1.夏季の放射性セシウム再飛散−バイオエアロゾルの役割
京都大学複合原子力科学研究所 教授 五十嵐康人
福島第一原発事故による放射性物質の大気環境影響評価のため、同県内の汚染地域で放射性Csの大気中濃度を観測してきた。その結果、事故後一定期間を経て大気中濃度の低下は緩やかとなり、季節変動を呈する濃度変化が観測されるようになった。汚染した地表面から何らかのエアロゾルが発生し、担われた放射性Csが大気へ再浮遊していると考えられる。その正体究明の結果、従来想定されなかったバイオエアロゾルが、夏季に大量に浮遊しCsを運んでいることがわかってきた。
2. 放射線DNA修復学と低線量放射線影響
京都大学大学院生命科学研究科 特任教授 小松賢志
近年の放射線関連遺伝子のクローニングは、放射線生物学に飛躍的な発展をもたらした。この結果、放射線のターゲットはDNA二重鎖切断であり、その修復には誤りの少ない相同組換え修復と誤りの多い非相同末端再結合の二種類があることがわかった。しかも両者の比率が細胞や照射条件で変化することが、放射線生物効果を一層複雑にしているように見える。講演では、DNA修復学の立場から低線量放射線影響について考えてみる。
3.[ONSA賞受賞記念講演]
新規材料開発への放射線利用の開拓推進-金属材料改質合成と高速陽電子装置開発-
大阪府立大学大学院工学研究科 准教授 堀 史説
放射線と材料科学の関係は、以前はX線や電子顕微鏡などの評価法利用と原子力や宇宙環境等での照射劣化に関連するものが大半であった。近年、物質と放射線の相互作用を積極的に利用して、材料への特性制御や機能性付与、液体中での放射線還元による新機能材料も作成されるようになってきた。また評価法でも高速陽電子など新しい放射線利用形態を進めている。これら材料科学への放射線の新展開について紹介する。
4.「一家に1枚周期表」に込めた思い
豊田理化学研究所 所長 玉尾皓平
人類の知の集積・至宝、そして科学者たちの知の源泉としての周期表。元素の発見・単離に取り組んできた科学者たち、そして元素の性質を解明し、少量であっても「未来物質」を創って人類社会に貢献してきた科学者・技術者たちへの尊敬・感謝の念をもつと共に、地球上の有限な元素資源の活用は科学技術で解決すべきことなどを伝えたい。
5.スーパーカミオカンデによるニュートリノ研究の最前線
東京大学宇宙線研究所 教授 中畑雅行
岐阜県神岡鉱山に建設されたスーパーカミオカンデ(SK)は、大気中で宇宙線が作るニュートリノや太陽でうまれるニュートリノを使ってニュートリノが質量を持つことを発見した。その後も加速器ニュートリノを使った研究も進めており、また、超新星爆発からのニュートリノ観測も目指している。SKによるニュートリノ研究の最前線を紹介する。
6.宇宙用太陽電池の放射線劣化予測と照射試験の重要性
宇宙航空研究開発機構研究開発部門 研究領域主幹 今泉
充
太陽電池を宇宙機に適用する場合、電源システムの設計上、そのミッション期間中に曝される放射線による出力劣化を予測することが必要である。このためには、放射線環境予測および太陽電池の耐放射線性確認試験が必要となる。本講演では、これらの実例および実際の劣化予測法について概説するほか、最新の宇宙用太陽電池および最近の動向に関する情報を交えて紹介する。
7.産業用X線CTのしくみと検査・測定,定量化の現状
東芝ITコントロールシステム株式会社 シニアエキスパート 富澤雅美
X線CTは、病院では診断に、産業用では壊さずに内部を検査する非破壊検査に主に利用されている。検査対象各部のX線の透過しにくさを表す線減弱係数を画素値とする立体画像から、形状、および、元素組成・密度に関する情報を得られる。近年CT像の画質と精度の向上に伴い、産業用では「検査用」に加えて「計測用」としての利用が増えつつある。本講演では、産業用X線CTのしくみと検査・測定できること、定量化の現状を紹介したい。
8.放射線・原子力関連大学の現状とこれから
大阪府立大学研究推進機構 教授 松浦寛人
放射線・原子力は21世紀の社会を支える基盤技術としての役割を期待されており、大学にはその為の正しい知識と安全取り扱い技術を習得した人材の教育が求められる。しかしながら、その教育に必要な放射線施設の維持管理は、大学法人化以降の評価政策では十分に評価されていない。講演では、大阪府立大学等の放射線施設の現状と、これからの施設の維持と活用を目指した大学間の連携事業の概要について紹介する。
閉会挨拶 大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター長 谷口良一
後 援:
文部科学省 経済産業省近畿経済産業局 (国研)日本原子力研究開発機構
(国研)量子科学研究開発機構
大阪商工会議所 堺商工会議所 (一財)大阪科学技術センター
(一財)電子科学研究所
協 賛:
(一社)日本物理学会 (公社)日本化学会 (公社)応用物理学会 (一社)電気学会 (公社)高分子学会
(公社)日本分析化学会 (一社)日本原子力学会 (公社)日本医学放射線学会 (一社)日本非破壊検査協会
(公社)日本放射線技術学会 (公社)日本アイソトープ協会 (一社)近畿化学協会 (一社)大阪府技術協会
(公社)大阪府診療放射線技師会 (一財)放射線利用振興協会 日本放射線化学会 日本放射光学会
日本放射線影響学会 (一社)日本保健物理学会 (一社)日本接着学会 (公社)日本表面真空科学会
(一社)日本核医学会 日本バイオマテリアル学会 日本防菌防黴学会 日本陽電子科学会 関西原子力懇談会
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講演会終了後、新年交流会を同所・サロンにて開催します。ONSA会員、理事、および参与の方は会費無料。
上記以外の方は参加費3,000円を頂戴いたします。是非、奮ってご参加ください。
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