6.『放射線教育に関する国際シンポジウム』からの知見(51・52・53・54) |
昨年12月に開催された「放射線教育に関する国際シンポジウム」では,国内からの多分野の参加者や海外14か国(フランス,アメリカ,ハンガリー,ポーランド,イタリー,トルコ,パキスタン,インド,バングラデシュ,インドネシア,フィリピン,タイ,台湾,中国,韓国)からの専門家を交えて総数165名(うち学校教員は37名)の参加者があり,有益な情報交換が行なわれた。ここで,著名な専門家によるいくつかの招待講演に始まり、2つのトピカルセッション「低レベルの放射線の影響をいかに理解し教えるか」「一般社会への放射線・核問題教育」で依頼講演と討論があり、また「諸国における放射線教育の現状」と題するパネル・デイスカッションがあった。ここでは,日本を含む各国を代表する13名がそれぞれの国における現状と,どのような取り組みがおこなわれているかについて発表を行った。また、3つのワークショップ「放射線教育カリキュラム」「放射線教育のための実験および演示」「リスク教育および社会教育」があった。一般参加者からのポスターセッションによる発表もあった。以下,発表された内容から,放射線教育について各国に共通の認識あるいは問題点およびわが国が学ぶべき実例などについて紹介する(53)。 6.1.各国共通の認識あるいは解決すべき問題点 どの国も「一般人の大多数が放射線・放射能は(少量でも)危険なものと考えている」「低レベルの放射線影響に問する新しい考え方を普及させるべき」「核・放射線という言葉はマイナスのイメージ」「チェルノプイリ事故の影響が大きい」「原爆の破壊力は放射線によるものと考えられている」「原爆と原子力の平和利用を混同する」「ジャーナリストやテレビのコメンテーターは原子力問題を解説するよりもセンセーショナルに取り上げる傾向がある」「放射線教育の重要性は充分に認識する(だが多くの国では現実はあまり行われていない) 」「実地に天然の放射線の存在を知らせることが教育に有効」「放射線の単位のわかりにくさ,桁数の大きい数値が障害となっている」などがほぽ共通の認識あるいは解決すべき問題点であった。 また,正しい科学的事実についての放射線の知識に問する教育が,できるだけバイヤスのかかった情報が人ってこない若年のうちに学校において行なわれる必要のあることが,何人かの主な講演者から強い説得力を持って報告され,これはこのシンポジウムでのひとつの重要な結論ともいえる収穫であった55・56・57・58)。 6.2.わが国が学ぶべき実例(59) ハンガリーでは,1984年から高校で必修科目として核物理が課せられ,放射線防護の知識が与えられている。その方法は"原子力エネルギー・原子炉が図を用いて交流回路よりも易しく,放射線影響についてはエイズよりわかりやすく" 教えられている。また高校生全員にGMカウンターの測定を実習させ,飛跡検出器で小学生に自分の寝室のラドン濃度を測定するプロジェクトを発足させ,それをここの高校生が手伝ってやって,1984年5月現在で15,000人もの小学生が放射線測定をしたとのことである。したがってこの国は市民の放射線リテラシーが高く,チェルノプイリ事故後ヨーロッパ諸国では妊娠していた女性が放射線の影響を恐れて人工中絶が多く行われたにもかかわらずハンガリーでは皆無であったこと(17)もうなづけることである。 |