だ具体的な知見はまだ少ない。そこでAFM(原子間力顕微鏡)によるDNA損傷を「可視化」する事で分子レベルでのDNA損傷の特定方法を確立し、腫瘍や細胞に生じたDNA損傷を解析した。本研究ではこれら損傷毎の致死効率を明らかにする事で、DNA損傷と線質の関わりおよび粒子線を含んだ放射線治療(癌治療)への影響解析へつなげ、重粒子線はなぜ高い治療効果をもつのかを分子レベルでの科学的根拠を得る。

 

 

 

3. 強度変調照射の品質を向上する新たな最適化アルゴリズムの開発(会員ページ )50分)

 

京都大学 医学部附属病院 放射線治療科 特定助教 小野智博

 

 変調照射(Volumetric Modulated Arc Therapy: VMAT)はその優れた線量分布から、腫瘍の局所制御率の向上や周囲正常組織への線量低減による有害事象の軽減に大きく貢献した革新的な放射線治療法である。  一方、複雑な照射手法となるため、実際に患者へ投与される線量が不確かとなる場合がある。本講演では、VMATの複雑な動きを軽減しプランの品質を向上させる新たな照射野形状最適化アルゴリズムについて報告を行う。

 

78回 放射線科学研究会 「放射線被ばくに対する生体応答」概要(講演案内)

2023424日(月)zoom開催が主体、ONSA会議室 サンエイビル4階

 

1. 放射線による遅延性染色体異常の誘発(会員ページ )50分) 

 

  大阪公立大学大学院理学研究科生物化学専攻 児玉靖司

 

 放射線被ばくした細胞に生じるDNA2本鎖切断(DNA double strand breaks: DSB)は、生命の存続を脅かすDNA損 傷である。生物はこのDSBを修復する機構を備えているが、誤った修復は染色体異常を形成し、これが細胞死や発が んの原因になる。一方、放射線誘発DSBを修復した生存子孫細胞に、遅延性に染色体異常が出現することが知られて いる。この遅延性染色体異常の発生機構の詳細は解明されていない。本講演では、放射線による遅延性染色体異常誘 発メカニズムに関わる最近の話題について紹介する。

 

 

 

2. UNSCEAR 2017 Report の翻訳と刊行について ―体質研と放射線―(会員ページ ) 50分)

 

(公財) 体質研究会 中村清一

 

  2011年3月に発生した東電・福島第一原発の事故により低線量放射線の健康影響が注目され、国連科学委員会 (UNSCEAR)において低線量放射線の健康影響に関する疫学研究が検討課題として取り上げられた。委員会の議論をま とめて、2018年に「UNSCEAR 2017 Report」が公表された。これら報告書の附属書-Bは我々の研究を含んだものであ ることから、これの日本語版の刊行を企画した。ここでは体質研の放射線関連の活動と附属書-Bの日本語版刊行の経 過について報告する。

 

 

 

3. セシウム137を低線量内部被曝したマウスの研究(会員ページ ) 50分)

 

大阪大学 放射線科学基盤機構 中島裕夫

 

 福島第一原発事故により一層懸念が高まったヒトへのセシウム137の低線量内部被曝影響を早期に予測するため、 私は次世代での自然変異率がヒトとほぼ同じマウスにセシウム137水(100Bq/ml)を飲ませながら40世代以上の世代 交代を行っている。本講演では、このマウスを用いて、これまでに得られた染色体異常、発がん性、そして、全DNA 塩基配列変異の解析について紹介する。

 

 

4. 放射線被ばく線量評価と影響評価指標としてのミトコンドリアの利用(会員ページ ) 50分)

 

国立保健医療科学院 志村 勉

 

 放射線による発がん影響が懸念されている。放射線影響に関する人の疫学調査では,放射線量の推定,解析に用いる 集団の偏りや交絡などリスク評価の不確実性が課題とされている。このため実験研究では発がんの機序を解明し、放射線発がんのリスク評価に結びつく成果が求められている。講演では、ストレスセンサーとしてのミトコンドリアに注目し、放射線発がんにおけるミトコンドリアの役割について最近の知見を紹介する。

 

77回 放射線科学研究会 「非破壊検査」概要(講演案内)

20221104日(金)zoom開催が主体、ONSA会議室 サンエイビル4階

 

1. 様々な放射線と放射線源を用いた非破壊検査(会員ページ )50分) 

 

  元大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター 教授 谷口良一

 

 放射線非破壊検査に用いた放射線の歴史的な展望を行うとともに今後の展開を占ってみたい。放射線透過画像を用いた検査は百年前のX線の発見から始まったものであるが、その後、γ線、中性子などの画像検査が登場している。ことに最近ではミューオンやニュートリノなどの透過画像も話題となっている。非破壊検査の分野では、技術的な発展とその流れを中心に解説している例が多いが、今回は放射線非破壊検査の物理的な側面に注目し、新しい放射線検査技術の発展の方向と可能性について言及するとともに、これらに共通した問題である放射線源について議論したい。

 

 

 

2. シングルショット中性子分析(会員ページ ) 50分)

 

大阪大学 レーザー科学研究所 教授 余語覚文

 

  レーザー駆動中性子源は、高強度レーザーパルスを薄膜の1次ターゲットに集光して、プラズマの作る瞬間的な電場でMeVエネルギーイオン(陽子・重陽子)を発生し、それを2次ターゲット(ベリリウム等)に照射して、短パルスの高速中性子を発生する。コンパクトな線源サイズや短時間パルス性能が挙げられる。これらの特性を実験的に検証し、レーザー駆動中性子源を新しい線源として確立することを目指している。本講演では特に、1パルスのレーザーで発生する1パルスの中性子で1計測を完了する「シングルショット中性子分析」を目指し、ラジオグラフィ計測や中性子共鳴吸収による元素分析を実施したので報告する。

 

 

 

3. 陽電子消滅法を用いた金属材料中の原子空孔の非破壊評価 (会員ページ ) 50分)

 

京都大学 複合原子力科学研究所 助教 薮内 敦

 

 物質中に原子数比で1/10000の濃度の空孔があると、物質に入射した陽電子はほぼ全て空孔に捕獲され消滅し、ガンマ線を放出する。したがって陽電子は空孔の情報を10000倍に増幅して外部に伝えてくれるプローブであると言える。本講演では原子空孔の非破壊評価手法である陽電子消滅法の計測原理について簡単に説明した後、金属材料を中心に空孔を計測する意義および陽電子消滅法の適用事例について紹介する。

 

 

4. 産業分野における放射線非破壊検査(会員ページ ) 50分)

 

非破壊検査株式会社 技術本部 安全工学研究所 合田吉克

 

 放射線を使用した非破壊検査は、産業のあらゆる分野において活用されている。弊社はこれまで、X線およびγ線を使用した放射線透過試験(RT)により、各種プラントの建設時検査・定期検査に貢献してきた。近年では検査ニーズの多様化に対応するため、様々なRT技術が開発されてきている。講演では、その一つとして導入したX線CT装置を中心に紹介する。

 

76回 放射線科学研究会 「ONSA賞講演会」概要(講演案内)

2022802日(火)zoom開催が主体、サンエイビル

 会長挨拶              大阪ニュークリアサイエンス協会  松村 孝夫
 ONSAの事業と協会賞について  大阪ニュークリアサイエンス協会 専務理事  奥田 修一

2021年度受賞講演

 

1. イオンビームとX線の併用によるがん治療高度化に向けた治療生物学的な研究(会員ページ )

 

  若狭湾エネルギー研究センター 研究開発部 粒子線医療研究室 主任研究員 前田 宗利

 

 近年、複数の治療法を組み合わせて抗腫瘍効果を拡大させる集学的がん治療が積極的に用いられつつある。若狭湾エネルギー研究センターにおける基礎研究から、陽子線およびX線を併用した混合化学放射線治療の抗腫瘍効果の向上に資する成果が得られた。本講演では、陽子線とX線を併用した場合における、「照射の順番」や「間隔」、「線量の組み合わせ」が細胞致死効果に与える影響およびその作用機序、担がんマウスを用いた治療効果の検証について概説すると共に、今後の展望を紹介する。

 

 

 

2.ニュークリアフォトニクスで拓く「シングルショット中性子分析(会員ページ )

 

大阪大学 レーザー科学研究所 准教授  余語 覚文

 

 超高強度( >1018 Wcm-2 )の短パルスレーザーを薄膜に照射すると、1mm以下の領域から10 MeV級のイオンが加速される。本研究では、レーザー加速イオンを2次ターゲットに照射して高強度のパルス中性子を発生することで、中性子1パルスで1計測を完了する「シングルショット中性子分析」を追求している。講演では、中性子・X線同時ラジオグラフィ、および中性子共鳴吸収分析の進展について報告する。

 

 

 

過去の受賞者の最近の研究紹介

3.粒子線照射固相重合法による超微細直立有機ナノワイヤの構築(会員ページ )

 

京都工芸繊維大学 分子化学系 講師  櫻井 庸明

 

 著者らは最近、低分子共役化合物の薄膜を出発原料として超微細配向有機ナノワイヤを作製する手法を開発した。高エネルギー粒子線の垂直照射により、その直進飛跡であるナノ空間内で有機物を固相重合/架橋反応させ、反応後に粒子線未照射部位を昇華により除去することで、"直径が20 nm以下・太さ/長さが均一・アスペクト比が数100以上・数密度の制御が可能"であり、高度に垂直配向した重合ナノワイヤを単離した。講演では、このナノワイヤの詳細について紹介する。

 

 

4.放射光その場観察を利用した水素化物探索研究の最近の成果(会員ページ )

 

量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所 高圧・応力科学研究グループ グループリーダー   齋藤 寛之

 

 放射光その場観察と高温高圧合成法を組み合わせることで、アルミニウム−遷移金属合金水素化物など、従来の水素化物の探索指針に従わない新しい水素化物の合成に複数成功した。放射光その場観察により合成反応を「観ながら」の物質探索が可能となる。講演ではこれらの技術と得られた成果について紹介する。

 



75回 放射線科学研究会 「放射線に係る教育および知識普及活動の最前線」概要(講演案内)

20211216日(木)zoom開催が主体、サンエイビル

 

1. 放射線管理者に対する「よき人間性」教育 (会員ページ )30分) 

 

  NPO法人 安全安心科学アカデミー 理事長 辻本 忠

 

 放射線管理者は管理区域内で働く作業者及び管理区域周辺住民に対する放射線管理の役目を担っている。管理区域 内で働く作業者は不特定多数で、常に入れ変わる。放射線についての知識は持ち合わせていない。管理区域周辺の住民 は一般の生活者で、放射線に関する知識は持ち合わせていない。放射線管理者はこれらの人達に対して放射線に対す る管理を行なわなければならない。それにはお互いに心が通じ合う信頼関係が必用になる。それには人を思いやる、こ ころ豊かな「よき人間性」教育が必要である。上記理由により、認定 NPO 法人安全安心科学アカデミーは放射線管理 者に対して「よき人間性」教育を行なっている。本講演はその概要である。

 

 

 

2.大阪府立大学放射線研究センターにおける放射線教育 (会員ページ ) 40分)

 

大阪府立大学研究推進機構・放射線研究センター長 古田雅一

 

 放射線研究センターは、大規模な放射線施設とクリーンルームなど、国内の他の大学には見られない特徴ある設 備を有している。これらの施設は、学内外の共同利用の場として広く利用されており、これらの共同利用の成果は共同 利用成果報告書として毎年刊行されている。 現在のセンター教員 11 名は、物理、化学、生物、工学など広い分野で、施設を利用した特徴ある研究を継続してお り、同時に本学大学院工学研究科の量子放射線系専攻において大学院教育も担当し、毎年修士、博士の大学院生の教育 を行い、修了生を送り出している。さらに文部科学省の原子力人材育成イニシアチィブ事業に参画し、消防防災関係、 民間企業など産学官の様々なレベルの技術者に対して当センターの施設を利用した実践的な放射線教育と実習を行い、 高い評価を得ている。また高校生などの学生に対する施設見学や一般市民に対する基礎的な放射線教育も学園祭など 学内の種々のイベントや近畿圏の放射線関係団体と共同して、「みんなのくらしと放射線展」の活動も毎年継続して開 催しており、今年度も「第 38 回みんなのくらしと放射線展」を WEB 開催中である(みんなのくらしと放射線展 (housyasen-fukyu.com))。

 

 

 

3.近年における放射線教育の NPO 活動― 中学校教員の支援を中心に ―(会員ページ )  40分)

 

NPO法人 放射線教育フォーラム 事務局長 田中隆一

 

 放射線教育フォーラムは放射線・原子力の専門家、学校教育関係者の有志によって構成されるボランタリー組織 (2000 年にNPO認証)であり、当該分野に対する一般市民の公民的資質涵養を目的に、学校教育を主対象として20 数年間活動してきた。 義務教育における放射線学習指導復活の政策提言がフォーラム設立13年後に実を挙げたが、成果として期待され た中学校の放射線授業再始動の直前に 3.11 事故が発生した。2年遅れて、授業実践をためらう学校現場に向けて熱 意ある教員との意見交換の場を計8回設けた。授業支援活動などに加えて、放射線知識普及の立場から、一専門家から 観た放射線に関わる教科書記述の懸念材料にも言及したい。



 

 

74回 放射線科学研究会(核融合開発の現在)概要(講演案内)

20211129日(月)zoom開催が主体、サンエイビル

 

1. 核融合研究の100年史と展望(会員ページ )50分) 

 

  大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター 教授 松浦 寛人

 

 いわゆるゼロカーボンの手段として、政権与党の選挙で論じられ、ベンチャー企業の設立が報じられるなど、核融合研究をめぐる状態はこれまでにない状況にある。しかし、安易に「クリーン」を強調したり、実用化までに克服すべき課題を見誤ると、先行した核分裂の二の舞になりかねない。本講演では、核融合反応の発見まで遡り、核融合研究のエピソードや達成点を時代ごとに紹介し核融合の将来を議論したい。

 

 

 

2.わが国の核融合研究開発と量子科学技術研究開発機構(QST)の役割:
原型炉研究開発ロードマップ、イーター計画、幅広いアプローチ活動を中心に (会員ページ )
50分)

 

QST量子エネルギー部門 研究企画部 部長 東島 智

 

 カーボンニュートラルの実現が不可避とされる2050年頃をターゲットに、わが国は、太陽が輝く源である核融合を地上で起こす研究開発を、原型炉研究開発ロードマップに沿って進めている。QSTは国の指定を受け、日・欧・米・露・中・韓・印の7極の国際協力の下、重水素と三重水素を用いて持続的な核融合燃焼を実証するイーター計画を仏国で進めるとともに、並行して、イーターの次に最初に発電する「原型炉」を目指し、日欧協力の幅広いアプローチ活動を実施している。本講演では、これら研究開発について紹介する。

 

 

 

3.ITER用機器の開発についてートロイダル磁場コイルとダイバータターゲットを中心にー(会員ページ )  50分)

 

三菱重工業株式会社 新型炉・原燃サイクル技術部 核融合推進室 マネージメントエキスパート 清水 克祐

 

 日本が調達分担となっている機器の中で、ITERの主要機器であるトロイダル磁場コイル及び外側ダイバータターゲットに関して、厳しい要求条件を克服するために創意工夫した製造技術について概説する。特に、トロイダル磁場コイルへの製作精度要求は10m超長に対してmmのオーダーであり、原子力機器の製作で培った製造技術を基盤とし、数値シミュレーションも併用して、要求条件を満足する製品を提供できた。当日、可能であれば、製作ビデオをご覧いただければと考えている。

 

4.核融合炉材料のはなし(タングステンを中心として)(会員ページ )  50分)

 

大阪大学 工学研究科 教授 上田 良夫

 

 核融合炉では、核融合反応の際に中性子が発生するため炉材料の選択には中性子影響を考慮することが求められる。また、様々な機器で特有の性質(高融点や高熱伝導率、等々)を持った材料が使 用される予定であり、適切な材料選択とその適用技術の開発は核融合炉実現のために不可欠である。本講演では、核融合炉を構成する材料の選択基準や具体的に使用が検討されている材料について述べ、その後特に高い熱負荷を受けるダイバータで使用されるタングステン材料に焦点を当てて、求められる特性や研究開発の現状、及びその波及効果などを説明する。

 

 

 

73回 放射線科学研究会概要(講演案内)

20211129日(月)サンエイビル

 

ONSAの事業と協会賞について50分) 

 

  大阪ニュークリアサイエンス協会  奥田 修一

 

 

1. [ONSA賞]質量分析イメージング法によるPET診断用低酸素イメージング剤の腫瘍内集積機序の解明:
薬物相互作用の探索,創薬への展開
(授賞公開論文)50分) 

 

  京都大学 医学部附属病院  志水陽一

 

 ニトロイミダゾールを母核に有するPET診断用低酸素イメージング剤は、低酸素環境下細胞内の還元代謝により低酸素特異的に集積すると考えられてきたが、その詳細は不明であった。本講演では、化学形態を区別して組織内分布を可視化できる質量分析イメージング法を用いた本薬剤の腫瘍低酸素組織への集積機序の解明、集積機序に基づく本薬剤の薬物相互作用の探索、腫瘍低酸素のPET診断により最適な薬剤開発への展開について紹介する。

 

 

 

2.[ONSA賞]低線量X動画イメージングによる新しい肺機能画像診断技術の創出
― 息止めしないレントゲン検査 ―
(授賞公開論文)50分)

 

金沢大学 医薬保健研究域  田中利恵

 

 「大きく息をすって〜、ゆっくりはいてくださ〜い。はい、ゆっくりすってくださ〜い。撮影終了です」。このような合図で呼吸状態を撮影した胸部X線動画像には、横隔膜や胸郭の動き、肺血管・気管支の密度変化に起因する白黒濃淡変化が描出されている。これらの動的変化を数値化・可視化することで、造影剤や放射線医薬品を用いない肺機能画像診断を実現した。本講演では、開発した動画解析技術と最新の臨床研究成果を紹介する。

 

 

 

3.[ONSA賞]表面を一原子層単位の深さ精度で磁性探査できる新技術を開発
― 鉄の磁石の「表面の謎」を解明!― (授賞公開論文)
50分)

 

量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学部門  三井隆也

 

 量子科学技術研究開発機構は、放射光から放射性同位体線源よりも10万倍も輝度の高いγ線を発生させる技術を独自開発して材料研究に応用している。最近、この新しい量子ビームを用い、金属表面の磁性を原子層単位の深さ精度で調べる手法を実用化することで、40年前に予言された鉄の表面の磁力が原子層毎に増減する現象の観測に初めて成功した。本講演では、一原子層単位での局所磁性探査法の原理から応用までを紹介する。

 

 

 

72回 放射線科学研究会概要(講演案内)

(講演者略歴)

20201218日(金)サンエイビル

 

1. 阪大産研量子ビーム科学研究施設の紹介(会員ページ )50分) 

 

  大阪大学 産業科学研究所 誉田義英

 

 阪大産研量子ビーム科学研究施設は1957年に放射線の利用を目的として設置され、1978年に電子線形加速器の設置が認められて以降はCo-60γ線源の利用に加え、電子ビームの利用研究も行われてきた。その後FELや陽電子ビームの開発も行われ、更にRF電子銃ライナッ  クの設置も認められ、多様な電子ビーム・光の利用が進められている。本講演ではこれまでの経緯と現在の利用状況・形態について紹介する。

 

 

 

2.京大複合研電子ライナックの多目的利用(会員ページ )50分)

 

京都大学 複合原子力科学研究所 高橋俊晴

 

 30 MeVLバンドライナックで、数十MeVクラスとしては国内最高電流330μA、最大ビーム出力は10 kWである。可変範囲も、エネルギー646 MeV、パルス幅2 ns4 μsと広い。全国共同利用の装置として、ビーム出射時間は年間2,000時間を超え、パルス中性子、高エネルギーまたは低エネルギー電子線、制動X線、THz帯ミリ波帯コヒーレント放射光など多種粒子線源として、多様な研究分野に利用されている。

 

 

 

3.電子線照射装置とそのアプリケーション(会員ページ )50分)

 

株式会社NHVコーポレーション EB加工部 奥村康之

 

 放射線によるポリエチレンの架橋が発見されたころとほぼ同じ時期となる1957年に日新電機が電子線照射装置の開発に着手した。それから半世紀が過ぎ、弊社に受け継がれた電子線照射装置は35か国以上で活用され、モノづくりに貢献している。本講演では、電子線照射技術の利用例を交えて、今後、益々活躍の場が広がる電子線照射装置や照射サービスについてご紹介する。

 

 

 

4. 電子加速器のビームの特徴と利用研究および関西を中心とする施設の現状(会員ページ )50分)

大阪ニュークリアサイエンス協会 奥田修一

 電子加速器では、ビームのエネルギー、時間構造(パルス)、輝度などが制御でき、高度利用が行われている。電子ビームの特性と物質との相互作用の特徴、2次ビームとその応用、これまでの研究で得られたビーム利用に関する知見について述べる。一方で、新しい産業応用につながる基礎研究のために必要な汎用の加速器は、維持管理が困難になっている。関西を中心にこの現状を報告する。



 

71回 放射線科学研究会概要(講演者略歴)

2020年9月25日(金)サンエイビル

1. (ONSA奨励賞授賞講演)
イオン照射によるナノ組織制御を用いた超伝導材料の高特性化に関する研究 (授賞公開論文)

 

  関西学院大学理工学部  尾崎 壽紀

 

 現在、各種放射線の利用が日本の科学技術、社会・経済発展に非常に重要な役割を果たしている。特にイオン照射技術を利用した機能材料研究・開発は、今後大きな発展が期待できる科学技術分野である。 本講演では、エネルギー機能性材料である超伝導材料に、比較的低いエネルギー(数MeV以下)でイオン照射を行うことによる超伝導特性の高特性化について紹介する。

 

 

 

2.中性子ラジオグラフィの実用化に向けて(会員ページ )

 

日本非破壊検査協会 谷口 良一

 

 中性子ラジオグラフィ(NRT)はX線が苦手としている水素の検出が得意であり、この特徴に注目して、NRTはXRTを補う技術として、約半世紀前から技術開発が始まった。60年代にロケットの火工品(爆裂ボルト)などを対象として実用化が開始されて以後、中性子画像技術の開発は、順調に進められて、IPの利用、高感度化、CT化、高精度化などが進められた。 一方では中性子源の制約が大きく、その後の展開は、必ずしも順調とは言えないものがある。現時点においても中性子のイメージング技術は極めて限定された対象の検査、あるいは研究用の実験技術にとどまっており、産業用として広く普及しているとは言い難い。 本講演は、中性子の画像技術の現時点での全体像を紹介するとともに、中性子イメージングの発展の観点から、中性子源の開発、高感度撮像技術等の開発課題を明らかにすること目的としている。

 

 

 

3.日本、及び世界の負イオン型NBIの進展(会員ページ )

 

核融合科学研究所 津守 克嘉

 

 核融合研究における、中性粒子ビーム加熱方式(NBI)は核融合プラズマの加熱と電流駆動に必須な手法である。核融合プラズマ閉じ込め装置の大型化を見越して日本が世界で初めて開発と実用化を行ない、同型NBIは、将来のITERやDEMOでも採用され、建造が予定されている。 本講演では、日本での負イオン型NBIの開発、負イオン源内プラズマの特異な物理現象、そして今後の負イオン型NBIの展開を説明させて頂く。

 

 

 

4. 実験動物モデルを用いた放射線発がん研究(会員ページ )

広島大学 原爆放射線医科学研究所 笹谷 めぐみ

 放射線は線量依存的に発がんリスクを増加させる。しかしながら、低線量・低線量率放射線被ばくによる発がんリスクは未だ明らかにされていない。また一般的に、若年期被ばくは、成人期被ばくよりも発がんリスクが高いがその機構は明らかにされていない。 そこで我々は、実験動物モデルを用いて低線量・低線量率発がんリスク評価や被ばく時年齢が放射線発がんへ及ぼす影響解明を行っている。本研究会では、その研究結果について紹介したい。


 


5. 若狭湾エネルギー研究センターの加速器を用いた材料改質・分析実験(会員ページ )

(公財)若狭湾エネルギー研究センター 研究開発部 石神 龍哉

 若狭湾エネルギー研究センターには200 kVイオン注入装置、タンデム加速器、シンクロトロンという3つの加速器が設置されている。講演ではそれらを使った研究の一部を紹介する。 鉄白金薄膜磁石への窒素イオン注入による保磁力増大、イオン照射による保磁力の低下と弾き出し原子密度との関係について説明する。また、大気中に置かれた材料中の水素が加熱により減少する様子を、高エネルギーイオンビームを用いて観察した結果を報告する。