放射線安全規制の大改正前に現場で思うこと 自治医科大学 菊地 透 1.はじめに 放射線・RIは、人類にとって不可欠な存在として利用しており、放射線安全管理は、放射線から人の安全を守ることであり、放射線安全規制の役割は重要である。法規制の改正は、既に規制を受けている場合は、相当の負担を要する内容や実行困離な規制、あるいは効果的な安全管理が期待出来ない事項は、放射線安全体系の形骸化を招くおそれがある。また、通常期待される努カの範囲内で遵守することが不可能、あるいは相当困難が予想される事項、とくに新たに規制対象を受ける場合は、その施設の従事者や国民に深刻な放射線障害の可能性がある場合は、早急に規制すべきである。しかし、放射線障害の可能性が無視できるなど、正当な理由がない場合は、社会情勢を混乱させる原因となるため、慎重な対応が必要である。 3)指定法人業務と規制代行業務 規制対象の大幅な増加に伴い、規制関係業務を国以外の機関が業務を代行するための指定法人は、遠切な人材配置と効率的な活用が整備されれぱ有効である。しかし、これらの規制代行業務に掛かる経費負担が、現場に新たな経費として増加しない工夫が必要てある。 4)移動使用の合理化 現行規制の移動使用は、一時的な使用を想定しているが、恒常的に移動使用する場合について、利用実態に対応した合理的な規制が必要である。 5)医療分野の規制 臨床治験、臨床研究の目的で使用する放射性医薬品は医療法、薬事法、防止法などの多重規制のため、医療機関で同じ行為を行う場合であっても、規制対象が異なり混乱がある。また、PETで使用する放射性物質は、院内製造の場合は、薬事法の適用を受けずに防止法の適用を受け、製薬メーカで製造する場合は、薬事法の適用を受ける。また、超短半滅期の放射性廃棄物を一定期間(1週間)以上保管した場合は放射性廃棄物から除外することに関して、既に4核種については具体的に進んでいるが、動物への利用など同様な考え方を取り入れことが合理的である。なお、125−I等の永久挿入線源として、医療用具の協議を得て、防止法から除外されており、医療技術の進展により、今後も適時協議が必要である。 6)放射線発生装置の管理 管理区域の一時的な解除は、装置電源が切った状態で、放射化による被ぱくが無視できる場合に適用可能である。とくに医療機関では、放射化の影響が無視できる直親加速装置(リニアック)が有効である。なお、報告書に6MeV未満と記載されているが「以下」とすべきであり、8Mev以下でもほとんど放射化物の影響は無視できると考える。放射化物の取扱いと保管に関して、管理区域内にその場所を確保する場合は、線量率レベルや表面汚染レベルに対応した発生装置の規模別の管理が必要である。また、発生装置を使用する前から予防規定や主任者の選任は、事業所の組織が事前に整備されている必要があり、形式的な状況が懸念される。 7)放射性廃棄物の管理 クリアランスレベルを早急に検討すべきである。放射性廃棄物から除外した物は、再利用に適さない物であれぱ「廃棄物およぴ清掃に関する法律」や、有用物として再利用する物であれぱ「循環型社会形成推進基本法」で、処理できることが重要である。また、低レベル放射性廃棄物は地中埋没処分などが合理的ある。 8)新法令の遡及と国民への理解 不要な線源回収の広報と経費の対応については、新法令施行前から数年間以上の遡及期間が必要である。また、法令改正に伴う届出や許可申請などの迅速化と簡便化による申請手続きの負担軽減が必要である。とくに許可等の手続きの迅速化・簡素化等を目指した「申請負担軽滅対策」(1997年2月10日閣議決定)があり、許可等に関して透明性と公正の確保等が重要と考える。また、国民への理解において、新規制が国民への安全・安心となる科学的根拠ある説明を、多くの国民に周知するためには、解り易くする工夫が重要である。 6.おわりに 21世紀初頭の大幅な放射線安全規制の改正を前に、国民から継続した安全と信頼を得ることが大切である。しかし、法規制と現場とは常に大きなギャッブがあり、時には不合理な規制を強いることで、有限な資源の浪費や無駄な負担も少なくない。そのためには、社会状況や現場などに合理的に対応して、不要な効果が期待できない規制は絶えず、見直し改正することが不可欠と考える。今回の規制改正が合理化およぴ規制緩和として、有限な資源を浪費することなく、より安全性の高い合理的な安全規制を国民に提供することを要望する。 |