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大阪大学「レーザーエネルギー学研究センター」見学記

 夏の暑さが体感されるようになった平成26年7月4日午後、会員11名が阪急電車・北千里駅に集合し、タクシー3台に分乗して、大阪大学「レーザーエネルギー学研究センタ」を見学のために訪れた。同研究センターへの見学は、今回が二度目である。前回は19年前平成7年に「レーザー核融合研究センタ」と称していた時代に見学させて頂いた。研究センターの名称変更の経過からも分かるように、同研究センターはレーザー核融合研究を出発点として、現在では大強度レーザー関連研究を集約していることがわかる。

 広大な緑に囲まれた大阪大学吹田キャンパスのほぼ中央の「レーザーエネルギー学研究センタ」で、乗松孝好教授の出迎えを受け、まずおよそ1時間、研究センターの紹介DVDの上映と乗松教授のご専門の核融合関連のご講演を拝聴した。その内容は乗松教授のご好意でONSA HPに掲載しましたのでご参照ください。

その概略を同センターhttp://www.ile.osaka-u.ac.jp/jp/index.htmlHPからも引用させて頂き、以下に記載します。

「熱い冬」「燃える夏」という言葉が生まれるほど、地球温暖化の影響を体で感じるようになってきた。夏には多くの方が熱中症で亡くなるという事態も起き、まさに地球温暖化対策は待ったなしとなっている。

 

 

 

      写真1 見学の様子

 

「核融合」は、温暖化ガスを排出せず、なおかつ放射性廃棄物の排出量が従来の「核分裂」原子力にくらべて圧倒的に少ないことから、多くの人が究極のエネルギー源として

期待を寄せている。この期待に応えるべく、磁場閉じ込め

の原理に基づく国際熱核融合実験炉ITERInternational Thermonuclear Experimental Reactor)の建設がフランスで始まった。一方、原理も技術も全く異なる大阪大学等が推進する「レーザー核融合」については、米国の国立点火施設NIFNational Ignition Facility)が完成し、人類初の制御された核融合点火実現を目指す実験が既に始まっている。     

                    

大阪大学が進めてきた「レーザー核融合」は、重水素や三重水素(トリチウム)をガラス等の小球に密閉して強力なレーザー光を照射し高温爆縮し、核融合反応を起こさせるものである。

大阪大学レーザーエネルギー学研究センターでは、過去30有余年の間、培ってきた学術・技術基盤に基づき、欧米が目指す計画の10分の1規模のコンパクトなレーザー核融合炉を目指した「高速点火実証実験FIREXFast Ignition Realization EXperiment)」計画を推進している。今後数年の間にNIF(米)による点火実証とFIREXによる高速点火原理的実証(日)が達成されれば、エネルギー開発に向けた動きが大きく加速されよう。

大阪大学におけるレーザー核融合の特徴を列記する。

1.核融合は「核分裂・原子炉」炉心溶融のような暴走の危険性はない。レ一ザ一核融合炉は緊急冷却装置も不要。

2.半減期の長い放射性廃棄物は圧倒的に少ない。

3.炉の中のトリチウムは壁の中に溶けているので、短時間に多量に放出されることは無い。

4.実現へは長い道のりが必要。磁場核融合は早くて今世紀末、レ一ザ一核融合は2050年ごろ。

5.燃料は重水素や三重水素(トリチウム)で海水中から無尽蔵に採取可能で、原価も低廉。

 核融合反応の原理と詳細を以下に示す。

重水素と三重水素が核融合反応を起こすと,中性子とヘリウムが生成され、その際に放出される莫大なエネルギーを利用する。重水素と三重水素はどちらもプラスの電荷を持ち、互いに反発しあうので,核融合反応が自発的に暴走することはない。また核融合反応の生成物は放射能を持たないが、中性子は物質を放射化する。

この核融合反応の条件(プラズマ温度:一億度以上、密度×反応時間:1014cm-3s以上)が厳しく、この条件を達成するためには、直径5mm以下の固体燃料ペレットに強力なレーザーを一様に照射して、固体密度の千倍以上に爆縮し、百億分の1秒以下の瞬時に核融合反応を起こさせる。これを継続させてエネルギーを取り出す。この爆縮には強力なレーザーが最適で大阪大学は開発を進めている。

 

 

 

 

 

 

写真2 LFEX(10kJペタワット)レーザー全景  

 

ただ、大阪大学レーザー核融合施設“ガラスレーザー激光Ⅻ”は、完成以来約31年を経過して、国からの予算処置も厳しく、大学内の研究予算をやりくりして運営しているとの苦しい現状を伺った。

ご講演後、レーザー核融合施設を見学した。

この施設はまだ爆縮条件等基礎実験中のため法律上は「核施設」でなく、放射性同位元素を使用する「RI施設」である。本施設がもし、「核施設」であったなら、全国の研究炉や発電炉が福島原子力発電所事故以来運転停止状態となっており、本施設も「核施設」として、「再稼働待ち」に陥るところであった。なお、磁場核融合の国際熱核融合実験炉ITERは「核施設」であるとのことであった。

施設内は見学通路からの写真撮影や質問は自由で、見学者に対して着替え・更衣も必要なく、開かれた研究施設との印象であった。

今後の研究発展を大いに期待したい。                    (藪下延樹 記)

  

写真3 大型レーザー装置・激光Ⅻ 炉心部全景                      写真4 未来のレーザー核融合発電炉模型

写真5 核融合プラズマの研究成果の例(パンフレット・「レーザーエネルギー学の世界」p12

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