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25回放射線科学研究会聴講記

表記研究会は平成161015日(金)13:30から17:30まで住友クラブ(大阪市西区)において、小林千里氏(東大阪宇宙開発協同組合)、首藤靖浩氏((株)アクロラド開発部)、柴山元彦氏(大阪教育大学付属高等学校天王寺校舎・副校長、理学博士)、岸徹氏(科学警察研究所法科学第三部長、理学博士)の4名の講師の方をお招きして開催した。

1.東大阪人工衛星開発プロジェクト(会員ページ )

東大阪宇宙開発協同組合マネージャー 小林千里

小林氏は現在東大阪宇宙開発協同組合が進めている民間人工衛星「まいど1号」打ち上げ計画の進捗状況について熱気のこもった講演を行った(図1)。

大阪市の東部に隣接する東大阪市は人口51万人で市内にはおよそ8000社の製造業があるが、近年の不況・産業の空洞化、後継者不足など日本の製造業が直面している共通の課題を抱えている。しかし、東大阪市には規模は小さくても卓越した技術力を誇り、世界中の航空・宇宙関連企業に部品を提供している企業も多く、組合の青木理事長が社長をつとめるアオキはボーイング社の認定企業であることは、その一例である。そこで東大阪市では製造業の活性化を目指し、夢・チャレンジをスローガンにかかげて宇宙関連開発研究会を発足させた。人工衛星は.通信系、2.データ処理系、3.姿勢・軌道制御系、4.電力系、5.推進系、6.熱制御系、7.計装系、8.構体系などの多くの基本要素からなるシステムであり、まもなく人工衛星の製造・打ち上げによる地場産業振興のために技術の分担と融合を目指した組織として2002年12月に協同組合(SOHLA)が設立された。講演に先立ち、これまでにTVで放映されたニュースやコマーシャルの番組の紹介がなされた。コマーシャルにも全国版と関西版があるようである。持参されたDVDディスクとプレーヤの相性が良くなかったのか、はじめに音声や画像が止まるトラブルがあり、小林氏には大変ご迷惑をおかけしてしまった。現在、SOHLAではNEDOからの委託事業や宇宙航空研究開発機構(JAXA)や、大阪府立大学、東京大学中須賀研究室、大阪大学などからの技術支援を得て基本設計をすでにスタートさせており、2005年4月にはシステム組立試験に入り、2006年4月には打ち上げ・運用の開始を目指している。SOHLAでは「夢で始まり、情熱を結集し、こころ豊かな社会を創る」ことを理念として順調に事業をすすめているが、この人工衛星の用途について多くの方からの積極的な提案を歓迎しているとのことである。アイデアのある人は東大阪宇宙開発協同組合宛にご提案を頂きたい。

2.カドミウムテルル半導体放射線検出器の画像検出器への応用(会員ページ )

(株)アクロラド開発部モジュール開発部 首藤靖浩

アクロラド社の首藤靖浩氏は同社のカドミウムテルル半導体検出器を中心に講演をされた。半導体検出器として良く知られているシリコンやゲルマニウムに比べてカドミウム、テルルは原子番号が大きいために、光子の吸収率が高く、またバンドギャップが1.5eVと大きいので室温動作が可能で本体を小型化出来るという優れた性質を有する。従来は良質の大型結晶の育成が困難であったが、アクロラド社は世界最大の3インチ径の結晶を量産レベルで得る技術に成功した。得られた結晶をスライス、表面を研磨加工後、表裏に電極を構成して検出器とする。電極にはオーミック型またはショットキー型がある。オーミック型は時間的に安定した動作が得られるが、暗電流は大きい。それに対してショットキー型はエネルギー分解能は高いが、時間の経過に伴って、電荷の収集効率が低下するポーラリゼーション現象がある。その場合には印加電圧をリセットすると回復し、実用上特段の問題はない。検出器は目的に応じて様々なチップ状にすることが可能である。一般仕様としては5mm角、1mm厚のものが多い。このようなチップ表面にフォトリソグラフィを用いて微細なピクセル電極構造を形成することにより、画像検出器モジュールを作製出来る。図2は100μm間隔のピッチで3万をこえるピクセル電極を形成させた検出器の一例である。近年医療用をはじめとして高感度・高空間分解能を有する放射線検出器の需要が増している。アクロラド社ではピクセル型検出器を組み込んだ高感度X線動画撮像カメラを開発している。その特長は1.低線量においても高いコントラスト分解能が得られ、空間分解能も高く、50フレーム/sで動画の撮影が可能でしかも筐体をコンパクトに出来るということである。現在実現している有効視野は50×50mmである。現在アクロラド社としてはさらなる視野の拡大をめざした高性能の平面検出器モジュールの開発に取り組んでいる。

 

 

 

3.自然放射線と地質(会員ページ )

大阪教育大学附属高等学校天王寺校舎

副校長 柴山元彦

 

柴山元彦氏は大阪府や奈良県下の地質を地表での放射線測定に基づいて丹念に調査、解析された結果を話された。地表に置いたNaIシンチレーションサーベーメータで検出される放射線は土壌中の天然放射線核種であるウラン系列、トリウム系列、カリウム40からのガンマ線が主たるもので表層下30cm程度からの情報が得られる。計数率としては1分間あたり3000カウント程度であり、変動係数にして1.8%で、1分間測定で十分なデータとなった。注意すべきは地表下の地質を正確に反映する場所を測定することであり、平坦な古土壌であって、しかも周辺の地形やコンクリート製建造物からの影響を受けない地点を選定することである。そのような測定条件に適う場所としては神社があり、今回の測定においては大阪府下では230地点のうち、193地点が神社であった。集落のある場所では殆ど神社が祀られているので、府下の全域に分散して分布しており、古い土壌がそのまま残されているものが多く、さらに開放された場所になっていて測定が容易であるなど観測地点として非常に好都合である。

近畿地方の地勢は東西に伸びる地質帯で表すことが出来る。有馬高槻構造線を境界として北部は丹波帯、南部は領家帯、さらに紀ノ川にそう中央構造線より南には三波川帯がある。その南には秩父帯、四万十帯が分布しているが、大阪府、奈良県にはほぼそれらの総てが分布するので、大阪府、奈良県の調査を行えば近畿地方のかなりの情報を得ることが出来る。地質別では変成岩や堆積岩からの放射線量はあまり変化しないのに対してマグマに起源を有する火成岩は岩種によって大きく異なることが明らかになった。火成岩のなかでマグマがゆっくりと固化して形成される岩石を深成岩と呼ぶが、花崗岩はその代表的な岩石である。関西は花崗岩帯が多く、放射線の背景線量が関東地区に比べて高いことが知られているが、花崗岩でも六甲山西部に境界を持つ異なる地層がある。マグマが冷却固化する過程で分化がおこると種類の異なる深成岩が同心円状に分布する岩体を生じそれを累帯深成岩体と呼ぶ。大阪周辺には茨木複合花崗岩体と四条畷花崗閃緑岩体の2種類がある。何れの場合も岩体の中心部に向かって放射線量率が高くなることが分かる。その理由は次のように説明出来る。マグマが凝固する過程でまず融点の高い成分の岩石が晶出し、中心部に向かって漸次融点のより低い岩石が固化していく。その際にU,Th,40はイオン半径が大きい等の理由によって固相に取り込まれずに液相中に残留し、最終的に固化する相中に取り込まれる。そのために晩期の岩石ほど放射線量率が高くなると考えられる。その機構を模式的に示したのが図3である。

 

4.薬物・爆発物探知のためのRI/放射線の利用(会員ページ )

科学警察研究所法科学部第3部長 岸 徹

岸徹氏には近年の複雑な世界情勢のもとで、一般の人に関心の高い爆薬や薬物を探知するためのRI/放射線の利用について講演をしていただいた。麻薬などの薬物乱用傾向は現在世界的な問題となっており、我が国では平成15年においてはおよそ17,000人が検挙され、1,000kgをこえる薬物が押収されている。これらの物質のうち薬物については「覚せい剤取締法」「大麻取締法」、「麻薬及び向精神薬取締法」、「あへん法」、爆薬やサリンなどの危険物に関しては「火薬類取締法」、「爆発物取締罰則」、「化学兵器の禁止及び特定物質の規制に関連する法律」などにより取締まりが行われているが、さらに法の規制下からは外れているいわゆる脱法ドラッグの蔓延も懸念材料である。

これらの物質を取締まるためには○覚せい剤など不法薬物の探知、○薬物の所持、隠蔽、移動段階での発見、○捜査現場での簡便、迅速な探知システムの開発が要求される。

隠蔽された薬物や爆薬などの探知にはその量に応じて手荷物からトラック、コンテナーなどの大型のものを対象とした様々な装置が開発されている。その多くはX線、中性子線を利用して内部を可視化する方式である。X線は空港での手荷物検査に使われていることは多くの人が知っているが、これは銃・刀剣など原子番号の大きい金属類の検査を目的としており、軽元素が主成分である薬物・爆薬などに対しては適用が困難であった。最近になって軽元素がX線を強く散乱する性質を利用した後方散乱法による画像化の手法が開発されて、従来では困難であった薬物や爆薬を画像化することが可能となった。この原理を応用した検査機材はすでに現場で使用されているとのことである。また、物質のX線の波長によって吸収が異なることを利用して、異なる波長のX線を利用した構成元素の違いによる弁別法も可能である。データベース化して特定の危険物質に対して警戒色などで表示して視認できる装置もすでに開発されているとのことである。その他、三次元画像化や低線量のX線を人に照射して所持品の検査を行うことも出来るようになってきた。X線ほど手軽に利用出来ないが、中性子を用いると検査法として独特の有利さがある。爆薬の検査としてその窒素含有量が一般の物質に比して高濃度であることに着目し、熱中性子による窒素原子の14(n,γ)15N核反応に伴う10.8MeV即発γ線を検知して荷物中の窒素含有量の高い部分を検出する手法が開発中である。パルス中性子を用いると酸素、炭素、窒素の元素分析が行えるので、γ線スペクトルの解析から物質中のそれら元素の相対比が求まり、物質の特定が可能であるが、この方法では結果的に食物などへの中性子照射も不可避なため、米国では照射食材への安全性についても検討が行われている。その他の探知法として蒸気や微粒子を探知する方法がある。ただし実験室内では高性能分析機器を使用することが可能であるが、実際の現場では軽量、簡便、迅速であることが要求されるので、適用出来る原理は限られる。現在使用されているのは、薬物などから微量に発生する蒸気を捕集分析探知する方法である。この方法はイオンモビリティスペクトルメーター(IMS)と呼ばれ、捕集分子を63Niなどのベータ線源でイオン化し、その移動度の測定結果から同定を行う。混合物の状態でも移動度の異なる複数の分子の検出同定が可能で、しかも1試料あたり30秒程度の測定時間で行える。一般に爆薬は陰イオン、薬物は陽イオンで検出する。ダイナマイトなどの爆薬に対してはニトロ化合物に感度が高く、炭化水素などの有機化合物に反応しないという特色を生かして電子捕獲検出器が使用される。我が国に比して爆薬を用いた犯罪の多い欧米では爆薬探知機材について長年にわたる研究が行われている。

本研究会の開催にあたっては「大阪コミュニティ財団・柏岡精三記念基金」の助成をいただいたことを記して感謝の意を表したい。

(大嶋記)

 

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