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UV_EB研究会リスト

放射線研究会リスト

放射線シンポジウムリスト

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第3回放射線利用総合(第5回放射線プロセス)シンポジウム

(放射線照射振興協会と共催)

平成51124日〜25日 於 なにわ会館

01.電子線による発泡ポリオレフィンシートの表面加工(会員ページ )

古川電気工業株式会社  堅持 孝明

ポリオレフィン系樹脂を用いた発泡シ一トは、断熱性、クッション性等の優れた特性を有していることから、建築用断熱材、車輛用内層材、工業用断熱材、家庭用製品等多くの分野で使用されている。発泡体には架橋タイブと無架橋夕イプがあり、それぞれ製造方法が異なる。無架橋夕イプは、一般に押出発泡法を用いて製造されている。この場合、酎熱性や熱加工性に若干問題があり、用途が限られている。

また架橋タイプは、さらに架橋方法の違いにより大きく 2つに分類されている。一つは、架橋剤を用いて架橋させる化学架橋法であり、もう一つは、電子線を用いて架橋させる電子線架橋法である。

化学架橋法では、樹脂に架橋剤と発泡剤を混合し、シート状に成形した後、加熱炉内で樹脂を架橋させると同時に発泡させるため、加熱炉の温度条件が発泡シ一トの良否に大きく影響する。また、化学架橋法では、電子線架橘法と比較して厚物品が容易に得られるという利点があるが、表面の凹凸がやや大きく、表面の気泡膜の破壊が起こりやすい。そのため、接着性や印刷性等が低下する場合がある。

我々は、この表面性を改良するために、加熱炉に投入する前の未発泡シ一トの表面層にのみ電子箱を照射する方法についての検討を行った。

102.電子線グラフト重合によるポリエチレンフォームの改質(会員ページ )

三和化工株式会社  吉澤  巌

放射線グラフト重合は、少量のモノマーをポリマー表面に反応させることで、幹ポリマ—の有利な性質を損なうことなく、幹ボリマーが持っていない性質を導入することが出来るので、ファイバ一状、フィルム状、シート状、ファブリック状の高分子材料についてその改質を目的として研究が行われている。

しかし、11つの気泡が互いに独立している独立気泡型のフォーム状の高分子材料については、材料の中にモノマーを含浸させることが不可能であるので、これまでグラフ卜重合の研究を行うことができなかった。これに対して、それぞれの気泡が通じあっている構造をもつ連続気泡型のポリエチレンフォームにはモノマ一を含浸させることが可能であるので、この材料にたいするグラフト重合の研究を行うことができる。

連続気泡型ボリエチレンフォームの機械的性質はポリウレタンフォ—ムに似ているが、耐酸・アルカリ性、耐溶媒性に優れ、また耐水性、電気絶縁性、耐寒性にも優れており、自動車、弱電、土木、建築等の広い分野にわたって用途がある。

一方、連続気泡型ポリエチレンフォームは、疏水性であること、燃えやすいという性質を持っている。これらの性質を改善することにより、さらに広い用途が開けることが期待される。

本報告では、この目的のために行った電子線による連続気泡型ポリエチレンフォームへのグラフト重合の研究について述べる。

103.放射線グラフト重合膜(会員ページ )

株式会社ユアサコーポレーション  丹沢 紫郎

放射線グラフト重合法は放射線の透過性を利用し、既存の形状をした高分子素材に機能を導入する方法として有効である。高分子素材としては不織布、繊維、フィルムなどが利用することができ、素材の特性を損なうことなく、目的に応じた機能を導入することができる。本稿ではポリオレフィン系フィルムを基材として用いた放射線グラフト重合膜について紹介する。

104.放射線架橋による応用製品の開発(会員ページ )

日立電線株式会社  関  育雄

現在酎熱性の熱収縮チュ一ブとしてはシリコ-ンゴム、テトラフル才ロエチレン一ヘキサフル才ロブロピレン樹脂(FEP)等が知られている。しかしシリコ一ンゴムは強じん性や耐油性、耐薬品性、またFEPは可とう性や収縮性に劣る欠点がある。

そこで我々は当社独自の可とう性ふっ素樹脂(フロンレツクス)応用の一環として熱収縮チューブへの適用を検討し、上記の欠点が解消されたタイプを開発したので報告する。

食品照射

105.照射食品中の残留放射能の評価(会員ページ )

大阪府立大学先端科学研究所  古田 雅一

1980年のFAO/IAEA/WH0合同専門家委員会において10kGyまでの照射における照射食品の健全性が認められて以来、食品照射が許可されている国は37力国に達し、なかでも香辛料の照射は25力国において許可されている。そのうち米国、オランダを含む15力国ではすでに実用照射が始まっている。しかし、消費者にとって放射線照射は核兵器や放射能汚染を連想させる否定的なイメ一ジがあるためか食品照射の受け入れは思うようには進んでおらず、実用化の歩みはまだまだいのが現状である。

食品照射に関する誤解のうち最も基本的なものは「放射線照射によって食品が放射能を帯びるのではないか?」という感念である。

食品の放射線照射により生じる可能性のある光核反応については理想的な元素組成を持つ食品モデルを用いて理論計算が行われ、その結果、得られた「6O-Co137-Csのガンマ線、10MeVまでの電子線、5MeVまでのエックス線のエネルギー範囲では誘導放射能は生じない。」という結論は専門家には常識として受け入れられているが、専門外の人にとっては難解であり、すぐに受け入れることは困難であると思われる。

従って、照射食品の誘導放射能に関する誤解を取り除くためには、すでに得られた検討結果を消費者に対して分かりやすく説明すると同時に、個々の照射食品の放射能測定デ一夕を合わせて示すことが必要である。そこで著者らは、放射線照射による殺菌の実用化がもっとも期待されている香辛料の中からわが国での消費量が多い数種について、元素組成から10MeV電子線照射により生じる可能性のある(γ、n)反応をリストアップし、電子線照射した試料について放射能測定を行い、新たな放射能が検出されるかどうかを調べた。さらに(γ、n)反応の標的核種を含む化合物を試料に加えて照射した場合の放射能測定を行い、誘導放射能の量的な評価を試みた。

106.放射線照射による香辛料・タマネギの風味変化(会員ページ )

お茶の水女子大学 小林 彰夫

食品照射において、FAO/WHOの食品規格委員会が勧告している線量は1OkGy以下であり、この低エネルギー下では、食品の変化はなく、安全であるとされている。しかし、食品は単なる安全性のみで摂取されるものではなく、味や香りなど微妙に変わるフレーバ一成分についても科学的研究を十分に行う必要がある。

ある種の食品によっては、低線量でもフレーパ一の変化が、人間の感覚で認識される場合があり、牛乳を0.1kGy照射すると異臭を生じるとの報告もある。従来フレーパーの分析は、通常の天然物化学の成分分析の手法によるものが多く、感覚的な評価の相違を、分析デ一タとして示すには不十分なケ一スも多い。また、不安定なフレ一バー成分では、得られたデータが照射によるものか、分析上のア一トフアクトによるものかはっきりしないものが多かった。

今回の実験では、新しいフレーパー分析の手法を照射食品に応用して、より正確な食品の値全性を確かめることを目的とした。研究対象として香辛料の代表であるコショウとタマネギを取り上げたが、前者は照射殺菌が最も期待される食品であり、かつ食品照射の必要線量としては、最も高い線量(105OkGy)が認められていることから適当と判断した。

後者のタマネギについては、バレイショに次ぐ発芽抑制に食品照射が最も期待される作物であり、かつ最も低線量照封で生命現象を持続している素材の変化を検討することができる。

107.放射線照射と微生物の毒素産生(会員ページ )

大阪府立大学農学部  小崎 俊司

食品照射は農産物や水産物等に対してガンマ線•X線•電子線を照射することにより野菜や果実等に発芽防止や熟度調整等の処理を施し貯蔵期間の延長を、また食品の健全性を保持するために害虫、寄生虫および病原微生物を除去することを目的としている。

すでに欧米ではサルモネラなどの病原細菌による感染防止のために家禽肉への照射が実用化されている。しかしサルモネラのように放射線抵抗性の低い菌は25kGy照射で完全殺菌が可能であるが、芽胞形成菌のような放射線抵抗性が高い菌では、この程度の線量では完全殺菌は不可能と考えられている。従って芽胞によって汚染された場合、照射後の残存芽胞が発芽、増殖し、中毒を起こす可能性は十分に考えられる。

食中毒起因菌でボツリヌス菌、ウェルシュ菌、セレウス菌が芽胞を形成する。このうちボツリヌス菌芽胞は照射抵抗性や生される毒素の中毒起因因子としての重要性から食品照射の指標菌として挙げられてきた。

ボツリヌス菌の芽胞は食品内で発芽、増殖し非常に毒性の高い神経毒素を産生する。本菌は産生する毒素の抗原性によって現在までA型からG型までの7型に分類されている。ヒトはA型、B型及びEM毒素によって中毒することが多く、動物はC型及びD型毒素によって中毒することが多い。芽胞は土壌に広く分布しており、我国では、北海道•東北地方の海岸•湖沼•河川にE型菌が広く分布し、これに一致してこれらの地方で魚貝類によるE型中毒が多数報告されている。

また最近では日本各地でブロイラ一のC型ボツリヌス症が発生している。私共は、我国で食中毒事例の最も多いE型菌と、鶏肉が汚染される危険性の最も高いC型菌を用いて照射前後の芽胞の発芽、増殖及び毒素産生について比較検討した。また鶏肉内での照射芽胞の毒素産生についても調べた。

108.放射線抵抗細菌の重イオンビームに対する抵抗機構(会員ページ )

PL女子短期大学植物研究所  原田 和樹

放射線高抵抗性細菌であるDeinococcus radiodurans (ダイノコッカス•ラディオデュランス)に初めて出会ったのは、大学院の修士課程の研究テーマとして選んだ時で、以来この細菌とは15年以上の付き合いになる。その当時は、放射線と温熱処理のDNA分子に及ぼす損傷の類似性に着目し、学位論文の内容はD.radioduransの熱によるDNAの損傷とその修復機構の研究であった。本シンポジウムでは、長年おこなって来た研究の中では比較的新しい、重イオンビームとD.radioduransの関係に関する知見を紹介する。

特別講演

109.環境と原子力技術(会員ページ )

原子力委員会委員  田畑 米穂

環境問題

人口の急激な揄チのもとで、経済成長の持続と生活水準の維持•向上をはかるには、エネルギーの消費の増大を避けることが出来ない。エネルギー消費の増大は貴重な限られた天然資源の消耗と温室効果や、酸性雨などによる地域および地球環境の悪化を招いている。産業括動の増大や、生活水準の向上に伴って関連廃棄物による幅広い環境汚染が進んでいる。

 

原子力技術

原子力技術は原子炉、放射性元素および加速器と広く、エネルギーと放射線の発生およびその利用を中心としている。原子力による発電、基礎応用分野にわたる広範な放射線利用は深く広く、人類の活動に浸透している。

 

環境と原子力技術

環境問題と原子力技術の関係は多岐にわたっている。原子力技術の環境保存で果たしている役割は多くの側面を有しており、(1)直接的か間接的か、(2)短期的か長期的か、(3)地域的か全世界的か、などの視点があろう。

環境保存対応では、原子力技術はプラスの面とマイナスの面を持ち合わせている。

本講演では、具体的なデータを中心に、環境保存に対する原子力技術の役割について述べる。

放射線殺虫・滅菌

110.電子線を用いた輸入切花の殺虫処理(会員ページ )

農林水産省 横浜植物防疫所  田辺 和夫

平成2年に海外から輸入された切花は草本類だけでも26千万本にのぼり、植物の種類も多様化している。これにともなって,輸入時に植物防疫所が行っている検査で発見される害虫の種類も増加していて、新種の害虫が日本に侵入する危険性も高い。

害虫が発見された場合は、くん蒸剤による消毒を行う。例えば,ハダニ類が発見された場合には、冬期であれば濃度4 8. 5g/m3の臭化メチルで2時間のくん蒸を行うことになる。近年急増している航空貨物での切花輪入の場合は、収穫直後に輪送して販売するので,切花の鮮度が特に重視されている。そのため鮮度や品質を低下させず,流通の阻害にならないような迅速で安全な消毒方法の開発が望まれている。

このようなことから、農林水産省では平成3年度から電子加速器を利用した切花の消毒技術開発を行ってきた。電子線を消毒に用いることのメリツ卜としては,

@消毒が短時間で終了すること,

A切花を段ボール箱などに捆包したままで消毒できること、

B消毒中の温度管理が不要であること,

C消毒施設の立地条件が海空港という観点から保安上の安全が確保できること、

D環境への影釋がほとんどないことが考えられる,

植物検疫においては、病害虫の侵入を水際で阻止することが重要な目的の1つなので、電子線照射を実用化するためには,その消毒効果が確実であることを実証しなければならない。

残念ながら、植物検疫上重要な害虫、例えばハダニ類、アザミウマ類、カイガラムシ類などについては、電子線照射に関する研究報告は少ない。これは切花への影響についても同様である。そのため、我々はy線との比較を含めて、電子線が害虫と切花に及ぼす影響について調査した。

11110MeV電子加速器を用いた手術用不織布の滅菌(会員ページ )

株式会社ホギメディカル  安藤 君寿

現在の診断技術や治療法の進歩には、目を見張るものがある,しかし、院内感染とその対策をめぐる諸問題は、医学の進歩とともに大きな課題となっている。

当社では、深刻な社会問題となっている”院内感染”にいち早く着目し、『ソンタラ医療製品(不培布製ガウン•ドレ一プ等)』の開発を推進してきた。不織布ソンタラ(スパンレ-ス製不織布:米国デュポン社の商品名)は、綿布や今までの不織布にない数々の特徴を持っている。

ランダムな方向に積層されたウッドパルプとポリエステルの無数の織維が複雑に強く絡み合っており少しの貫通孔も存在せず、そのうえ用途に応じて独自の撥水加工•ラミ加工を施しているため病原微生物だけでなく手術中に飛散する血液や体液、生理食塩水等に対してもバリヤー材となり、さらに柔軟性をはじめ通気性でも綿布を上回る性能があるため、手術用ガウン・ドレープ等に使用されている。

これ等ソンタラ製品は、清潔度が重視される手術室で使用されるため、必ず滅菌処理を行って出荷される。

電子線加速器導入以前はこの滅菌処理をエチレンオキサイドガス(EOG)を利用して行なっていた。

E0G滅菌は、エアレ一ション工程も含め812時間余りかかる。処理温度が5060℃と低いためディスポ一ザブル製品で主に使われている塩化ビニル・ボリエチレン等のプラスチック製品にも利用できる反面、製品へのE0G残留性や排ガス処理あるいは滅菌施設における作業者に対する吸入毒性の問題も指摘され、作業環境の濃度規制が厳しくなってきており、とりまく環境には厳しいものがあった。

112.電子線加速器を用いた実験動物用飼料の滅菌(会員ページ )

オリエンタル酵母工業株式会社  諏訪 富雄

実験動物は、マウス、ラットを中心に微生物的に管理されたクリーンな動物の使用数が揩ヲており、飼料は大部分何等かの滅菌処理をして使われている。滅菌法として、近年では60-C oによるガンマ線照射滅菌が、オートクレープ滅菌に比べて、飼料の外観や硬さはほとんど変わらず、ビタミン類の減少も少なく、優れた滅菌法であることが認識されている。このためガンマ線滅菌飼料の需要は年々増加傾向にあるが、実験動物用飼料の総量に占める割合はまだまだわずかなものである。

ガンマ線滅菌飼料の需要が伸びない原因として、照射施設が限られていることもあって、滅菌処理に時曰を要することと、主として照射料金が高いことが影響して飼料価格が通常飼料の23倍と高いことである。

近年医療用具類の滅菌法として注目されている電子線滅菌法は、ガンマ線に比べて出力が大きく、滅菌処理時間が短くて済むこと、そのため単純な計算ではガンマ線滅菌に比べて照射コス卜が安くなり、ひいては滅菌飼料の価格を低減させることが期待される。

実用電子線の最大エネルギーは、国際的な取り決めで最大1OMeVとされている。10Me V電子線を密度=1の物質に照射した場合の透過力は約5Ommである。しかし、実験動物用飼料の場合、その嵩密度は0.60.7であることから、ガンマ線で通常行われているように、両面照射することにより、かなり厚みのある飼料を滅菌することが期待できる。

以上のことから、われわれは1OMeV電子線を中心にして、電子加速器による実験動物

用飼料滅菌の研究を行った。

113.放射線インジケータ・インキ(会員ページ )

大阪府立大学附属研究所  山上 允之

著者らは最近、医療用具のγ線滅菌および一般の物理的、化学的放射線利用に対し照射時の吸取線量が、簡単に評価できるラベル状のカラ一インジケ一夕を開発した。

医療用具の需給は年々増加傾向にあり、滅菌処理工程においても一層の効率化が求められている。こうした要望に応じて、我々は、ラペルインジケータの貼り付け作業を省くために医療用具の包装紙、または製品説明ラベルに直接印刷可能なグラビア印刷用のインジケ一夕•インキを開発した。本報では、前報に引き続きスクリーン印刷用インジケ一夕•インキの製造方法とその使用性能について報告する。さらに、これらのラペルインジケ一夕とインジケ一夕•インキとの3者について、製造における菜剤の処方を明らかにする。

114.微生物に対するγ線と電子線の影響の比較(会員ページ )

農林水産省 食品総合研究所  林   徹

従来、食品照射や放射線殺菌はコバルト60のガンマ線を用いて行われていたが、近年電子線が利用されるようになってきている。多くの食品照射や放射線殺菌に関するデ一夕はガンマ線を用いて得られたものであり、電子線照射に関するデ一夕は少ないので、電子線の効果、電子線の照射条件などはガンマ線照射により得られたデ一夕に基づいて定めなければならないことも多い。したがって、ガンマ線と電子線の効果について正確に比較しておくことが重要である。

しかし、ガンマ線と電子線の殺菌効果が同じか否かということに関してはいまだに定説がない。一方、わが国で実施された研究においては、RCFを用いた研究では電子線の方がガンマ線よりも殺菌効果が大もい、、CTAを用いた研究ではガンマ線の方が電子線よりも殺菌効果が大きいことが報告されている。これらのことは、ガンマ線と電子線の殺菌効果の比較検討において、線量測定法も重要な役割を果たしている可能性のあることを示唆するものである。

そこで、ガンマ線と電子線が各種フィルム線量計およびB.purai1us胞子に及ぼす影響について比較検討した。

CTA(FTR-125)RCF(FWT-60-00)GAF(GAF CHROMIC): 電子線殺菌の線量測定に使用されるフィルム線量計

115.放射線滅菌の国際規格(ISO)の進展(会員ページ )

ラジエ工業株式会社  武久 正昭

1992年末の予定より遅れているが欧州統合市場の実現を時間的目標に医療用具滅菌の欧州規格(EN)の策定作業がCENで進められてきた。現在はPrENに進んでいる(ヨ一ロッバ議会の域内市場大臣の承認をえてENになる、ISOではDISに相当と考えてよい)。放射線滅菌に関しては,E0,水蒸気等放射線以外の滅菌分野と異なりれ歴史的に米国とヨーロッパの考えが対立していた。

欧州規格が成立すると米国の放射線滅菌した医療用真の貿易に大きな影響が予想され、米国の戦略として欧州規格よりも広範囲に適用する国際規格(ISO)を早急に策定する必要があった,1980年代の終わりの頃である。

問題は25kGy原則、バイオバーデンと分雜菌のD値から対数式で滅菌線量を設定する欧州とナチュラルバイオパ一デンの抵抗性を無菌試験で決定する米国(ANSIAAMI),並びに滅菌と言えばSAL10-6しか認めない欧州と使用目的により10-3も認める米国の考え方の対立である。筆者はSAL 10-3の可否より,このようなSALでは滅菌(sterile)との表現を欧州は認めないと理解している。

TC198の事務局は本規格の提案国である,米国ANSI(AAMIに委託)が努める。事務局を引き受けるのは人的、経済的に大変であるが自国の意志を貫くには座長を取るのと並んで重要である。

イオンビーム利用技術

116.イオンビームによる機能性多孔膜の作成(会員ページ )

日本原子力研究所高崎研究所  大道 英樹

イオンビームは、イオン化した高エネルギーの元素の流れである。したがって、イオンビームを材料に照射すると、イオンに比べて質量、大きさとも4桁程度小さい電子のビ一ムや電磁波である7線を照射した場合とは異なった効果が期待される。例えば、イオンビームの照射により、放射線化学的諸反応をイオンビームの飛跡に沿って、より高密度に引き起こすことができる。また、イオンビームのエネルギ一及び核種に応じて、電子的なエネルギ一移動の他に、飛程の近傍では核的なエネルギー移動を生じる。さらに、イオンが材料中で中和されることにより、材料とは異なる物質を非平衡的に注入することが可能になる。

このようなイオンビームの特徵を生かして、既存の材料の改質、新規材料の創製に関する研究が盛んに行われている。ここでは、有機材料にイオンビームを照射して多孔膜を作製し、それをさらに機能化する試みについて紹介する

117.イオンビーム応用による材料開発について(会員ページ )

住友電気工業株式会社  松本 安世

イオンビームによる半導体、金属、セラミクスの改質に関する研究は数多くなされており、一部実用化されている。高分子の改質に関する研究は比較的少なく、また殆ど実用化されるに至っていない。これはイオンビーム照射による高分子の損傷が大きく、半導体、金属のように熱処理による回復が困難なことも一因と言える。

イオンビーム照射による高分子の損傷に注目し、高分子の中でも耐熱性、耐放射線性等に優れた芳香族高分子についてイオンビ一ム照射による炭化、架橋、及び高分子の金属異種接合について検討した。

118.イオンビームを用いた材料の改質と構造解析(会員ページ )

日本原子力研究所高崎研究所  楢本 

各種の放射線のうちでも、加速器から得られる高エネルギーのイオンビームは、材料そのものの物性を改質したりあるいは固体材料の構造-状態の評価の手段として重要な役割を担いつつある。

これは加速器工学等の発展により、ビームオアティクス、加速エネルギー、加速イオン種等が厳密に制御可能になったためである。

イオンビームは固体物質に入射すると、固体内の原子と相互作用してイオンの散乱や粒子及びフオトンの放出をもたらす。一方入射イオンのエネルギーは、標的物質を構成する原子の結合エネルギーをはるかに越えている場合が多く、格子欠陥を誘起するとともにそれとの複合体を形成して、準安定な物質状態を創製する。この様な準安定物質は、通常の熱的な手段では得られないため、新規な物性を示す可能性がある。また、イオンビ一ムの指向性、制御性等は、半導体物質のみでなく材料の微小化に基づく機能の高度化/複合化をもたらす。これらの機能材料の創製に関する研究では、上述の相互作用過程に起因する2次的放出物を検出することによりその構造に相応しい解析手法の開発が必要になる。

この様な観点から、広範囲なエネルギーを持ったイオンビームは、物質の改質//創製と構造評価の両方の目的に合致した有効な手段として益々っその重要性をましつつある。本講演では、対象物質としてアルミナ等の結晶性耐熱材料を中心に取り上げ、イオンビームによる表面改質と構造評価の研究を概観しつつ最新の成果を紹介する。更に、当該研究の今後の展望と高崎研究所のTIARAを用いた研究の計画にも言及する。

119.イオン注入による生体活性セラミックスの表面改質(会員ページ )

京都大学イオン工学実験施設  高岡 義寛

人工骨用材料としての生体活性セラミックスは、実用化のためには生体中で十分な機械的強度を持つ必要がある。ガラス中に正方晶形のジルコニア(t-ZrO2を析出させた結晶化ガラスは、応力を受けると単斜晶形(m-Zr O2)に転移して破壊エネルギーを吸収するため、高い破壊靱性を示す人工骨用材料として注目されている。

一方、機械的強度の改善には破壊が起こる表面での微小クラックの発生を抑制することが重要であリ、材料の表面改質は大きな効果が期待できる。しかし、従来の溶融法では、最大1315wt%程度までしかZrを導入できなかった。我々は、これまでにイオン注入法を用いることによって約30%の高濃度注入ができることを明らかにした。本報告では、生体活性セラミックスの機械的強度の改善のためにZrイオン注入を行ない、生体活性セラミックスの表面組成、機械的強度および生体活性について調べたので報告する。

120.多段エネルギーイオン注入による金属の表面改質(会員ページ )

株式会社イオン工学センター  大谷 三郎

イオン注入は、希望とする原子をイオン化した後、電界の中で加速して、材料表面に強制的に注入添加する方法である。低温度で必要とする量を制御性よく添加できることから、半導体の不純物添加方法として現在、必須の技術となっている。

又、任意の元素を材料の溶解度を超えて添加できるため、これまでにない物質、結晶状態のものを合成することも可能である。又、改質層は基材と連続していて蒸着膜のような明確な界面を持たないため、剥の危険性が小さいという特徴を有し、金属の表面改質としても興味ある手法と考えられる。

こうしたことからイオン注入による金属の表面改質に関して、これまでも多くの研究開発が行われてきており、表面の機械的性質や化学的性質を向上しうることが報告されている。

一方、表面改質のためには多量の原子が必要で処理に長時間を要するうえ、注入された原子は、表面の極く薄い領域に不均一に分布するため、改質効果が安定しないという問題を有している。このためイオン注入による表面改質法は一部に実用化がなされているもののまだ研究段階に留まっているのが現状である。

ここでは後者の問題の改善を狙った多重エネルギーイオン注入法について述べる。

都市ゴミ焼却による環境影響と対策技術への応用

201.都市ゴミ焼却の都市環境の大気への影響(会員ページ ) -放射化分析の応用

大阪府立大学附属研究所  溝畑  朗

わが国のゴミ排出量は11日当りl.llkgに達していて、これらは焼却(73.9%)、埋立て(21.6%)、堆肥化•飼料•その他(4.4%)によって中間処理されている。大阪府においては、市町村等によって行われる計画収集量は毎年増加していて平成2年度には444tに達し、その88.4%が焼却、10.4%が埋立て処分されている。大阪府の場合、立地難のためからか埋立て処分率が全国平均の1/2程度と低くなっていて、他方焼却処分率が全国平均に比べて10%以上高い。

都市域の環境大気では窒素酸化物濃度や浮遊粒子状物質(粒径10μm以下の浮遊粒子)濃度の環境基準が長期間未達成のままであり、これらの汚染発生源対策の実施が極めて重要な課題となっている。汚染源としては増加の著しい自動車が最も注目されるが、これ以外にもゴミの焼却処分による環境大気への影響も懸念される。都市ゴミ焼却炉から放出される燃焼排気には、ガス状汚染物質であるNOxSOxHClなどとともにばい塵が含まれ、これらが都市域での環境大気に影響を及ぼす。特にばい塵は多くの重金属類を高濃度に含むとともにダイオキシンのような有害化学物質も含むため、人間の健康への影響も懸念される。このような状況から、都市ゴミ焼却の環境大気への影響を把握することは極めて重要となる。

都市大気中の浮遊粒子状物質濃度は高々100μgm3程度であるが、発生の由来を反映する成分を含んでいる。分析によって発生源に特徴的な成分殺度を明らかにし、得られたデ-夕を解析することによって、粒子の由来やその寄与を知ることができる。浮遊粒子の分折に中性子放射化分析法を応用すると、数mg程度の試料から40種程度の元素の定量が非破壊的に行える。講演では毎日連続して採取した浮遊粒子の化学成分凝度から発生源の寄与を同定し、特に都市ゴミ等の廃棄物焼却に伴って放出される汚染物質による浮遊粒子への影響の現況を明らかにした。

202PIXE法による清掃工場排出粒子の元素分析(会員ページ )

京都大学原子エネルギー研究所  笠原三紀夫

大気中の粒子状物質の挙動や現象を解明するためには,粒子の化学的性状や粒径,濃度に関する時間分解能の高いデータが不可欠となる。ここでは,最も感度の高い分析法の一つである荷粒子励起X線放射(Particle Induced X-ray Emission, PIXE)法及びSEM-EDX法を利用し,清埽工場排出粒子の元素組成とその変動特性を調べた

203.電子ビームによる都市ゴミ焼却排煙処理(会員ページ )

松戸市クリーンセンター  馬場 重和

松戸市では、日本原子力研究所、NKKと共同で、都市ごみ焼却炉から排出される排煙中に含まれている窒素酸化物(NOX)、硫黄酸化物(SO2)、塩化水素(HCl)を同時除去するための、電子ビーム法による排煙処理のパイロット試験を平成46月末から平成63月までの予定で実施している。以下にその概要を報告する。

レーザー・放射光

204.ポリマーフィルムのレーザー誘起膨張・収縮ダイナミックス(会員ページ )

大阪大学工学部  増原  宏

固体表面にエキシマレーザ一のような短パルス、高強度の紫外レ一ザ一を照射すると、発光および衝撃音を伴って瞬間的に物質が分解、飛散し穴があく。このような現象はレ—ザ一爆蝕(アブレ一シヨン)と呼ばれ、光加工、薄膜形成、新有機金属合成等に利用されている。この現象は励起光がある強度(しきい値)を越えたときのみにみられる非線形的な光化学過程であり、分子論的、電子論的にも大変興味深い。

我々の研究室ではこれまで光吸収分子をポリマ一に分散した系のレ一ザ一爆独を対象にして、メカニズム解明のために様々な角度から研究を行ってきた。例えば光物理学的な立場からのアプローチとして時間分解吸収スペクトル測定、時間分解発光測定がある。また、ポリマ一の分解、形態変化を明らかにするために飛行時間型質量分析、時間分解写真観察、時間分解干渉画像計測等を行ってきた。

これまでの結果から、励起光の多光子吸収のメカニズムが徘常に重要であること、また吸収された多数の光子が無輻射過程によって熱に変換されポリマ一が非常に高温になっていること、ポリマ一フィルムの形態変化は励起レーザ一パルス内から始まっていることが判った。さらに爆触しきい値以下でも一時的なポリマ一フィルムの膨張、ド一プ分子の飛び出し等の興味深い、様々な現象が起こっていることも明かとなった。

本講演では主に我々の開発したナノ秒干渉画像計測によるレ一ザ一爆蝕時の高分子フィルムの形態変化ダイナミクス、特に爆触しきい値以下の挙動ついて述べる。

205.エキシマレーザーによるフッ素樹脂の接着性改善(会員ページ )

倉敷紡績株式会社 遠藤 正雄

フッ素樹脂はF原子がC原子を被覆している分子構造から、化学的な攻を受け難く、水や油類に汚れ難く、摩擦抵抗が小さく滑り易い。また電気的には誘電率が小さいなどの特徴をもっている。こうした特性をいかして、多分野で、いろいろな形態で用いられるときに機械物性が不十分であるので他の材料と複合化されることも多い。

膜天井•電気炊飯器の内面など加熱溶融で複合される以外に、接着剤/未硬化ゴムなどで接着するときには、表面エネルギーが非常に低いフッ素樹脂を十分に接着させることは困難であり樹脂表面の改質が必要である。

大気中で処理できる励起プロセスとして、高工ネルギ一紫外媒であるエキシマレ一ザ光に注目して、日本原子力研究所大阪支所放射光グループの指導を受けて協同研究を続けてきて、実証化試験に取り組んでいる。

206.放射光による半導体プロセスと表面反応過程(会員ページ )

岡崎国立研究機構分子科学研究所  宇理須恒雄

放射光励起半導体プロセスの研究がスタートして約8年になり、エッチング、CVD、など初期に確認された反応以外に、エピタキシャル成長、固相エピ、表面清浄化などの多様な反応が原理確認の段階ではあるが、試みられている。

これらは、低温プロセス、3次元微細加工などの応用を示唆する面白さ以外に、表面の化学反応としても特異な現象を呈することが多く、学術的にも面白い系といえる。今後さらに、現実的な応用をめざした研究が活発に進められるであろうが、この分野のより効果的な発展のうえでは、反応機構や表面のキャラク夕リゼーションなど、基礎的な問題をあきらかにする研究に力を注ぐことも大切であろう。

我々は、反応のその場観察の目的で、反射赤外吸収スペクトルの測定を始めたので、最近の結果を簡単に紹介する。

207.放射光のマイクロマシンへの応用(会員ページ )

住友電気工業株式会社  高田 博史

マイクロマシンの研究という機械工学の新しい流れの引き金になったのは、電気工学分野でのシリコンの機械的な加工技術である。シリコンが良く研究され微細加工で広く用いられているが、表面的な加工しかできない原理的な制約を有する。

システムを作る立場から考えると、多数の要素を最適に組み合わせて最適な性能を引きだすのが最終的な機械システムの目標であるとすれば、加工技術の多様性が必然的に要求される。したがって、シリコン以外の素材の微細かつ深さのある加工を可能にする新手法であるLIGAプロセスが注目される。

LIGAプロセスとは、シンクロトロン放射光(SR光)から得られるX線を光源とするリソグラフイ一により深いレジス卜材を加工し、金型を製作(電気メッキ)し、モールドによって各種材料の微細部品/機器を加工するものである。

ここでは、SR光を用いるLIGA用リソグラフイー技術の開発課題に対する検討結果を中心に述べる。

特別講演

208.核医学領域における最近の進歩 - PETの臨床応用-(会員ページ )

京都大学医学部 小西 淳二

近年、サイクロトロンで産生される短寿命の陽電子(ポジトロン)放出核種を臨床医学、特に病気の診断に利用することが現実のものとなってきた。ボジトロン放出核棟の特性を生かして、その体内での分布を断層撮影する装置をpositron emission tomography(PET)と呼んでいるが、過去10年以上にわたる臨床研究を経てPETはいよいよ本年より高度先進医療の1つとして活用されるに至った。

普通のγ線放出核種を用いて、その局在を断層撮影するこれまでのsinglephoton emission CT(SPECT)と比べPETには多くの利点がある。しかしながら、ポジトロン放出各種が何れも短寿命であるため、検査施設内に超小型サイクロトロンを設置する必要があることがPETの普及の上でネックとなっている。これを解決するために、ポジトロン放出核種のジェネレ一タの開発も進められている。ここではP ETによる診断法の原理とその臨床応用の現況について述べる。

線量測定・線源

209.線量測定のトレーサビリティに関する欧州調査団報告(会員ページ )

岐阜医療短大学  森内 和之

医療用品の殺菌、工業材料の重合その他、近年各国で発展しつつある所謂「放射線加工」に必須な「照射投与する線量の制御•評価•予測に用いる“大”線量測定」の実態と、使用する実用測定器の精度の確認•維持の手法に関し、各国内の各機関•各現場での線量測定値の横断的な両立一貫性••••コンパテイピリテイ 一(Compatibility)と、国家標準との直接間接の相互比較を前提として、それとの間の誤差の遡及可能性•••卜レーサピリテイー(Traceability)とを確保するシステムの現況と問題点について、英仏を主とする海外調査を最近行なったので、その主要結果を概略的に報告する。

210.低エネルギー電子線の有機薄膜における吸収線量分布(会員ページ )

大阪工業大学 来島 利幸

電子線照射の工業利用においては,製品に対する照射計画や品質管理の観点から被照射体の線量分布を知ることが重要である.中でも,低エネルギー電子線による塗装では、平板の上に塗られた有機薄膜の硬化を目的とするため,その線量分布の評価は薄膜層中でのエネルギー吸収および基板からの後方散乱等を考慮する必要があり,薄いフィルム線量計で線量分布評価を行う。

また、線量評価のために簡便に使用できる計算コードとしては,多幡らによって開発された多層媒質中での深度線量分布を求めるEDMULTコードがある。しかし,線量分布に影響する因子を検討する場合には、これらの方法では困難である。一方,モンテカルロ法による計算は,単純な多層形状であれば吸収線量分布の実測結果と良く一致し、電子のエネルギー分布,角度分布,透過と散乱の程度等を検討する有効な手段となっている.従って、ここでは単一散乱モデルに基づいた電子軌道追跡によるモンテカルロ計算を行い線量分布に影響する因子を検討した。

 また、動的照射における表面層吸収線量分布の計算値と実験値のずれについても検討した。

211.ガラス固化体の線源利用(会員ページ )

日本原子力研究所高崎研究所  幕内 恵三

ガラス固化体は、使用済核燃料の再処理時に発生する高レベル放射性廃棄物をガラス構造の中に閉じ込めたものであり、3050年間程度冷却のために貯蔵された後深い地層中に処分される計画となっている。原子力発電百万kWあたり約30/年のガラス固化体が発生するといわれており、放射線照射加工用線源として興味深い。

ガラス固化体は直径が43cm、高さが104cmの円筒形ステンレス容器に密封されて保管される。固化ガラスの容積は約100及(300kg)、全重量は約380kgである。ガラス固化体中の含有核種の濃度は、燃焼度や冷却期間等によって変動するが、γ線源として主要な核種はCs-137であり、1本のガラス固化体は、10OkCi程度のCs-137を含有する。ガラス固化体の自己吸収による減衰があり、照射に利用できるγ線エネルギーは3%程度と見積もられる。

線源としてのガラス固化体は、Cs-137の半減期が30年と長いことに特徴があるが、γ線エネルギーが0.66MeVと低く、線量率も低いため、全ての放射線加工に利用できるわけではない。ガラス固化体を照射線源とするブロセスの条件は、以下のようにまとめられる。

@前照射•後加工の原料照射プロセスであること

A照射と加工の間の時間と距離が離れていること

B低線量率•低速照射プロセスであること

原研は、動力炉‘核燃料開発事業団の協力を得てガラス固化体による天然ゴムラテックスの放射線加硫について検討してきた。ここでは、ガラス固化体を線源とした場合の天然ゴムラテックスの放射化の程度(安全性評価)、ガラス固化体を線源とするラテックス照射施設の概念設計、経済性評価及び小規模ガラス固化体による天然ゴムラテックスの照射実験結果等について報告する。

キュアリング

212.電子線キュアリングプロセスの動向(会員ページ )

日本原子力研究所高崎研究所 佐々木 隆

3回の本シンポジウムで同様の題名で講演した。当時は好景気の時期にあったが,現 在は深刻な不況の時代に遭遇している。表面加工の分野で革新的な技術と見なされている 電子線(EB)キュアリング(硬化)プロセスについても,当然その影響を受ける。一方 で,環境保全の重要性が問われている。

EB硬化プロセスの利点として,高生産性,常温硬化、無溶剤(無公害)、省エネルギ "•的であり,また,装置は起動停止が容易で、安定性に優れ、省スベ一ス的であること が挙げられる。ここ数年来,特にわが国の実用化例では,E B硬化プロセス採用の理由と して,ユニークな製品,高性能の製品が調われていた。しかし、今後,無溶剤プロセスと しての評価が高まるであろう。このような情勢を踏まえて,E B硬化プロセスの動向をまとめてみたい。

213.電子線照射における照射雰囲気の影響(会員ページ )

日新ハイボルテージ株式会社 中井 康二

電子線硬化樹脂の硬化反応は、照射条件により異なることが知られている。照射条件には、E B装置条件と環境条件に大別でき、EB装置条件には、線量率、加速電圧、後方散乱等が、環境条件には、温度、湿度、ガス雰囲気等が考えられる。また、樹脂の配合条件によっても硬化反応への影響が考えられる。

今回我々は、電子線硬化樹脂として、数種のアクリル系ハ一ドコート剤を用いて、温度、ガス雰囲気、線量率、残留溶剤の影響について、工業利用への一助を目的として検討を行った。また、ハードコート性能に他の機能を付与した応用製品への適用の可能性についても検討を行った。講演でこれらの詳細について述べる。

214.EB装置からのオゾン発生について(会員ページ )

岩崎電気株式会社  木下  忍

電子線加速装置を利用した産業技術は広く知られ実用化されている例も多くなってきている。しかし、電子線利用技術に於いてはラジカル反応を利用したものが多く、照射雰囲気の酸素により反応阻害を受けるため、蜜素ガスを流して酸素濃度をさげることが行なわれている。ところが、この窒素ガスのランニングコストが高くなるため、それの対策として純度の悪い窒素(安価)を一部用いて使用すること(ハイブリッドイナ一テイング)1)やリサイクルして使用する等が考えられている。

近年、酸素の阻害を受けない力チオン重合を利用する研究発表も多く見られるようになっている。しかし、窒素ガスを流さないことでランニングコストは低減できるようになるが、逆にオゾンが発生する問題が新しく発生する。このオゾンは酸化力が強く人体に対して有害であり、作業環境の許容浪度は0.1ppmとされていることから、オゾン対策が重要な課題になってくることが考えられる。

そこで、電子線加速装置からのオゾン発生について明確にする必要があるが、低電圧タイプの装置に対してその報告は見られなく、今回演者等はエナジーサイエンス社製の3タイプの低電圧電子線加速装置でオゾン発生量を測定し、若干の知見をえたので報告する。

215.エポキシオリゴマーの放射線薄膜キュアリング(会員ページ )

日本原子力研究所大阪支所  中瀬 吉昭

エポキシオリゴマ一は、キュアリング(硬化)の際の体積収縮が少なく、硬化生成物は化学的に安定であるため各種の注型絶縁材、エレクトロニクス用封止材等に利用されている。

エポキシオリゴマ一のオニウム塩類を開始剤とした紫外線硬化については良く知られているが、電子線硬化については、1mm厚さのキャスト膜の硬化及び110μm厚さのスピンコ一ト膜の硬化の研があるのみである。本研究では、スピンコート法で得られたサブミクロンオーダ薄膜の放射線(電子線•紫外線)硬化の特色を明らかにすることを目的とした。365nm紫外線照射を行った理由は、その吸光度が254nmの吸光度に比べて著しく小さいため、厚さ方向における均一なエネルギー吸収が期待できることによる。

216.リリースコーティング用シリコーンアクリレートの電子線硬化性(会員ページ )

信越化学工業株式会社 入船 真治

シリコーンはケイ素原子と酸素原子が交互に結合したシロキサン結合を骨格としケイ素原子にメチル基,フェニル基などの有機基を持つボリマ一であり,耐熱性,気絶縁性,離型性,撥水性に優れるため種々のコーティング材料として用いられている.

その硬化は一般に加熱することにより行われているが,低温かつ高速硬化を目的に放射線照射による硬化が注目されており,特に近年,低エネルギー加速器により電子線照射システムの普及に伴い,低線量の電子線照射で硬化可能なシリコーンが求められている。

本報ではシリコ一ン化合物中電子線硬化性に優れるアクリル基含有のシリコーン(シリコ—ンアクリレ一卜)の硬化性について報告する。

217.ニューEBアートタイルの開発(会員ページ )

関西ペイント株式会社  丸山  孜

最近カラーコピー機の出現とカラ一の色の再現技術が飛躍的に向上し、原版を忠、実にカラーコピーすることが可能となり、また、拡大も自由に出来る。従来は、スレート、石膏ボード、タイル、アルミ複合材などの建材やブラスチックのフィルムに絵柄をスクリ-ン印刷や手描きにより施してきた。しかし、印刷による方法は、版の起こしを行うのが煩雑であり、また、手描きは、一品一品作成するので時間と費用がかかる。

我々はカラ一コピー機を利用して新しい夕イプ絵柄タイルを製造する方法を開発した。カラ一コピーによりコピーしたものを基材に転写し、その上に電子線硬化塗料を塗布して新しいタイル(ニュ一EBタイル)を製造する方法である。非常に再現性のよい絵柄かでき、また高品質のタイルライクの塗膜が得られる。この方法について報告する。

218.EB硬化プロセスを利用した高品質感熱記録媒体(会員ページ )

王子製紙株式会社  珠久 茂和

最近、階調記録を必要とする医療診断装置等のCRT画像のプリン卜手段として、感熱記録方式が注目を浴びている。

従来これらの記録手段としてインスタント写真などの銀塩写真で撮影する方法が一般的であったが、さらに手軽に安価にまたより迅速にハ一ドコピーを得ることに対する要求が高まり、感熱記録方式によるビデオプリンタ一が開発されてきた。

この記録媒体として使用される感熱記録紙はビデオプリン夕一からの記録信号を忠実に再現するような高品質なものが要求される。我々は市場ニーズをほぼ満足させるものを得ているが、ここでは、高画質化方法及び高濃度化方法を中心に述べる。

 

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第2回放射線利用総合シンポジウム

平成5年1月2021日 於 なにわ会館

1.   特別講演

「低線量放射線影響の考え方 ─パラダイム・シフトは起こるか─(会員ページ )

京都大学名誉教授  菅原  努

低線量放射線の人体に対する影響については、現在国際放射線防護委員会(ICRP)の取っている考え方、すなわち、”閾値なしの直線性”にもとづくというのが一般に採用されている。しかし、私はかねてから生物学的に発癌過程をイニシエ一ションとプロ一モ一ションの2段階に分け、放射線をイニシエ一タとした実験でプロモーターが十分になければ直線にならずに曲線になるという実験デ一タからこのことに疑問を提出してきた。

しかしながら、ヒトでは自然のプロモータ一がいっぱいあるのだということで何時も私の主張は通らなかった。さ らに昨年「分かり易い放射線リスク論」というテ一マで我々放射線の仲間に、新聞記者を混じえた座談会を主催したが、その時にこの問題すなわち”放射線はどん な微量でも危険だ”といいながら何故それを容認するのかという問題が一般の人々にどんなに理解しにくいのかを痛感した。

このような背景のもとに、大きな期待をだいて19927月京都に於いて開催した「低線量放射線被曝と生体防御機構」に臨んだ。

2.イオン工学による新材料創製(会員ページ )

京都大学工学部  山田 

イオンビームを固体に照射した時、イオンが固体中に侵入するイオン注入や、結晶 表面を削り取るスパッ夕一作用などはよく知られている。今までは、イオンビームは 結晶を壊したり、削ったりする道具と思われていた。しかし、イオンビームを用いて 結晶を成長させたり結晶性を改善したり、熱平衡ではできない新材料を作ろうなどと は夢にも思われていなかった。

イオンを用いて新材料を開発したり加工する技術をイオン工学技術と呼ぶが、この 技術は、真空中や低ガスK領域で原子伏、分子状、クラスター状のイオンビームを加速して基板に照射し、基板上の原子や分子、その集団などを思いのままに列させ、よりよい材料や自然界にない人工物質を作ったり、原子サイズの精度で加工しようと する分野を取扱う。

従って従来の熱平衡プロセスでは困難で実現出来ない様な材料の 開発、今まで想像もできなかったような材料の開発が期待できる。利用するイオンピ —ムのエネルギーは、数eVからMeVにも及び、エネルギーをかえて照射すると、 イオンビームの様々な特長ある作用が期待出来る。これによって、イオン工学は、電 気、電子、磁気、光学などのデバイスの製作、金属、機械、化学、医学の分野に有用 な素材や素子の開発に貢献できる。イオンビームの応用範囲は広く、技術の新分野に 位置づけられるので、従来の概念や知識では予想もつかないような新しい結果が得られつつある。

最近SORから得られるX線や宇宙から来るX線を反射したり集光するX線反射ミ ラ一が重要になっている。この場合、X線の波長が数オングストロームなので、それ 以上の平坦度で結晶性の良い表面をつくらなければならない。数オングストロームは、原子のサイズで言えば、2-3原子層に相当する。これをICBで作ってみると平坦 度の非常に良い薄膜ができるが、それだけでは説明できないほどX線の反射率は高い。これは従来の理論値をはるかに上回る結果で、もはや理論では説明ができない。この値はNASAが熱平衡プロセスで、大変な工程をつかって作った物をはるかにこえている。X線の専門家達は理論に合わせようといろいろパラメータを探ったり、測 定値が正しいかなどと一生懸命である。この他イオンビームを用いて種々の金属、半 導体、絶縁体、有機物を形成したが、形成した膜は、従来法で形成した場合に比べて 物理的、化学的に際だった特長をもっている。

3.放射線による食品保存の特徴(会員ページ )

京都大学食品科学研究所  安本 教傳

霊長類のなかで人類だけが、食糧を貯え、料理し、分かち合って食べている。人類は食糧獲得•生産技術を発達させ、経済活動を発達させてきたが、それにつれて食糧分配の範 囲が家族から外の世界にまで広がった。今日の高度産業化社会は、食糧加工•保存技術の 進歩なしには成立できなかったといえる。

食糧の生産と消費の場が分離、つまり農村から離れたところで大都会が成長している高度産業化社会にとって、食糧の安定供給は不可欠な条件である(安全性•品質の保証、適切な店頭寿命、パラエティ、利便性、経済性などを確保することとともに)。

ところが、 食糧供給は季節や年によって変動し、地理的•気候的影響をうけて安定しない。今日の食 糧加工•保存技術は、食糧の大量保存と大量輸送を可能にし、食糧流通の範囲を地球規模 にまで広げて、このような食糧生産と消費の間のギャップを埋めているのである。食糧の安定供給に役立つことによって今日の食品保存技術は、歴史に残る他のどのような革新的 な技術よりも社会の発展に寄与してきたし、これからもそうであろうといえる。食品照射法もこのような役割をはたす新しい技術の一つと目されているものである。

4.放射性医薬品の製造と利用(会員ページ )

日本メジフィジックス  田中 芳正

放射能とか放射線の医学への利用と聞けば、まずレントゲン写真を考える人がほとんどだと思われる。しかし、放射性物質そのものが、病気の診断とか治療に 使われているという事実は案外知られていない。

こうした目的に使われる医薬品は放射性医薬品と呼ばれ、又、放射能,放射線を利用する医学分野は核医学と呼ばれる。放射性物質は放射化分析等で知られる様に、極微小の量でも感度よく検出できる。これと同じ理由で核医学、及び放射性医薬品は他の方法では得られない様な特徴的な高感度の手法であり、医学の分野で大きく貢献している。今面はこうした放射性医薬品の製造方法と利用について報告したい。

5.輸血用血液への放射線照射(会員ページ )

シーアイエスダイアグノスティック  風早 康弘

最近の日本赤十字社の調査によると、輪血の副作用の一つで、発症すれば95%以上の死亡率といわれる輸血後移植片対宿主病(post-transfusion graft v.s.host disease:PT-GVHD) が、年間100例近く発症していることがわかってきた。従来心臓外科に多いとされていた が、他の手術での発症例も確認されている。

この予防対策として、血する血液製剤に対する放射線照射の重要性が注目されており、ここではその目的、有効性、安全性、適応の範囲、照射装置などについて紹介する。

6.医用画像工学の最先端

  (1)コンピュータ画像診断支援」(会員ページ )

大阪大学医学部  田村 進一

コンピュー夕による画像診断支援システムをつくるとすれば、人間のような賢いシステムをつくることが一つの目標となろう。しかしながら、現在の技術では人に完全に置き替わるシステムを工学的に実現することは不可能である。そこで,放射線科医に完全に置き替わるのではなく,その診断を助ける診断支援(CA.D Computer Aided Diagnosis)システムを作ることが現実的なアプロ一チとなる。その際には、ヒトの目はどのようにモノを見ているか,あるいは診断プロセスはどのようになっているかなどを知ることが有益な示唆を与えてくれるであろう。本稿では,まずヒトや哺乳類の生体の視覚機能について述べ,つぎに生体の 視覚機能に倣った診断支援システムについて述べる。

  (2)「核医学画像処理の現状と将来」(会員ページ )

鞄津製作所  松山 恒和

核医学とは、放射性同位元素(RI Radioisotope)で標識された薬剤を用いて診断あるいは治療を行う医学分野である。核医学でおこなう検査法としては、患者より採取した血 液等にR Iを加えて計測するインピト(□検査と、患者にR Iで標識された薬剤を投与し、 体内でのR I分布を体外から計測するインビボ検査の2つに大別することができる。

一般 にインピボ検査における体内でのR I分布像を測定し、二次元的にまたは三次元的に描写 する機能をもつ装置を核医学画像機器、またそれによって得られた画像を核医学画像ということができる。核医学画像検査は以下に列記する特徴がある。

1.患者の肉体的負担が少ない6また、放射線の被爆も比較的少ない。

2.生体組織の情報が得られる。

3.生体の代謝機能を測定できる。

4.検出能に優れ、高感度、高コントラストである。

しかしながら、X線画像等に比較すると画像の分解能が劣る、特別な施設管理を必要とするなどの欠点もある。一般にX線画像は組の形態的な画像を描出するのに対して、核医学 画像は機能的な画像を描出する点を十分に認識して、それぞれの画像を論じることが必要である。核医学画像処理は、検出器のエネルギー補正等の実時間での処理及び収集した画像に対する後処理の2つ分することができ、本稿ではそれらの処理の現状及び将来について考察する。

7.特別講演「中・高等学校における放射線教育」(会員ページ )

大阪大学工学部  住田 健二

X線等のいわゆる放射線の利用だけではなく,エネルギー面での利用,つまり原子力発 電の普及につれて,一般人にも放射線についての基礎的な理解が必要となってきたことは 議論の余地が無い所である。こうした利用に推進の立場であれ,反対の立場であれ,科学 的な根拠によって検討や討論を進めてゆくことに異論はない答で、このための啓蒙的図書 の出版も少なくない.だから、さぞかし学校教育のような場でも、そうした努力がなされているだろうと、われわれは安易に期待しがちなのだが、残念ながら実態はおよそ遠い所 にあり、どうかすればとかく敬遠され勝ちなようである。

まして実験による教育は測定器 の予算的裏付けがない関係で、特別な催しでもない限り一般の子供達とは無縁なようだ。当初,この講演が企画された時点では,表題についての実態調査から着手すべきだと提言するつもりで,そのありかたにもコメントし、その結果を予測しつつ議論を進めるつもりでいた。ところが、すでに先日も私のところへ、文部省以外の政府機関の依頼によるある団体からのアンケート調査の用紙が送られてきた。おそらく、多少の公的予算の裏付けの もとに調査が実施されるのであろうから、全体的な現状についてはいずれその結果が公表 されると思うので、その機会には改めて所見を述べさせて戴くとして、ここでは,かなり 個人的な体験とそれによる主張をのべさせていただく。

8.特別講演「量子ビーム利用の問題点と将来の展望」(会員ページ )

原子力委員会委員、東海大学工学部  田畑 米穂

各種ビーム利用は原子力科学.技術の重要な部分として、また、一般科学の重要 な研究手段や応用技術として広く注目されている。

ビ一ム利用に関連して,”ビーム工学”、”ビーム科学”についてしばしば論議が行われている。内容的には大ざっぱに3つに分類することが出来よう。第1 は、ビ一ム源の開発であり、第2は,ビームの計測手段.線量評価の確立である。最後の第3がビームの利用ならびにその応用を中心としたものであろう。三者は 相互に密接に関連した、共通の問題が存在するが、本講演では、最後の部分に力点を置きたい。

9.電子線照射による架橋・グラフト重合(会員ページ )

日本ハイボルテージ  向井 貞喜

1952年にチャルスビーが原子炉を用いてポリエチレンの架撟を見出して以来、放射線架橋はすでに4 0年の歴史をもっている。わが国でも1958年に放射線化学の研究センタ一として日本放射線高分子研究協会大阪研究所(1967年に日本原子力研究所に移管)が設置され、放射線による高分子加工の研究開発が本格的にスタ一 した。1961年には電子線照射装置によりポリエチレン電線の生産が開始され、 放射線による高分子加工の幕開けとなった。

1963年には日本原子力研究所高崎研究所が設置され、以後、放射線の工業利用は各分野において実用化や研究開発が活発に行われている。

10.小型イオン分析装置の開発(会員ページ )

叶_戸製鋼所  山田 包夫

蒸着に代表される薄膜成膜技術やイオン注入など、物質の表面上または表面皮下数ミク ロンの微小領域に母材以外の異種元素を精度よく分布させる技術が、半導体や新機能材料 の分野においてキーテクノロジ一となっている。これらのプロセス開発においては、表面 層を形成する成分元素の3次元分布や結晶性を精度よく(定量性がよく,高感度で)、しかも短時間に分析評価することが強く求められている。

これらの分析ニーズを満たすものとして,当社は高エネルギーのイオンビ一ムを利用した分析手法に着目し,従来からの課題であったイオンプロ一ブのマイクロ化,装置の小型 化を実現した多機能の分析性能をもつた高エネルギーマイクロイオンビーム分析装置,言い換えるとマイクロ一RBS . PIXE複合分析装置を商品化した(Mikroi : 商標登録申請中)。

ここでは本装置の特徴•装置構成を説明すると共に具体的な分析事例を示し、本装置の 有用性を示していきたい。

11.文化財・考古学の最近の話題

  (1) 正倉院宝物の分析(会員ページ )

宮内庁正倉院事務所   成瀬 正和

正倉院宝庫は8世紀の中頃に建造された東大寺倉庫群の中心的建造物であった。この倉庫に聖武天皇の御遺愛品や、東大寺関係品および造東大寺司関係品が納められ、これが今私たちの言う正倉院宝物となった。

大多数の宝物は8世紀初頭〜中頃に製作されたものであり、金属•岩石鉱物•陶器•ガラス•木材•竹材•織維•骨角•貝殻•皮革•獣毛などを材料として用いている。

使用材料の同定は、用途•形態•文様などの研究(=美術史的•考古学的研究)とともに、宝物を理解する上で欠かせない作業であり、またそれ自体、材料史的にも化学史的にも興味ある課題となっている。しかし、以前は例外的に極一部の宝物についてはサンプリングが許され、化学的調査が行われたこともあったが、大部分の宝物については肉眼あるいは顕微鏡による表面調査しか許されなかったため、使用材料に関する詳細な議論は困難であった。ところが1982年から正倉院にX線分析機器(X線回折装置•蛍光X線分析装置)が順次導入され無機材質については、詳しい情報が得られるようになった。現在までにX線分析を実施した宝物は約600点を数える。

ここではX線分析機器による材質調査の成果の一端と、それ以前から利用されていたX線透過装置による構造調査の一部を紹介する。

  (2) 古代土器の蛍光X線分析、放射化分析(会員ページ )

奈良教育大学   三辻 利一

考古学側からみれば、物理学や化学などの自然化学は大変進歩した学問領域であり、その分野で開 発された精巧な装置を使って土器を分析すれば、その産地は直ぐわかると思われる人がいるかもしれ ない。確かに、最近市販されている分析装置を使って土器を分析すれば、誰でもかなり正確な分析値 を出すことはできる。しかし、土器の分析値が出たからといって、ストレートに土器の産地はわかる ものではないのである。

土器の産地を推定するためには、実に多くの基礎データを必要とする。すな わち、各地の土器はどんな化学特性をもっているのか、どんな元素が地域差を表示し得るのか、また、 その地域差の原因は一体何なのかといった基礎研究の上に、産地推定法が組み立てられる訳である。 このような基礎データは筆者が研究に着手するまでは、何処にもなかったのである。

この点に気付いた筆者は全国各地の土器を徹底的に分析し、この研究分野の基礎を固めようと考えた。この研究を遂行するためには、当然、数千点あるいは数万点といった多数の土器試料の分析が必要である。このような多数の土器試料の分析には、少なくとも、十年間程度の長期間にわたる分析作業の継続が必要で ある。これらの点を考慮に入れれば,1)同時多元素分析、2)化学的に非破壊分析、3)迅速分析、4)自動分析できることは勿論のこと、長期間にわたって安定性の良い分析装置が必要である。このような諸条件をすべて備えた装置が蛍光X線分析装置である。

 

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第1回放射線利用総合シンポジウム
(第8回先端放射線利用研究会と合同)

平成4年1月28日〜29日  於 なにわ会館

特別講演

1関西におけるプロジェクトと将来像(会員ページ )

前大阪府副知事  西村 壮一

平成4年の景気占いですが、特にボストバブルはどうか、いざなぎ景気はいつまで続くのかと言っていたのは、ついこの間のことでありました。今や一体景気は本当に回復するのだろかと言った論争がなされています。

大方の見方は「曇のち晴れ」のようですが、晴れる前提がいろいろとあるのではないかと思います。

昨年ブッシュ大統領が日本へ来まして、文章では明記されませんでしたが「日本は成長率3.5%をやれ!」と、こちらはまた「やる!」なんてのやり取りがあったようです。

どうやってやるかと言うことが問題なんでしょうが何故そのような約束をせねばならないかと申しますと、不況になればなるほど日本はますます輸出に力を入れよる。もうこれ以上輸出され、日本に麻雀の点棒を集められてはかなわんと言うことでしょう。

同時にG 7でも先進国が互いに経済成長を目指さないと世界景気が良くならないとの考えで一致したようです。

2放射線は本当に危険か(会員ページ )

近畿大学原子力研究所  近藤 宗平

チエルノブイリ原発事故は今後多数の癌死を起こすと子測をする自称学者が多い。

米国の政府は、自然のラドンの被ばくによる肺癌死を年間2万人と推定し、家屋内ラドンを抑制する法的規制を実施することを決定している。他方、国際原子力機構は、「チエルノブイリ原発事故による発癌の影響は大規模の調査を長期間やっても、検出できない程度であり、高汚染地区からの住民の疎開もしなくてよかった」と、いう主旨の発表をした。

これは,多国藉專門科学者チームが現地に乗り込んでえた情報に基づいている。自然ラドンの濃度と肺癌頻度の実際の関係はどうか?原爆の低線量での発癌の実際のデ一 タはどうか?実際の資料は、放射線発癌にしきい値があることを、強く示唆する。この事実は、放射線発癌の機構の考察からもうまく説明できる。

3最近の放射線防護の考え方について(ICRP勧告を中心に)(会員ページ )

京都大学原子炉実験所  辻本  忠

1977ICRP(international commission on radiological protection) PubL26 によれ ば、制御されている線源を防護の対象として、放射線防護の体系がくみたてられている。 そのため、自然放射線及び医療被曝は防護の対象からのぞかれていた。しかし、1988年の 国連科学委員会の報告(report of the united nations scientific committed on the effects of atomic radiation:UNSCEAR)によれば、各種の線源から個人が受ける年間実効線 量当量は自然放射線が2. 4mSvと最も大きく、またこの自然放射線は人工的に高められてき ている。次いで医療被曝がlmSvあり、上昇傾向にあり、この2っで全被曝線量の99.6% 占めている。核実験による被曝は0.0lmSv、職業被曝が0. 002mSv、原子力発電によるもの 0.0002mSvと最も小さい。この小さい職業被曝及び原子力発電に対して、きびしい規制 が行われていたことになる。

ところが、今回(1990)勧告された、ICRP Pub1.60によれば線源が制御されていない 場合でも、被曝が制御出きるものは防護の対象になった。このため、技術的に高められた自然放射線、例えば坑道や屋内のラドン、高高度飛行による宇宙線などや事故の際の被曝 などのようなに介入措置によって被曝を制限出きるものは防護の対象とし、また被曝も職 業被暖、医療被曝、公衆の被曝の3っに区分し、具体的な放射線防護の方策を提示する事 になっている。さらに、従来は線源に着目した放射線防護を行ってきたが、今同は個人に 着目した放射線防護になり、各々の線源からの被曝に線量拘束値(dose constraints)を設 け、個人があらゆる線源より被曝しても線量限度を超えないようにすることになる。

医療への放射線利用

4核医学・X線CTによる診断技術の現状(会員ページ )

大阪大学医学部  西村 恒彦

従来、各種生体臓器の診断はいわゆる単純レントゲン診断のみであったが、最近の放射線を用いた診断技術の進歩はめざまし<,画像診断法とさえ総称される時代になった。しかも、XCTで代表される断層画像が中心となり、XCTMRI、超音波、核医学(SPECT)、そしてPETなど、種々のモダリティが競い合い、非観血的に、精度高い生体臓器の診断が司能になってきている。

このうち、本講演では、医療への放射線利用としてのXCTと、核医学を中心として、主として循環器疾患 (心臓)における診断技術の展開を中心に述べたい。

5サイクロトロンの診断への応用(会員ページ )

京都大学医学部  小西 淳二

今日、サイクロトロンは医療、特に診断分野で広く活用されている。すなわち、サイクロトロンにより産生される短寿命の放射性同位元素(以下RI)が広汎に 画像診断に利用されているのである。これらの代表は123I201Tl67Gaなどで、RIをトレ一サ一としで臓器の機能や病態を解明する核医学検査に重要な役 割を果たしている。これらの通常のガンマ線放出核種に対し、最近サイクロトロンで産生されるさらに短寿命の陽電子(ポジトロン)放出核種の利用も普及しようとしている。

一般のガンマ線放出核種を用いて、その局在を断層撮影する装置をsingle Photon emission CT ( S P E C T )と呼ぶのに対し、ポジトロン放出核種の特性 を生かして断層撮影を行う装置をpositron emission CT (PET)と呼んでいる。 P ETにはS P E C Tに比べ多くの利点があるが、ポジトロン放出核種が何れも 短寿命であるため、検査施設内に超小型サイクロトロンを設置して利用すること になる。すなわちサイクロトロンとペアとなってはじめてPETセンターが稼働 するわけである。ここではこのようなサイクロトロン-PETシステムの現況と、これを用いた診断法の進歩について述べることにしたい。

6放射線利用による治療技術の現状(会員ページ )

金沢工業大学  上野 陽里

癌は今日の人類にとって重大な病気の一つであることはいうまでもない。ここでは放射線治療の対象としての癌を念頭において話を進めることにする。医学と 放射線、この2つのキ一ワードをあげると、この放射線とはX線、y線のような 電雄放射線を頭に浮べるが、実際はもっと多様な放射線が医学に利用されている 。

何といっても直接および間接電離放射線の利用が中心であるが、他の放射線、 例えば非電離放射線(2450 MHzマイクロ波)、温熱治療用局所加温波(8MHz).熱線、負の熱線としての冷却、磁力線等も医学に利用されている。

7悪性黒色腫(黒色がん)の選択的原子炉療法(会員ページ )

神戸大学医学部  三島  豊

環境問題への放射線利用

8大気浮遊物質の発生源研究への応用(会員ページ )

大阪府立大学附属研究所  溝畑  朗

大気浮遊物質は土壌、海洋などの自然発生源、各種の工場・事業場や自動車などの人為発生源から排出された一次粒子とともに、自然および 人為発生源からのガス状物質が大気中で反応・生成した二次生成物からなっている。

発生源粒子はそれぞれ特有の化学組成と粒径分布を持っているので、大気浮遊物質の組成は存在する発生源粒子の濃度によって異なる。従って、大気浮遊物質を発生 源との関係で理解するにはその組成を知ることが必要であり、主要金属元素をはじめとする元素成分、炭素成分、あるいはイオン成分が測定される。講演では、都市域の大気浮遊物質の性状を紹介するとともに、この放射線を利用する分析法の大気浮遊物質の発生源寄与同定研究への応用について述べる。

9加速器質量分析による炭素14高感度測定(会員ページ )

  名古屋大学理学部  中井 信之

天然物の放射性核種の定量は、従来は放射線を計測する間接的な方法に頼ってきた,しかし、近年になって加速器と質量分析を融合させて、放射性核種を計数する直接的な高感度測定法が生まれた。天然レベルの放射性核種の加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry;AMS)による測定技術は、1980年代に入って急激に実用化されるようになった。この加速器を用いた質量分析技術は、主として宇宙線生成核種(Cosmogenic nuclides)の定量に用いられている。

考古学・文化財への放射線利用

10電子スピン共鳴による年代測定及び放射線量の測定(会員ページ )

大阪大学理学部 池谷 元伺

放射線により物質に生じた電子(正孔)中心の蓄積量を電子スピン共鳴(ESR)で検出することにより、物質が受けた放射線の「蓄積線量」を評価すること ができる。鉱物や化石は、ウラン238(238U)やトリウム232 (232Th)の壊変系列から の自然放射線αβγ線によって「自然放射線効果」を受けている。年間の放射線線量率を放射化学の手法で求めることによって、物質が放射線効果を受けはじめて以来の「年代値」を蓄積被曝線量から求めることができる。これが第四紀と呼ばれる最近の数百万年を中心として広い分野で利用されはじめた「ESR 代測定法」の原理である。

本講演では、「ESR年代測定」の原理と考古学への応用について紹介し、 ESR放射線計制」として、原爆放射線やチュルノブイリ近傍住民の被曝線量評価と放射線被曝画像をスピンの濃度分布から測定する「ESR顕微鏡」の原理と方式、応用例について述べる。

11遺物の産地分析(会員ページ )

関西外語大学  東村 武信

遺物とは何しろ書かれた資料が全くないという品物である。これを定めるには元来は 字者がそれぞれ勝手な論法で、勝手な結論を出していたものに過ぎなかった。そこには それぞれの人の主観があるのみで、他の人が見たらその結論にはついていけないといったような論が行なわれていた。

日本では、弥生時代には多少の記録、それも中国のものがあって、それを利用できるような問題もあるが、もっと古い時代になるとやはり記録 は何もないといったところである。そんな何も記録がない、あるのは品物だけといった状況の物について調べていくには、自然科学的な方法で進めていくより仕方がない。

更に、記録に匹敵するようなことを行なうためには、調べた結果の結論が客観的なものであることが何にもまして大切である。その分野の熟練した学者しか議論できないような方法では本当に価値があるとは言えない。熟練した人でなくても、その結論を導く に至った道筋は誰にも理解できるといったことが大切である。

12.出土遺物・民族文化財の保存処理とX線・中性子線の利用赤外線TVの応用(会員ページ )

元興寺文化財研究所  増澤 文武

文化財の調査・研究に際し、X線透過試験などの非破壊試験は日常的に行われるようになった。もう少し古い話であるが、X線透過試験により1978年、埼玉県 稻荷山古墳出土鉄剣に115文字の金象嵌を発見し、大きな波紋を呼んだ。その後数多くの非破壊試験の技術が文化財に応用され、実に多くの成果が上がっており、むしろ、これらの技術がなければ文化財の調査•研究に支障を来すことさえ 生じるまでになっている。

最も古く実施された1934年の高槻市阿武山古墳の漆棺のX線写真を東海大学で画像処理を行い、遺体が付けていた冠帽の復原を可能と し、その形から従来から言われている被葬者が藤原嫌足であることをより鮮明にするものとなった。このことはX線透過試験が現代のハイテク技術と挨まって古くて新しい世界を見せた格好のものと思われる。

ここでは、私どもが日常的に出土遺物、民族文化財の保存処理、修復に使っているX線透過試験や、赤外線テレビ、更に新しい技術である中性子ラジオグラフィの利用例を述べてみたい。

13考古遺物の非破壊分析(会員ページ )

奈良国立文化財研究所  澤田 正昭

考古学研究の分野に然科学的な手法を応用する例は、ますます多くなってきた。しかも、分析機器等の進展、改善と相まって、その研究内容は、より高度化され、より精密に検討できるようになってきた。遺物の材質分析、製作技法、そして、その生産地に関する研究などである。

金属製遺物の材質分析は、その保存修復や考古学的な研究のために、ぜひとも必要なことであるが、この種の分析では、ドリルで穿孔して試料採取するのが普通であった。そのため、完形品を分析の対象とすることは希で、専ら、小片が分析の対象とされがちであった。そこで、非破壊で分析が可能になれば、従来、分析の対象 から遠ざけられてきた完形品の測定も可能となり、より有効な情報が得られることになる。