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放射線研究会リスト

放射線シンポジウムリスト

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70回 放射線科学研究会概要

2019年10月25日(金)サンエイビル

1. (ONSA奨励賞受賞講演)
医療の現場で用いられる放射線〜骨髄移植の前処置における実態と工夫

 

  京都大学医学部附属病院 血液内科 新井 康之

 

 難治性造血器腫瘍(血液がん)の代表格である、急性白血病に対しては、同種造血幹細胞移植(いわゆる骨髄移植)が有効な治療である。その際、腫瘍細胞を根絶させ、ドナー細胞生着のスペースを作出するために、大量抗がん剤に加えて、全身放射線照射(標準12Gy)を組み合わせた「前処置」が用いられる。放射線照射の効果を最も効率よく引き出す前処置を見いだすべく、大規模データベースを用いた研究成果を提示する。

 

 

 

2.放射線によるがんリスクと動物実験(会員ページ )

 

量子科学技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 今岡 達彦

 

 本講演では、学生や一般市民の聴講者を念頭に、まず、放射線被ばくによるがんリスクについて、専門家の共通認識とされていることや最新知見を説明する。続いて、講演者が所属する研究グループにおける放射線発がん動物実験の成果として、低線量率被ばくのリスク研究や年齢による違いの研究、放射線誘発がんのメカニズムについて紹介したい。

 

 

 

3.原子力機構における核分裂の実験研究(会員ページ )

 

日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門 西尾 勝久

 

 核分裂は、原子力エネルギー利用の基礎となる現象である。また、核分裂は超重元素の安定性を支配し、元素の存在限界を決めるとともに、天体での元素合成における"核分裂リサイクル"は元素の存在量に大きく影響を与える。核分裂の理解は、応用と基礎科学の進展に広く資する。ここでは、原子力機構・タンデム加速器(東海)を用いた核分裂の実験研究の最近の成果について報告する。

 

 

 

4. 量子ビームにより作製する量子センサの形成技術(会員ページ )

量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所 小野田 忍

 近年、量子センシングと呼ばれる超高感度計測技術が急速に発展している。量子センシング技術は、量子効果を利用して極微小な物理量を計測する技術のことである。我々は、様々な量子ビームを駆使してダイヤモンド中のNV(窒素・空孔)センター等の量子センサの作製手法開発に取り組んできた。発表では、世界的な技術動向にも触れながら、我々の取り組んできた量子ビームによる量子センサ形成技術について紹介する。


 


5. ミクロとマクロをつないで原子炉の安全を予測する(会員ページ )

京都大学エネルギー理工学研究所 森下 和功

 持続可能な社会を実現するには、福島原発事故を経験した現在でもなお、原子力エネルギーの利用は欠かせない。安全の議論はますます重要になる。大きな原子炉の堅牢性は、炉を構成する材料内のナノレベルの現象によって決まる。ナノ現象を理解し、予測し、そして制御することで、巨大な原子炉システムの健全性が保たれる。数値シミュレーションによる照射下材料挙動モデリングの研究を紹介する。

 

69回 放射線科学研究会概要(聴講記

2019年7月16日(水)住友クラブ

1. (ONSA奨励賞受賞講演)
研究用原子炉による放射化分析法を用いた固体地球化学試料中のハロゲン及び微量元素定量(30分)(授賞公開論文 )

 

  京都大学 複合科学原子力研究所  関本 俊

 

 中性子放射化分析は、元素分析法の一つで、元素によっては極めて少ない量を感度良く、正確に調べることが可能である。我々はハロゲン元素(塩素、臭素、ヨウ素)に注目しており、岩石試料中の微量ハロゲンを精密に定量する方法を開発した。講演では、この手法の特長を説明し、これを用いて、米国地質調査所他が発行した標準物質のハロゲンを分析した結果を示す。また得られた値を、報告済みの文献値と比較することにより評価する。

 

 

 

2.放射線が半導体デバイスに与える影響―見えない敵との闘い (50)(会員ページ )

 

株式会社ソシオネクスト 品質保証統括部 松山 英也

 

 地上に降り注ぐ宇宙線は半導体デバイスの誤作動の原因となる。この現象は50年ほど前からソフトエラーとして知られている。微細化に伴い従来とは異なる多ビット反転や、ラッチアップが起こる可能性が出てきており、システムの連続稼働・自動化が進む中で大事故につながりかねない脅威となる。ソフトエラーの正確な実力把握と事前に十分な対策を行うことが必須である。講演では影響と対策について実例を交えご紹介する。

 

 

 

3.PETを用いた新しい放射線治療(50)(会員ページ )

 

京都府立医科大学 放射線医学教室 玉木 長良

 

 ポジトロン断層撮影法(PET)は、生理的・生化学的機能情報の定量的映像化に優れた画像診断法である。中でも悪性腫瘍の診断・評価に利用されており、治療効果判定を客観的に行うことができ、治療戦略に有効となる。また画像誘導放射線治療が進んでおり、PET情報に基づいた放射線治療への応用に期待がかかる。 他方、新しいPET用の薬剤が開発されており、低酸素イメージングやアミノ酸イメージングの応用が始まっている。また新しい内用療法薬の開発が進み、甲状腺がんに加えて、今後悪性腫瘍の診断と治療を密接につなげる懸け橋(Theranostics)となる点で期待が膨らむ。

 

 

 

4. ヘリウムプラズマ照射による金属材料の表面改質(50分)(会員ページ )

名古屋大学 未来材料・システム研究所 梶田 信

 エッチングやコーティング等のプラズマ照射による表面改質は、様々な分野で応用されてきた。希ガスであるヘリウムをプラズマ源として用い,ある条件を満たし金属に照射をすると,表面にフラクタル性を有する繊維状のナノ構造が形成されることが見いだされ,この10年ほどの間に盛んに研究が進められてきた。表面は黒色化し,表面積は桁違いに増大するため光触媒やガスセンサー等様々な応用が検討され始めている。


 


5. リガクの製品紹介と業界動向(50分)(会員ページ )

株式会社リガク X線研究所XRF研究部 堂井 真

 リガクはX線分析機器製造・販売専門メーカとして1951年に設立し、以来60年以上にわたり、その技術・ノウハウを蓄積してきた。リガクの主な製品はX線回折装置と蛍光X線分析装置で、大学・研究機関での基礎研究から製造現場での工程管理分析まで広く使用されている。本研究会ではリガク製品の紹介と特に蛍光X線分析に関して最新動向について発表する。

 

68回 放射線科学研究会概要(聴講記)

平成31417日(水)住友クラブ

1. 放射線によって生じるDNA損傷の可視化と定量方法の確立(50分)(会員ページ )

  量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所  中野 敏彰

 放射線は飛跡に沿って分子を電離することから、照射された細胞では、飛跡と重なるDNA部位に高密度な損傷(クラスター損傷)が生じると考えられている。しかし、実験的に高密度損傷の存在を実証した研究はない。そこで私は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いクラスター損傷を個別に可視化・検出方法を確立し、放射線を照射したプラスミドに生じた損傷の解析を行った。本講演ではこの結果についてお話する。

 

2.高レベル放射性廃棄物低減に向けた基礎研究と今後 (50))(会員ページ )

理化学研究所 仁科加速器科学研究センター  櫻井 博儀

 原子力発電所などで生じる長寿命放射性核種の問題は我が国のみならず世界的な課題である。2013年より理化学研究所ではこの課題に挑戦している。加速器を利用した核変換システムを念頭に、長寿命核種を安定もしくは短寿命核種に変換するための核反応データの取得、核変換用大強度加速器の設計などを行っており、これらの研究開発の内容と今後について紹介する。

 

3.重力波と同時観測されたガンマ線バーストの正体は?(50))(会員ページ )

京都大学 基礎物理学研究所  井岡 邦仁

 アインシュタインが一般相対性理論を提唱して100年目の2015915日に重力波が直接検出された。2つのブラックホールが合体したのである。さらに2017817日には2つの中性子星の合体からの重力波も発見され、同時にガンマ線バーストなど、あらゆる波長の電磁波も観測された。本研究会では、重力波の発見から始まった怒涛の発展と興奮を将来展望も含めてお伝えしたい。

 

4. 次世代のための効果的なエネルギー教育をめざして

 〜エネルギーリテラシー研究より報告〜(50分)(会員ページ )

エネルギーリテラシー研究所  秋津 裕

 エネルギーの安定供給と地球温暖化問題に対処しながら適切なエネルギー選択をするめには、エネルギーリテラシーが必要となる。しかし、エネルギーや環境,原子力や放射線といった社会全体で取り組む課題は、個人の行動とその結果の結びつきが見えづらいため、知識があっても行動には結びつかないことがわかっている。行動に結びつく効果的な教育を提供するには、人々のエネルギーリテラシー構造を知る必要がある。

 

 

67回 放射線科学研究会概要(聴講記

平成301026日(水)住友クラブ

1. 照射によって改質した材料表面層の微細組織観察技術と観察例(50分)(会員ページ )

  国立大学法人 東北大学 金属材料研究所 千星 聡 

 イオン照射の影響を受けた材料表面層付近を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察するためには、電子顕微鏡本体の基本構造や結像法に関する基礎知識だけでなく、観察対象に適した薄膜試料を作製する実践的技術が肝要となる。講演では、表面層断面を観察する際に多用されるイオンミリング法および集束イオンビーム(FIB)加工法の特徴やノウハウを解説するとともに、これらを駆使して作製した種々のイオン照射試料の観察・解析事例を紹介する。

 

2. ADS用材料に関する研究の現状 (50)(会員ページ )

国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究センター 大久保成彰

 原子力発電で生じた使用済燃料中に含まれる長寿命核種を核変換し、短寿命化するため、加速器駆動核変換システム(ADS)の研究開発を進めている。ADSは、高強度陽子ビームをターゲットに当てることで核破砕中性子を発生させ、核変換を行うため、炉心材料は過酷な照射環境に晒される。また、ターゲット及び冷却材として用いる液体金属(鉛ビスマス合金)により、材料では腐食や脆化が生じる。ADS材料に関する研究開発の現状を紹介する。

 

3. X線回折によるワイドレンジ高速検出器を用いた高速残留応力測定(50)(会員ページ )  

株式会社 島津製作所 分析計測事業部 小川理絵  

 従来のX線回折装置による残留応力測定では、1本の回折ピークを何度もスキャンして測定する必要がある。多数の半導体チャンネルからなるワイドレンジ高速検出器を使用すると、広い取り込み角度を生かして10度〜20度(ゴニオメータに依存)もの角度範囲のデータが一度に取り込めるため、ゴニオメータのスキャンが不要でψ角度のみを変えて測定すれば良く、短時間で結果が得られる。このワンショット分析を生かした高速残留応力測定例について紹介する。

 

4. リスクコミュニケーションを社会心理学から考える(50分)(会員ページ )

関西大学 社会安全学部 土田昭司

 放射線の健康影響についてはいわゆる専門家と非専門家である一般市民ではその認識が異なることが多い。そのため両者間でのリスクコミュニケーションには困難が生じやすい。その原因となる心理メカニズムを社会心理学の観点から考える。さらに、リスクコミュニケーションが必要となる社会のガバナンスについても社会心理学的観点から言及する。

 

66回 放射線科学研究会概要(聴講記

1. 超伝導薄膜へのイオン照射効果(50分)(会員ページ )

平成30717日 (火)住友クラブ

 

関西学院大学理工学部 先進エネルギーナノ工学科  尾崎 壽紀

 

 エネルギー機能性材料である超伝導体は低炭素社会を実現する省エネ・蓄エネ材料の中核となりうる。イオン照射技術を用いて超伝導体内に欠陥を導入することで、より多くのゼロ抵抗電流を流すことができる。本講演では、銅酸化物系(YBa2Cu3Oy)及び鉄系(FeSe0.5Te0.5)超伝導薄膜に比較的低いエネルギー(MeV以下)でイオン照射をすることで形成された欠陥と超伝導特性との関係について詳しく紹介する。

 

 

 

 

2.放射光X線による選択的な電子励起−その物質・材料科学への応用− (50)(会員ページ )

 

 

日本原子力研究開発機構  馬場 祐治

 X線を物質に照射すると、他の放射線と同様、イオン化や電子励起が起こる。しかし放射光X線には、他の放射線にはない特徴がある。それは内殻軌道の電子を「選択的に励起」できることである。これにより、物質内の「特定の元素」、「特定の結合」、「特定の向き」だけを選択的に電子励起できる。講演では、簡単な分子結晶から有機分子、生体分子などについて、選択的な電子励起を使った化学反応や構造解析の研究例を紹介する。

 

 

 

 

3.Hsp90 阻害剤と放射線の併用療法の可能性(50)(会員ページ )

 

量子科学技術研究開発機構・放射線医学総合研究所  岡安 隆一

 

 様々なHsp90阻害剤と放射線の併用療法研究の結果、比較的毒性の少ないTAS-116という化合物に遭遇した。TAS-116X線、さらに重粒子線との併用実験の結果、幾つかのがん細胞において顕著な放射線増感が観測され、その主原因はDNA二重鎖切断修復の阻害にあることを確認した。この増感現象は正常細胞との併用では観察されなかった。今回はin vivoでの検証も含め、Hsp90阻害剤と放射線併用療法のポテンシャルを議論したい。

 

 

 

4. 高強度低速陽電子ビームライン開発と材料研究への応用(50分)(会員ページ )

京都大学複合原子力科学研究所  木野村 淳

 陽電子消滅分光は材料中の空孔型欠陥を検出できるユニークな計測方法として知られている。加速器や原子炉を陽電子線源とするエネルギー可変の高強度陽電子ビームを用いることで、薄膜中や材料表層付近に局在する空孔型欠陥の検出が短時間でできる。さらに、深さ依存性を持つ材料の測定にとどまらず、同方法をその場分析に利用することで、イオンビーム照射下の欠陥状態など、空孔型欠陥の過渡変化観測などへの発展が可能である。

 

65回 放射線科学研究会概要聴講記

1. 幹細胞と神経発生への放射線影響(会員ページ )

平成30411日 (木)住友クラブ

 

  

東京工業大学 科学技術創成研究院  先導原子力研究所  島田 幹男

 

 細胞は酸化ストレスや放射線など常にゲノムDNAに対するストレスを受けているため、これに対抗するDNA修復システムを生物は進化発達させてきた。

我々はこれまで神経系におけるDNA修復システムに着目し、脳神経のみでDNA修復を欠損させた遺伝子改変マウスやiPS細胞を経由した神経幹細胞を作製し、放射線応答やDNA損傷応答機構を解析してきたのでそれらの結果を紹介するとともに、神経系と幹細胞における放射線応答機構について概説したい

 

 

広島大学 大学院工学研究科  田中 憲一

 

2.イメージングプレートを用いた中性子捕捉療法ビーム成分分布の測定 (会員ページ )

 

 がんの放射線治療においては、生体内の線量・線質の分布の評価が重要となる。

体外から放射線を照射する「外 部照射」による治療では、照射場の、即ち生体に入射する放射線の量・質の面分布を確認することで、生体内の線量・線質分布を簡易的に担保するという考えがある。

本報では、イメージングプレートを用いたBNCTのビーム成分二次元分布測定における研究進展を報告する。

  酸化物分散強化(ODS)鋼は、微細な酸化物粒子を高密度に分散させた鉄鋼材料であり、高温強度、耐食性および耐照射性に優れているため、次世代原子力システムや核融合炉の構造材料としての利用が期待されている。

近年は、現行の燃料被覆管材料であるジルカロイに替わり、Al添加型のODS鋼を事故耐性燃料被覆管として使用することが検討されている。本講演では、ODS鋼の優れた材料性能を紹介するとともに、事故耐性燃料被覆管の開発の現状について報告する。

 

 

 

3.次世代原子力材料FeCrAl-ODS鋼の研究開発(会員ページ )

 

京都大学エネルギー理工学研究所   木村 晃彦

 

 

 

 

4. 試験炉建設を顧みて(会員ページ )

元日本原子力研究所  田中 利幸

 動力炉開発を胸に秘め、日本原子力研究所に入所したのは、ほぼ半世紀前、二つの試験炉(材料試験炉JMTRと高温工学試験研究炉HTTR)建設に微力を尽くして退職してから15年が過ぎた。様々な思いがあるが、「温故知新」の心を忘れないでほしいという意味で、試験炉建設から学んだことの一端を紹介したい。試験炉の歴史については、日本原子力研究所史、最近の試験炉の動向などは日本原子力研究開発機構のHPに詳しい。

 

  

64回 放射線科学研究会概要(聴講記</span

1. 軽水炉構造材料の照射挙動(会員ページ )

平成291020日 (金)住友クラブ

  (株)原子力安全システム研究所 技術システム研究所  福谷 耕司

 

 

 軽水炉では運転中に核燃料から中性子やγ線が多量に放出されるため、核燃料周辺の構造物では照射による損傷が蓄積し材料性質が大きく変化する。
 本講演では、重要構造物である原子炉圧力容器と炉内構造物に使用されている材料の照射挙動について、その特徴と工学的対応、原子レベルのアトムプローブ分析など研究所で行っている劣化メカニズムの研究を紹介する。

 

 

2.トリチウムの特徴と安全取り扱い技術(会員ページ )

 

 

富山大学 研究推進機構 水素同位体科学研究センター  波多野 雄治

 

 

 

 トリチウムは低エネルギーのβ線(最大18.6 keV)のみを放出する水素の放射性同位体で、核融合炉の燃料であり、また福島第一原発の汚染水中に残存する厄介者でもある。生体中のβ線の飛程が約6μmと短く、外部被ばくは問題とならないが、一般的な放射線測定器では検出できないなどの注意点もある。本講演では、トリチウムの特徴と、安全取り扱い技術に関わる研究開発の内容をご紹介する。

 

 

 

 

 

3.細胞内抗酸化性を向上させる低線量放射線バイスタンダー効果(会員ページ )

 

名古屋大学 未来材料・システム研究所  熊谷 純

 

 

 放射線被曝した細胞から分泌される因子が未被曝の細胞に対して作用する放射線バイスタンダー効果は,低線量被曝影響を解明する上で重要である。講演では,被曝した細胞(ドナー)から分泌される因子を含む培地を未被曝の細胞(レシピエント)に作用させると,低線量においてレシピエント中の細胞内抗酸化性が向上したこと,ドナーからの細胞外小胞(エクソソーム)のサイズ分布が低線量被曝で変化したことを紹介する。

 

 

 

 

 

4. ホウ素中性子捕捉療法のための生物影響研究(会員ページ )

京都大学原子炉実験所  木梨 友子

 ガン細胞にホウ素-10を集積させて熱外中性子を照射し、ガン細胞を攻撃する治療方法がホウ素中性子捕捉療法(BNCT)である。BNCT治療患者の血中リンパ球を用いた線量評価でBNCTでは全身被ばく線量が一般の放射線治療に比べて5分の1程度となることを証明した。また、BNCTにおいてラジカルスカベンジャーが正常細胞について防護効果があることやガン細胞を用いて中性子によるDNA損傷の特徴を明らかにした。

  

63回 放射線科学研究会概要(聴講記

平成29721日 (金)住友クラブ

1. プロトンビームライティングによる多種多様な材料の微細加工・改質と応用(会員ページ )

 プロトンビームライティングは、百万ボルト級の静電加速器で加速した陽子の直進性と物質中での高い反応性を活かした直接描画技術である。多種多様な材料を対象に、高アスペクト比加工や長深度における改質により、ミクロン・サブミクロンスケールのピラーアレイ構造による誘電泳動デバイス、マイクロレンズアレイ、光導波路の形成等に関する講演者らの取り組みを紹介する。国内外における当該技術の研究動向についても報告する。

芝浦工業大学 工学部電気工学科 西川 宏之

 

 

 

 

 

2.イオンマイクロビームの応用 (会員ページ )

 

量子科学技術研究開発機構・高崎量子応用研究所 佐藤 隆博

 

 

 

 量研高崎量子応用研究所のイオン照射研究施設では、サイクロトロンに接続された2つの高エネルギー重イオンマイクロビームシステム、3MVタンデム加速器に接続された重イオンマイクロビームシステム及び3MVシングルエンド加速器に接続された軽イオンマイクロビームシステムを開発し、生物細胞等の複雑な内部構造をもつ系内の局所分析や局所照射効果の研究に用いている。本講演では、これらの最近の研究について紹介する。

3.酸化物中のイオントラック構造と微細組織発達(会員ページ )

 

 

 

 

九州大学大学院 工学研究院  安田 和弘

 

 

 

 酸化物は耐照射損傷性に優れ、新型核燃料や長寿命核種核変換材料として期待されている。これらの材料の使用中に発生する核分裂片は70-100 MeVの高エネルギーを有し、殆どのエネルギーを電子励起によって失いながら照射欠陥を形成する。本講演では、核分裂片を模擬した高速重イオンを照射した酸化物中の照射欠陥(イオントラック)の構造を原子レベルで示すと共に、電子励起損傷の重畳に起因して発達する微細組織変化について議論する。

 

 

 

4. 放射光による反応観察を活かした材料開発(会員ページ )

高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所  木村 正雄

 電子を加速した際に発生する放射光(X)は、(1)任意のエネルギーが利用可能、(2)非常に強度(高輝)が強い、(3)平行光である、(3)パルス光である、等の優れた特徴を有しており、それを活かした様々な反応の観察が可能となる。本講演では、(a)湿潤環境でのその場観察、(b)高温・ガス雰囲気でのその場観察、(c)非平衡の時分割測定X線、の例を取り上げ、材料開発に及ぼすインパクトも含めて紹介する。

  

62回 放射線科学研究会概要(聴講記

平成29414日 (金)住友クラブ

1. 若狭湾エネルギー研究センター加速器施設の現状(会員ページ )

若狭湾エネルギー研究センター 羽鳥 聡

 エネルギー関連技術や地域産業への応用技術の研究、研修などを目的として、1994年財団法人若狭湾エネルギー研究センターが設立された。1998年に建設の始まった加速器施設は5MVタンデム加速器と200MeV陽子シンクロトロンおよびビームライン群を擁する。タンデム加速器を用いたイオンビーム分析利用、シンクロトロンを用いたがん治療臨床研究、生物照射、宇宙機搭載機器の耐放射線性能評価などが行われている。

 

2.中性子とX線を用いた熱流動現象の可視化計測(会員ページ )

京都大学原子炉実験所 齊藤 泰司

 

 中性子は、ほとんどの金属を透過する一方で、水素含有物に感度が高い。したがって、中性子イメージングでは、X線イメージング(レントゲン)では得られない特徴的な可視化計測が可能である。

本講演では、主に京都大学原子炉実験所で行われている共同研究を中心として述べ、さらに中性子と相補的な特性のあるX線イメージングおよび、J-PARCを用いたパルス中性子イメージングについて述べる。

 

3.抗腫瘍免疫の低線量率放射線照射による抑制を飼育環境変化で緩和する試み(会員ページ )

(公財)環境科学技術研究所 高井 大策

 

 放射線照射が生物に及ぼす悪影響の緩和のために、マウス飼育環境のエンリッチメントを行い移植腫瘍排除能を観察したところ、高線量率放射線照射マウスにおける移植腫瘍排除能の顕著な低下が環境エンリッチメント処置により有意に抑制されていることが示された。この結果は放射線被ばくの悪影響に対し生活環境改善による緩和の可能性を示唆するものである。

本記載事項は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。

 

4. 研究用原子炉の歴史を顧みて(会員ページ )

元日本原子力研究所 宮坂 靖彦

 

 我が国の原子力開発利用にとって、研究用原子炉(JRR-1)の初臨界(19578月)からまもなく60年を迎え、本年は記念すべき年である。本報告では、すでに役割を果たし廃炉になったJRR-1及びJRR-2、震災後の見直しで閉鎖を決定したJRR-43.5MW)及びJMTR50MW)、ならびに再稼働準備中の改造炉JRR-3M20MW)及び安全性研究用のNSRRの歴史を顧みる。

また、研究炉の重要性について、海外の研究炉の動向を含め原子力技術開発、中性子利用の観点から述べる。

 

  

61回 放射線科学研究会概要(聴講記

 平成281021日(金)住友クラブ

1. transXend検出器を用いたエネルギー分解コンピュータ断層撮影法(会員ページ )

  京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻 教授 神野 郁夫

 X線を電流として測定する従来のコンピュータ断層撮影(CT)では、被検体の寸法やX線管電圧により測定値が変化する。
この状況を打開するため、X線を電流として測定し解析によりエネルギー分布を得るtransXend検出器を開発し、エネルギー分解CT法の研究を行っている。エネルギー分解CTを用いた物質識別、実効原子番号などの測定例を述べ、将来の臨床応用のため,transXend検出器の2次元化法を紹介する。

 

 

2.小型加速器中性子源によるMo-99製造装置の開発(会員ページ )

(株)京都ニュートロニクス 代表取締役社長 平井 敦彦

 核医学検査薬「テクネチウム製剤」の原料となる「モリブデン-99(以下Mo-99)」は100%輸入であり、しかも製造には老朽化した研究炉(原子炉)が使われているため、今後安定供給に向けた対策が急務である。
Mo-99
を安価で迅速提供可能にする小型加速器中性子源を利用したMo-99製造装置の開発状況について報告する。

 

 

3.量子ビームを用いた有用微生物資源の創成に関する研究(会員ページ )

量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門 高崎量子応用研究所放射線生物応用研究部
プロジェクト「イオンビーム変異誘発研究」 上席研究員 佐藤 勝也

 量子ビームを用いた有用微生物資源創成に向けたイオンビーム利用技術の高度化を目指すと共に、外部研究機関と連携して農業・発酵・環境保全などの様々な産業分野で使用されている微生物の突然変異育種技術の開発に関する研究を進めてきた。
本講演では、イオンビーム育種技術の特徴と微生物における主な成果、ならびに利用の現状等について概説する。

 

 

4. 福井大学附属国際原子力工学研究所における放射線・原子力教育の取り組み(会員ページ )

福井大学附属国際原子力工学研究所 教授 福元 謙一

 福井大学附属国際原子力工学研究所(研究所)は福井県嶺南地域の原子力施設を利活用し、北陸・中京・関西地区の大学と共に連携しながら、軽水炉から高速炉までの原子力発電、原子力防災・危機管理、廃止措置および放射線利用の基礎から実学までの研究を行い、同時に国際的な原子力人材育成を行っている。
本講演では研究所の研究・教育・拠点化活動について紹介する。