T.放射線利用の経緯と現状 |
わが国の原子力平和利用の基本は、「安定なエネルギー源としての原子力エネルギー」および「基礎科学や産業基盤技術を高める放射線利用」です。この「放射線利用」では、1950年代から、大学をはじめ、国や地方自治体において放射線利用研究施設が次々と設置され、実用化を目指した研究開発と企業による放射線の産業利用が急速に進展しました。 現在では、日常生活に欠かせない身近な日用品にも広く放射線が利用されています。2015年度の内閣府の調査では、放射線利用の経済規模は年間4兆3700億円とされ、半導体加工、放射線滅菌、計測・検査、ラジアルタイヤの製造などの工業利用が51%、治療・診断などの医療・医学利用が44%、食品照射、放射能分析などの農業利用が5%となっています。また高度な放射線利用技術の開発が、基礎科学の発展に貢献し、新しい工業利用や医療・診断法の開発につながっています。このように放射線利用技術は、日本経済の発展を支えてきた科学技術において重要な基盤としての役割を担っています。 |
U.協会設立から現在まで |
放射線利用への意識の高まりを受け、関西では1959年に大阪府立放射線中央研究所(大放研)が設立され、この大型放射線研究施設は、民間でも、また広く全国で利用されるようになりました。その後産業界では、より高度な放射線利用技術の開発や他の科学技術分野との連携強化など、社会の進歩に適応した技術革新が必要になりました。そこで、この研究所を活用して産官共同の研究開発へ新たな関係を構築し、学術の振興と産業の発展を図ろうとしました。これらを円滑に推進するための組織として、大阪府と関係企業は、1984年に大阪ニュークリアサイエンス協会(ONSA)を設立し、この協会は、1988年4月に非営利目的の社団法人として大阪府に認可されました。一方大放研は、1990年に大阪府立大学に統合され、大学は、2005年4月の法人化で公立大学法人大阪府立大学となりましたが、放射線施設および管理・運用組織(現在、研究推進機構放射線研究センター)と開かれた利用形態は維持されてきました。ONSAは、2013年4月に国の新公益法人制度改革で「一般社団法人」となり、活動の基本は変わらず、科学技術の進展に対応しています。 (別添資料参照) |
V.協会の活動の目的 |
ONSAは、放射線利用技術の向上と産業の振興を図ることを目的としています。産業界では既にさまざまな分野で放射線利用が定着していますが、自ら新たな放射線利用分野を開拓することは困難です。そこで先端科学技術に関する研究開発において産学官連携の橋渡しをすることがONSAの重要な使命です。ONSAは、大阪府立大学の放射線施設の効率的な利用を図り、大学の放射線関連研究分野や他の学術研究機関とも関係を深めて、共同研究・委託研究などの産学官連携をサポートします。また、放射線の有用性の紹介や技術相談などにも応じ、放射線科学について一般社会への知識普及活動も行っています。ONSAの会員構成は、大学から多業種の民間企業まで多岐に亘り、広範かつ多様な技術情報の把握と活用が求められます。会員相互の協力のもとに学術・技術情報の収集・提供を行い、放射線利用に関する技術支援を積極的に行っています。 |
{別添資料} ◎協会設立に至る経緯およびその後の変遷
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2019年4月:大阪府立大学と大阪市立大学の法人統合で、公立大学法人大阪発足。 |