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川崎重工業 |
電子線硬化し航空機用部材に適用可能な樹脂/プリプレグ開発 |
航空機用構造部材設計、ボイド低減技術開発 |
高速プリフォーミング技術開発 |
長尺の航空機用構造部材の均一硬化の電子線照射技術開発 |
試作部材評価、全体システムの設計と評価 |
図1 開発体制と研究課題
厚さ6mmプリプレグ未硬化試験片に10MeV電子線を表面線量30kGy、照射間隔約17分で照射すると、試験片の上面、内部、及び下面とも一様に約30℃上昇し、その後重合が開始され、さらに上昇する。2回目の照射で約60℃上昇し、重合途中であった樹脂が重合したことを示している。硬化度は1回目で約20%、2回目で約60%、3回目で約90%、4回目で100%に達している。
H型の構造材を照射する際は斜めに傾けて、出来る限り均一に照射されるよう工夫されている。電子線照射による製造はオートクレーブやオーブンを用いる熱硬化法に比べて約40%のコストダウンできた。また、長尺の構造材も製造可能なので運搬方法さえ確保できれば供給できるし、試作品はエアバス社にサンプル出荷されているとのことであった
2. 温度応答性高分子のグラフト重合による培養皿の開発と再生医療への応用(会員ページ)
(株)セルシード 知的財産室 室長 坂井 秀昭
機能を失った臓器や組織を治療する方法として移植が用いられているが、これにはドナーが必要で、運よく提供者が現れても、他人の臓器を拒絶する抗体反応のため移植が上手くいかない恐れがあった。拒絶反応をなくすためには免疫力を落とす方法もあるが、感染症にかかりやすくなる。そこで注目されるのが自分自身の細胞を培養して治療に用いれば拒絶反応がなくなるという事実である。 例えば視力回復のため角膜移植を受ける場合、他人の細胞は簡単に生着しないので縫合しなければならないが、縫合により角膜が歪み、視力が回復しても乱視になる可能性が高い。
細胞をシート状に培養しても、細胞が分泌した接着性タンパク質の働きによって培養皿に接着し、きれいに剥がすことが出来ないでいた。蛋白分解酵素を働かせて細胞を剥がそうとしても、細胞同士を接着しているタンパク質も分解され、シート状に剥がすことができないのである。これらの問題を一挙に解決できる培養皿を開発し、再生医療へ応用するバイオナノインターフェイスについてお話をしていただいた。
バイオナノインターフェイスは温度応答性ポリマーがナノスケールの厚さで均一に固定化された温度応答性細胞培養基材のことで、基材はポリスチレン培養皿、温度応答性ポリマーはポリ−N−イソプロピルアクリルアミドである。このポリマーは32℃に下限臨界溶解温度を持ち、32℃以上では脱水和し、ポリマー鎖が収縮した構造をとる。逆に、32℃以下ではポリマー鎖は水和し、水中に大きく広がった状態になる。細胞培養するとき、ポリマーが凝集した状態(37℃)では疎水性になり、細胞付着性表面になり、細胞シートを剥がすときには32℃以下に冷却してポリマーを親水性にし、細胞非付着性表面にする。(図2)
ポリスチレン容器へのポリマー固定化はモノマー溶液を塗布し、電子線照射することによって得られる。固定化量が多すぎると細胞が付着せず、少なすぎると剥離が困難となり、バイオナノインターフェイスの特性は基材表面に固定化されている温度応答性ポリマー量に大きく影響する。
日本国内だけで2万から5万人世界中では100万人以上が角膜移植を必要としている。しかし、移植用の角膜は献眼に頼っているため、世界中で年間に65000人が角膜移植できるだけである。角膜の細胞シートを利用すれば、今まで一人だけに提供されていたものを複数に増やすことが出来る。角膜には血管が無いため、他の臓器移植と比べると少ないものの、拒絶反応が起きます。拒絶反応をなくすには自分の組織を培養すればよいのですが、病気の細胞を培養しても意味がありません。研究により、口腔粘膜を細胞シートに培養したものが角膜として機能することが見出されました。現在、フランスでは患者自身の口腔粘膜を日本に送り、日本で培養した細胞シートを角膜移植に使っています。この細胞シートには接着性タンパク質がそのまま残っているため、移植時に細胞シートを眼球へ縫合させる必要が無く、5分ほど患部へ載せているだけで生着するので、患者にとっても医師にとっても手術の負担が軽減されるそうです。しかし、日本ではまだ医療技術として認められていません。
心臓移植でしか治らないといわれていた拡張性心筋症の患者さんが阪大病院で移植せずに治ったというニュースがありました。この治療にも細胞シートが使われていました。この場合には筋肉細胞をシート状に培養し、それを何層にも重ねて心臓に貼り付けるものでした。その患者さんの後日談として、元気になり喜んで動き回り、転倒して骨折されたということでした。
そのほかにも、歯周病で無くなる歯根膜の培養に成功した研究、関節軟骨の磨耗により発症する変形性関節症の治療に再生軟骨シートを移植する研究、火傷のあとのケロイドの治療に表皮細胞のシートを移植する研究などが紹介された。
3. 粒子線照射による半導体デバイスの特性改善(会員ページ)
サンケン電気株式会社 宮薗 慎一
パソコンには交流を直流に整流し、マイコン、メモリ、や各種LSIに供給する電圧に変換するためのパワー半導体が搭載されている。パワー半導体は他にもエアコンやテレビなどの家電製品をはじめ自動車にも搭載されている。パワー半導体のスイッチング電源は高機能化・省エネルギー化を進めるため、小型化・軽量化の研究が盛んに行われている。ここで問題になるのは高速スイッチング機能と低ノイズ化である。図3に超高速ダイオード(FRD)のパルス整流時の電流・電圧波形例を示す。エネルギー損失は順方向過渡損失(Vo)、順方向定常損失(VF)、およびモレ電流と呼ばれる逆方向定常損失(IR)があり、スイッチング損失(trr)が大きくこれを小さくする必要がある。
シリコン結晶内部に欠陥を形成して、逆電流で電子とホールが移動する距離を短くし、逆電流の流れる時間を短くするため、ライフタイム制御技術が使われている。従来から金(Au)拡散法や白金(Pt)拡散法が使われているが、いずれも貴金属の挙動が複雑で、微量の濃度制御が難しく、大口径ウェーハの場合面内均一性の確保が困難である。サンケン電気ではシリコンウェーハに電子線や粒子線を照射し、Si原子と弾性衝突させ、内部に結晶欠陥を作っている。ライフタイム制御技術の方法と半導体デバイスの電機特性の傾向を見ると、金拡散法では順方向過渡損失と逆方向定常損失(モレ損失)が大きく白金拡散法では順方向定常損失と高温でのスイッチング損失が大きい。粒子線照射によるライフタイム処理をした半導体ではモレ損失が白金よりも大きいけれど、金拡散法よりも小さく、他の損失は全て小さくバランスの取れた半導体といえる。目標とする半導体特性によって、ライフタイム制御法を使い分ける必要があるとのことであった。
半導体ウェーハに電子線を照射する場合、欠陥形成に必要な電子のエネルギーは250keV以上であるが、実際にはウェーハの深さ方向全域に欠陥を形成するため数MeVの加速で電子線を照射している。結晶欠陥としては@原子空孔、格子間原子などの孤立欠陥、A原子空孔に酸素原子が入ったAセンター、B原子空孔にリン原子が入ったEセンター、及び原子空孔が連なったJセンターがある。孤立した欠陥は温度に対して不安定であるので、熱処理して除去し動作温度領域で安定して存在する欠陥だけを利用している。電子線照射よりも粒子線照射のほうが各種特性が改善されているデータを見せていただいた。
(阿部記)