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21回放射線科学研究会聴講記

開催 平成15919日 於住友クラブ

今回は「さまざまな放射線が物質にもたらすエキゾティックな照射効果」をテーマに4人の講師に講演していただいた。

 

1.宇宙塵(ダスト)の計測と加速器(会員ページ )

京都大学大学院工学研究科 柴田裕美

恒常的に地球上へ降り注いでいる地球圏外からの宇宙塵を回収し、それらの解析から生命の誕生と進化をさぐるという研究の紹介から始まって、現在世界各地の加速器施設を利用して行われている様々な粒子、クラスターを標的に照射する実験について講演された。宇宙時代に入り、人工衛星やスペースラボにおける高速宇宙塵の衝突は看過しえない課題であり、この観点からもこの実験は模擬実験として極めて重要な研究である。現在、世界で知られている主な微粒子加速施設は我が国の5施設を含めて10施設あり、宇宙科学用、材料科学用に分けられる。

講演では微粒子への帯電機構、加速機構の説明と加速微粒子のサイズと速度の関係およびサイズと電荷との実験例も紹介された。さらに、実際の宇宙塵の解析用に衛星に搭載可能な飛行時間型質量分析器の開発に関して詳細な説明がなされた。

また、標的物質と衝突物質の種類によって、衝突物質が飛び散ったり、標的物質にそのままめり込んでしまう例が紹介され、詳細な機構は不明であるが、大変興味深く聞かせていただいた。

 

2.クラスターイオンビームの非線形照射効果(会員ページ )

姫路工業大学高度産業科学研究所 山田 公

原子数が数100から数1000のクラスターイオンを固体表面に照射した際の多体効果に伴う非線形効果を応用して講演者が現在進めている「クラスターイオンビーム・プロセステクノロジー」、「次世代量子ビーム利用ナノ加工プロセス技術開発」について詳細な紹介があった。講演者が研究を開始した1980年代にはクラスタービームの発生について疑問視する声もあったが、1990年初頭にはガスクラスタービームの発生に成功し、その後の着実な進展の過程の話は印象深いものがあった。クラスタービームの応用により、従来困難であった多結晶ダイアモンドの表面加工や磁性材料、半導体材料の改質や量子ドットの作製などが可能となった。

 

 

3.細胞をシングルイオン照射したときに何が起こるか(会員ページ )

日本原子力研究所高崎研究所 小林泰彦

 

日本原子力研究所が開発した重イオンマイクロビームを標的細胞の特定部位に照射した際の直接照射効果とバイスタンダー効果を区別して解析する研究が紹介された。

低線量の放射線照射による生体への影響は従来は高線量の照射効果を低線量側へ外挿することによってなされてきたが、その正当性については直接的な証明はなされていない。現実に稀に生ずると考えられる宇宙線などの生体細胞へのヒットの効果を調べることは極めて重要である。この講演では原研高崎研究所に構築された重イオンマイクロビーム細胞照射システムが紹介され、それを用いて行われたいくつかの研究成果について講演された。

 

4.SPring-8における風変わりな研究(会員ページ )

兵庫県立先端科学技術支援センター 千川純一

SPring-8で行われてきた膨大な研究の中で、講演者がかかわった少し風変わりな研究の紹介がなされた。乳ガン患者の毛髪のX線回折パターンには健康な人にはみられないリングパターンが現れるという欧米では大きな反響を呼んだオーストリアの研究者の報告は、追試の結果健康な人でも現れる場合があり、ガンとの相関は低いという結論になったこと、さらに調べると乳ガン患者の毛髪はカルシウム濃度が高いという相関性があることから、SPring-8での追試の結果では乳ガン患者のX線のリングパターンと毛髪中のカルシウムと臭素濃度量に関係があることが確認されたとの内容は医療と科学という視点から興味深いものであった。

SPring-8ではその他の悪性腫瘍の患者の毛髪について腫瘍の種類と毛髪中の含有元素種、濃度との関係を調査する研究が進められているという紹介があった。また、ニュートンの万有引力の物体と物体が空間を介して作用するという考えは当時としてはマユツバものであり、またニュートンが錬金術に大きな関心をもっていたことを引用され、一見マユツバに見えるような研究でも背景には大事な真実が隠れている可能性があるとの指摘は示唆に富むものであった。                             (大嶋)

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