1.[ONSA賞奨励賞(基礎研究部門)受賞講演]
粒子線照射が誘起する固相重合反応を活用した機能性ナノワイヤの開拓と粒子線の飛跡検出
― 1個の粒子が引き起こす化学反応 ―
京都大学 大学院工学研究科 助教 櫻井庸明
加速器で加速された高エネルギー荷電粒子を有機材料薄膜に垂直照射すると、荷電粒子は薄膜表面から侵入し支持基板まで到達する。この飛跡に沿ってエネルギーが材料に付与され、重合や架橋を主とした化学反応が引き起こされる。材料薄膜のうち粒子の未照射部位のみを有機溶媒に溶出あるいは昇華させることで、反応後の重合物のみをナノワイヤとして得ることが可能である。このナノワイヤの性質や機能について最近の試みを紹介する。
2.[ONSA賞(応用研究・開発部門)受賞講演]
イオンビーム照射レジストの除去技術の確立とレジスト材料の開発
― 放射光を利用した感光性樹脂(レジスト)の開発 ―
大阪市立大学
大学院工学研究科 教授 堀邊英夫
半導体、液晶デバイスの高密度化は著しい速度で進んでおり、より微細なパターンを短時間で加工するには、高解像度・高感度の感光性樹脂(レジスト)の開発が重要である。具体的には、EUV用3成分レジストの開発について報告する。
また、デバイス製造ではレジスト除去工程に有害な薬液が使われており、これを、酸化力の強いオゾンや還元力の強い水素ラジカルを用いることにより、環境にやさしい安全で安心なレジスト除去プロセスを開発しており、このことについて報告する。
3.日本の電力事情
―再稼働原発の安全性と安定したエネルギー源を考える―
(株)原子力安全システム研究所
顧問 岸田哲二
地下資源がなく全て輸入に依っている日本人が、世界のトップレベルの生活を享受できるのは物やサービスを生産する高度な産業を維持しているからである。それを支えるに必要不可欠な要素の一つは電力である。現時点のことは云うに及ばず将来にわたり安定した電力を確保することが極めて重要である。 本講演では最近の電力事情と問題点を整理するとともに、解決策の一つが原発利用の促進であり、そのための前提となる安全性が飛躍的に向上している現状について述べる。
4.未来のエネルギー源
核融合炉研究開発の現状と将来展望
自然科学研究機構 核融合科学研究所 副所長・教授 室賀健夫
核融合炉は、核分裂炉とは異なり、軽い原子核同士の融合反応によって生じるエネルギーを用いるシステムであり、原理的に核暴走が無く、高レベル廃棄物を生じない、という安全上の優れた特徴を有する。
本講演では、重水素(D)と三重水素(トリチウム、T)反応を利用した磁場閉じ込め核融合炉に関して、高温プラズマの閉じ込め研究、及び耐照射性材料開発など炉開発に必要な工学研究、について現状と将来展望を報告する。
5.教科書の原子力・放射線等関連記述に関する原子力学会の調査と提言
九州大学 名誉教授 工藤和彦
原子力学会では平成8年から中学校・高等学校の理科、社会科の教科書におけるエネルギー・環境・原子力・放射線に関連した記述を調査し、誤った記述や誤解を与えると思われる記述などの抽出を行い、調査結果とともに改善に係る提言書(これまでに10冊)を作成し、文部科学省、教育界・学会、教科書会社等に提出してきた。
文科省は平成20年に中学校、同21年に高等学校の新学習指導要領を公表し、現在これに基づいた検定済みの教科書が全国の中・高校で使用されている。これらの中学校の社会(歴史的分野、公民的分野)、理科、保健体育、技術・家庭、および高等学校の地理歴史科、公民科、理科(科学と人間生活、物理、化学、生物、地学)の教科書について、上記に関連した調査をおこなった結果を報告する。
6.7万枚の縞を数える ― もっとも正確な地質学の時計 ―
立命館大学 古気候学研究センター
センター長・教授 中川毅
地質学は、通常の時計では測ることのできない長大な時間を対象にしている。何万年もの時間を正確に測るには、いったいどうすればいいのだろう。長さのメートル、重さのキログラムなど、人間が測定するすべての量には定義が存在する。そして精密なノギスが近代工業に不可欠であるように、地質学の時間も精密な定義を必要としている。
過去5万年の時間の正確な定義を追い求めた、20年におよぶ研究プロジェクトの歴史を振り返る。
7.ビッグバン宇宙創生のインフレーション理論 ―
観測的実証への期待 ―
(独)日本学術振興会 学術システム研究センター 所長 佐藤勝彦
この疑問は私たち人類の歴史が始まったころからの問いかけである。世界のいろんな民族が創世神話をもっているように、かつてこれに答えるのは宗教であった。20世紀となって天文学的に私たちの宇宙は今、風船が膨らむように膨張していることが発見された。これは時間を遡れば宇宙には始まりがあったことを示している。アインシュタインの相対性理論を始めとする物理学の進歩によって、宇宙は「無」の状態から生まれインフレーションと呼ばれる急激な膨張の後、火の玉宇宙(ビッグバン)として宇宙は生まれた(ビッグバン)と考えられている。
近年数多くの人工衛星の観測や巨大望遠鏡の観測によって宇宙創生の理論が裏付けられつつある。ここでは宇宙論の研究の歴史を振り返りながら、インフレーション理論や最新の観測成果、また新たな重力波を用いた観測計画など紹介する。
閉会挨拶 大阪府立大学 研究推進機構 放射線研究センター長 谷口良一
後 援:
文部科学省 経済産業省近畿経済産業局 (国研)日本原子力研究開発機構
(国研)量子科学研究開発機構
大阪商工会議所 堺商工会議所 (一財)大阪科学技術センター
(一財)電子科学研究所
協 賛:
(一社)日本物理学会 (公社)日本化学会 (公社)応用物理学会 (一社)電気学会 (公社)高分子学会
(公社)日本分析化学会 (一社)日本原子力学会 (公社)日本医学放射線学会 (一社)日本非破壊検査協会
(公社)日本放射線技術学会 (公社)日本アイソトープ協会 (一社)近畿化学協会 (一社)大阪府技術協会
(公社)大阪府診療放射線技師会 (一財)放射線利用振興協会 日本放射線化学会 日本放射光学会
日本放射線影響学会 (一社)日本保健物理学会 (一社)日本接着学会 (公社)日本表面科学会
(一社)日本核医学会 日本バイオマテリアル学会 日本防菌防黴学会 日本陽電子科学会 関西原子力懇談会
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講演会終了後、新年交流会を同所・サロンにて開催します。ONSA会員、理事、および参与の方は会費無料、是非ご参加ください。上記以外の方は参加費3,000円を頂戴いたします。是非、奮ってご参加ください。
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