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第29回放射線科学研究会聴講記

表記研究会は平成18421日(金)13:30から17:30まで住友クラブ(大阪市西区)において、秋山雅胤氏(()無人宇宙実験システム研究開発機構)、鳥居建男氏(()日本原子力研究開発機構)、藤井紀子氏(京都大学原子炉実験所)の3名の講師の方をお招きして開催した。さらに、今年度から新しく設けた会員用発表枠の一回目として東大阪宇宙開発協同組合から同協会顧問の河崎善一郎氏(大阪大学大学院教授)および仁木工芸()から平井敦彦氏がそれぞれ講演を行った。

 

1. USEFにおける民生部品評価(会員ページ )

()無人宇宙実験システム研究開発機構

 秋山雅胤

 USEFはnmanned pace xperiment ree Flyerの頭文字をとったものである。1986年5月に宇宙関連関係会社13社の寄付と当時の通産省など官の後押しを受けて、(1)無人宇宙実験システム機器及び運用管制システムに関する研究開発・運用、(2)無人宇宙実験システムに関する調査研究・普及啓発および(3)これらの業務を通し、宇宙産業の発展、国際社会への貢献に資することを目的に創設された。

上記の目的を遂行するために、これまでに(1)EXPRESS : Experiment Re−entry pace ystem(自立帰還型無人宇宙実験システム )、(2) SFU : pace lyer nit(宇宙実験・観測フリーフライヤー )、(3) USERS : nmanned pace xperiment ecovery ystem(次世代型無人宇宙実験システム)、(4) SERVIS−1 : pace nvironment eliability erification ntegrated ystem(宇宙環境信頼性実証システム)の4機の衛星を打ち上げた。それぞれの主な目的は(1)は宇宙で行った実験成果を無人で地上に持ち帰るプロジェクト、(2)では宇宙で半導体を製造し、それをスペースシャトルを使って回収する研究、(3)は高温超伝導材料の育成実験、(4)宇宙環境での信頼性実証システムの構築の研究である。日米間の貿易摩擦に端を発した米国スーパー301条発動に関連して、主として米軍規格に準拠してきた高信頼性部品(MIL部品)の供給不安が加速してきた社会的背景を受けて、熾烈な国際的な宇宙開発市場で、我国が競争力を維持するには、衛星の価格を現状の1/2から1/3にすることが重要である。そのための有効な方策の一つとして、日本が得意とする民生部品・民生技術の活用があり、そこにUSEFが目指す宇宙環境信頼性実証システム(SERVIS)の構築がある。

 

1 USERS SEMに使用されている電子部品数と費用構成

品    種

使用数

費用構成

CPU、メモリ、GA

250

87

デジタルIC

2,530

2

半導体

6,720

1

抵抗・コンデンサ

14,600

2

その他(太陽電池、リレー等)

13,800

8

合計

37,900

100

 

 

 

 

 

 

 

 

 

表1は上記USERS Service Module(SEM)に使用されている電子部品数とその費用構成を示している。37,900の部品の内、価格比率で87%を占めるCPU、メモリ、GA(ゲートアレー)の部品数は1%にも満たない250個である。したがってこの部品を民生品に置換できれば、大幅な低価格化が達成できる。しかも、民生用部品は小型かつ高性能であり、ソフト処理化が可能となり、ハード面での製作・試験費の削減が可能となる。課題として民生品は宇宙での使用が一般に想定されていないために宇宙線に対する耐放射線性のデータはなく、さらに高性能化のための世代交替のペースが速く、宇宙用として対応可能かどうかの試験を行う時間的余裕がない。そこでSERVISプロジェクトでは民生部品・民生技術の地上評価試験と2機の実証衛星による宇宙実証試験により、民生部品・民生技術データベースをまとめ、民生部品・民生技術評価選定ガイドラインおよびそれらの適用設計ガイドラインの策定を進めてきた。これらの成果から民生部品・民生技術を宇宙で使いこなすための知的基盤を構築し、開発業務を円滑に進めるための多数のメーカー間のインターフェースを整備して開発支援システムを構築する作業を進めている。平成16年度で第一次ガイドラインの策定が終了し、今後は宇宙実証試験結果を反映して見直しを行おうとしている。

地上評価を行う民生部品は200種を目標に199種まで試験を終了し、その結果はデータベースとして一般に公開した。さらにSERVIS−1による宇宙実証試験は平成17年11月に運用を終了した。その結果、試験に供した実験装置9機器において、民生部品採用に起因する故障は発生せず、また放射線による劣化、シングルイベント現象も地上予測試験に基づく発生予測頻度を下回った。これらのことから民生部品は予想以上に宇宙用機器に運用可能であることが明らかになった。今後は宇宙実証データについてもデータベースに取り込み、それらのデータベースは宇宙分野以外の分野においても広く活用されることを期待していると話を締めくくられた。

質疑では民生部品の耐放射線性試験について重イオン照射試験の意義について質問があり、バンアレン帯よりも低い領域で運用される衛星とそれよりも高い領域で運用される衛星ではその影響を分けて考慮しているとの回答であった。

我国の民生部品メーカーも大量生産による利益追求のみならず、用途は限定されるものの、夢のある宇宙にも眼を向けて欲しいとの印象を受けた。

 

2. 雷からの放射線発生とそのメカニズム(会員ページ )

(独)日本原子力研究開発機構敦賀本部 鳥居建男

 アメリカ独立宣言の起草者の一人であったベンジャミン・フランクリンの名前は雷の研究から避雷針を発明したことでも著名である。今年はフランクリンの生誕300年にあたり、米国の物理学会誌にもその話題が取り上げられている。今回の研究会では雷と放射線との関係について近年活発に研究をされている鳥居氏に講演をお願いした。

鳥居氏らは高速増殖炉「もんじゅ」周辺の環境放射線モニターの数値を監視しているなかで、雷の活動時に数値が上昇することがあることに気づいた。当初は雷放電による電気的ノイズとも考えられたが、モニターの設置場所によってピークの立ち上がりに時間差があること、高い位置にあるモニターほど高い数値を示したこと、電気的ノイズには関係のないTLD検出器の数値も上がっているなどの理由から、雷放電時に発生する放射線を捉えていると考えた。雷雲から放射線が放出される可能性はすでに1930年頃から唱えられていたが、観測結果からは「出る」、「出ない」という相反する報告がなされ、雷雲からの放射線発生を断定するデータはなかった。しかしながら、近年の航空機や気球、人工衛星による観測結果は雷雲からの放射線発生を裏付けるものである。気球に電位計と放射線検出器をとりつけ、雷雲中を上昇させる実験では高電界領域で放射線の計数率が急激に上昇する結果が得られた。結果をまとめると雷雲内では数10keVのエネルギーを中心とするX線の強度が1〜2桁上昇した。またその強度の上昇は雷放電の前に出現し、雷放電とともに低下した。衛星観測結果も雷雲上空において衛星に設置したNaIやGe半導体検出器の計数の上昇が観測された。さらに雷放電時に雷雲上空の成層圏から電離圏にかけてさまざまな発光現象(ブルージェット、スプライト、エルブス)が報告されるにいたり、雷放電が対流圏のみならず、超高層領域までを含めた現象として認識され始めた。

もんじゅ周辺をはじめ北陸地方の原子力施設のモニターの数値と冬季雷放電の観測結果を調査すると次のことが明らかとなった。@放射線量率の上昇は個々の放電よりも雷雲内の電界強度が上昇した際に発生する。A放射線の発生域は数100メートルの範囲である。Bモニター数値は雷放電による高電界の消失、あるいは高電界領域の移動または強度の変化に関係して復帰する。さらに検出器の特性も考慮すると放射線の発生は雷雲の高電界による荷電粒子の加速に起因する制動放射線発生の準静的過程である可能性が考えられ、雷雲内でどの程度の電界強度になったときに放射線が発生するか、また放射線が発生するほどの電界強度があるかを検討した。室内実験で平行平板電極間および針電極で絶縁破壊に要する電界強度はそれぞれ3MV/m、500kV/mであるのに対して、雷雲中で観測される電界強度は100〜200kV/m程度にすぎない。

この程度の電界で放射線が発生し、放電が発生する機構を考察した。冬季の雷雲の特徴としてその三極構造がある。冬季雷雲は中層が強く負に帯電しており、上層は強い正、下層は弱い正に帯電している。雷雲中での荷電粒子の可能性として二次宇宙線と地上からのRnの可能性を検討した。モンテカルロ計算により、10MeVの高速電子を25個、高度2kM付近の雷雲中に入射した場合の電子および光子の飛跡解析を行ったところ、電界が230kV/mを越すと顕著な電磁シャワーの発生と多数の逃走電子の形成が見られた。さらに宇宙線のエネルギースペクトルを用いて、高度6km付近の雷雲に入射したモンテカルロシミュレーションでは高度1km付近において100keV以上の電子束は電界の無い場合に比して2桁程度上昇し、光子束の上昇を上回った。大気中の宇宙線成分のうち、もっとも効果の大きいものは電子の約200倍の質量を持ち、寿命2.2μsecの透過性の高い宇宙線ミュオンであり、容易に雷雲中の高電界領域に到達し、飛行中にノックオン電子を放出する。

これらの考察から冬季雷における放射線線量率上昇の原因は雷雲中で宇宙線起因による逃走電子群に関係したもので、そのために大気層の伝導率が上昇して放電(落雷)に至ると考えられる。ただし、放射線測定結果は米国の地上観測結果やTGFの結果とは一致しない点もあり、完全に解明されたとは言えず、更なる詳細な実験結果の蓄積が必要である。なお、余談として、高エネルギーのミュオンを発射できる可動式加速器があれば、人為的に雷雲中にミュオンを投射することにより、誘雷させて落雷事故を未然に防ぐことも可能になるとのお話も聞かせていただいた。会場からはラドンとの関係について質問があり、ラドンの効果について完全に否定は出来ないが、主原因とは考えにくいとの回答であった。

鳥居講師のご講演は後の河崎講師のご講演とも関連して、雷は身近な現象であるにもかかわらず、その実態について意外に私たちは知らないということを気づかせてくれた。

 

 

 

 

3. Dアミノ酸で見る老化−紫外線とストレスによる促進−(会員ページ )

京都大学原子炉実験所 藤井紀子

 アミノ酸は我々が生活していくために必須の物質である。アミノ酸には左手型(L型)と右手型(D型)の二種類の光学異性体が存在するが、自然界には左手型のみが存在している。アミノ酸の合成においては左手型と右手型が等量生成するので、自然界ではなぜ左手型のみが生命体に与ってきたのかは生命の起源をめぐる謎の一つである。

従って、生体内ではD−アミノ酸は合成されず、タンパク質中にはD−アミノ酸は出現しないと信じられてきたが、近年D−アミノ酸も自然界に広く分布していることが明らかになってきた。特に、眼の水晶体、脳、皮膚、歯、骨、動脈壁、靭帯などの老化組織のタンパク質中にはD−アスパラギン酸(D−Asp)が蓄積されていることが分かってきた。これらの結果はD−Aspと加齢との間になんらかの相関があることを示唆している。眼の水晶体は誕生から死ぬまでの間、新陳代謝のない典型的な組織であり、白内障の水晶体中には多くのD−Aspが含まれている。20種類あるアミノ酸のうち、Aspはもっともラセミ化反応速度定数が大きいアミノ酸であるので、代謝の緩慢な組織中にD−Aspが生成されるのは、長期間にわたって外界のストレスの影響も受けて、非酵素的にラセミ化が進行したと考えられる。藤井講師は極微量のD−Aspの分析が可能な技法を開発してアミノ酸中のL体、D体の比、D/Lの加齢に伴う変化を求めた。さらにD−Aspがいずれのタンパク質中に生成されるかを調べた。水晶体はα−crystallin,β−crystallin,γ−crystallinの3種類のタンパク質が会合して形成されている。これらが規則正しく配列して超構造を保持しておれば透明であるが、構造に異常部が形成されると白内障の原因となる。分析の結果、D−Aspはα−crystallin中のみに形成されていた。さらにDに変わると同時に結合もβへ変わっていた。特にαA−crystallinのAsp−58、Asp−151残基の反転が顕著であった。すなわち、この構造変化が引き金となって、タンパク質中の立体構造が変化することにより、異常凝集を生じて白内障を引き起こすと考えられる。正常マウスの眼に紫外線を照射するとD−Aspが増加したので、紫外線はラセミ化を促進していることが確認できた。また反応速度係数の値から体温程度でD/L比が1.0に達する時間は50から100年と見積もられた。同様な傾向は皮膚、動脈硬化、アルツハイマー、プリオン、多発性硬化症などの疾病についても見られる。皮膚の場合、子供にはD−Aspは存在しないが、加齢とともに増大している。しかも顔の皮膚の皺の部分には多量に生成されているのに対して、背中の部分には認められないことから、紫外線はD−Asp化を促進していることが確認できた。

藤井講師の講演は日頃、私たちが何気なく使っている齢のせいという言葉にも分子生物学的に深い意味があることが分かって大変勉強になった。私たちが子供の頃には体にビタミンCがよく出来るから外で日にあたりなさいとよく言われたものであるが、今になって思えば老化を進めていただけかも知れない。最近のご婦人方は紫外線防止のクリームを顔にぬり、紫外線よけの日傘で出かけるようになり、女性はますます若さを保つすべを身につけたようである。

 

 

会員サロン

今回の放射線科学研究会から、新たにONSA会員のための発表の時間を設け、第一回は東大阪宇宙開発協同組合と仁木工芸株式会社が講演を行った。

1. 衛星搭載用VHF波帯広帯域デジタル干渉計

東大阪宇宙開発協同組合・顧問 河崎善一郎

(大阪大学大学院工学研究科教授)

東大阪市の中小企業の経営者たちは各々の技術力を生かし、国の支援も受けて自らの力で人工衛星をあげるべく「まいど1号」の開発を進めている。2005年12月には国の中間評価も経て、2007年中には最初の衛星の打ち上げを予定している。当初は人工衛星をあげることを目的に協同組合が結成されたが、事業の推進のためにはその衛星で何をやるかを明確にする必要があり、その一つに衛星からの雷雲の観測がある。以前より人工衛星から熱帯雨林の状況を電波で観測する研究に携わってきた河崎教授は組合の顧問として、「まいど1号」に搭載する雷観測機器の開発に携わっている。地球環境のシミュレーションでは2100年までに3.8℃の気温上昇があるとして、アジア各地では積乱雲が発達しやすくなり雷の増えることが予測されている。現実に熱帯特有とされていたマラリヤやデング熱などの風土病の北限が台湾まで達したという報道もなされている。このような状況のなかで、雷放電を高空から常時観測できるシステムの構築が期待されている。光を使った場合では空の状態に依存して観測が出来ない場合があるのに対して電波を用いればその難点を避けることが出来る。特にVHF(超短波)帯の電波ではパルス数が大きいので、雷放電の時間分解能の高い測定が可能であり、アンテナを何箇所か設置して、個々のアンテナにおける受信シグナルを処理するデジタル干渉計(VHF Broadband Digital Interferometer)を用いれば空間分解能の高い雷雲の測定が可能である。衛星に搭載するには小型化が必要であり、「まいど1号」に搭載すべく、準備は着々と進んでいるそうである。

 

 

 

 

 

2. 放射線検出器の最近の動向

仁木工芸(株) 平井 敦彦

社名は硝子工芸品の製造輸出会社として創業されたことによる。二代目に入り、理化学機器に販路を広げ、現在では日本原子力研究所(現:原子力研究開発機構)、KEK、SPring−8などに放射線関連機器や低温機器・測定機器の納入に実績を有している。今回は会社が取り扱っている各種の放射線検出器について最近の動向を紹介した。

最近の特徴として医学分野では核医学用画像装置に使用されるCdTeピクセルアレー、学術研究分野ではX線天文学用の高エネルギー分解能検出器に応用するマイクロカロリメータ、核融合炉内の中性子検出器に使用する人工ダイヤモンド素子、高計数率中性子検出器に用いるLBO:Cu検出器の開発が進んでいる。さらに環境・安全面の分野では土壌汚染防止法やEUにおけるRoHS(estriction f the certain azardous ubstance in electrical and electric equipment)指令の発効(2006年7月1日)により、土壌や電気製品などに含まれる有害な重金属類を簡便に分析可能な機器の需要が高まってきた。この分野では可搬式蛍光X線分析装置の開発が進みつつある。この関係では第28回放射線科学研究会における京都大学大学院工学研究科・河合潤教授の講演が大変参考になると思う。

(大嶋記)

 

 

 


 

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