V章 マウスを用いた放射線影響の研究 U・3 放射線による生殖細胞の突然変異 U・3・3精原細胞の核分裂中性子による突然変異7; 図U‐10の実験結果をえたのと同様の照射方法で、Xまたはγ線のかわりに、核分裂中性子を照射した場合の実験結果をつぎに述べる。オークリッジ国立研究所の保健物理部では,研究用に操の原予炉を作成して、核分裂中性子を用いた客種の実験を行った。この一環として、W.L.Russell は、オスのマウスに核分裂中性子を照射して、検定用メスのマウスと交配し、その仔マウスの特走遺伝子座の突然変異を調べた。実験結果を表U‐3に示す。 ![]() 表U‐3核分裂中性子を照射したマウスの精原細胞における特定遺伝子座の突然変異頻度 7) 表U‐3の核分裂中性子の最高線量率79cGy発頻度は分裂中性子の線量率に依存しない(表U‐3)と解釈できる。これに比べて、γ線やx線による遺伝子の傷はDNA上にとぴとびにできるので、低線量率のときは、はじめにできた傷が修復してしまったあとに、つぎの傷ができることになって、高い線量率の傷より、遺伝子の傷の修復効率が向上し、低線量率では誘発変異頻度が3分のlに低下するものと思われる。 上述の解釈が正しいなら、突然変異誘発に関して、核分裂中性子はX‐γ線に比べ大きい相対的生物効果比RBEを持っているはずである。図U‐10と表U‐3から「1遺伝子当り・lGy当りの誘発変異率」mを計算し、核分裂中性子のm値とX‐γ線のm値との比からRBEを求めると表U‐4のようになる。高線量率の場合、核分裂中性子のRBEは5で、マウス致死効果に対するRBEの値4.5(図I‐11)にほとんど等しい。 ![]() 表U‐4核分裂中性子のマウス精原細胞変異誘発率に関するRBE *:自然変異頻度0.8×10-5を遺伝子当りの変異頻度の値から減じた値。 **:すぐ左隣の欄の数値の比 13.1/2.6 または 15.8/0.72 より計算。核分裂中性子に付随しているγ線の寄与を無視したので、RBEはやや過少の数値になっている。 表U‐4によれば、低線量率照射の場合、核分裂中性子のRBEが22という大きい値になる。これは、核分裂中性子の生物効果(m値)が大きくなるからではなくて、γ線の生物効果m値が小さくなる(γ線による遺伝子の傷がなおる証拠)からである。 |