V章 マウスを用いた放射線影響の研究

U・2・3トリチウム水を飲み続けた場合の寿命への影響 5)
 トリチウム濃度が1.9×1010Bq/m3 以上の水をマウスに毎日飲ませ続けると、トリチウムの濃度が高いときは、骨ずい死が起って50日以内に死亡して(図U・6)、腫瘍が発生するひまがない。骨ずい死が起らないぎりぎりの高濃度のトリチウム水(9×109Bq/dm3 )を飲ませ続けると、死亡までの平均生存日数は170日で、64%にリンパ腫が発生して死ぬ(図U・7の右端の黒丸参照)。生存日数が少ないので、他の腫瘍は発生しない。これよりトリチウムの濃度が 1/10に滅って9x108Bq/dm3 になると、胸腺リンパ腫の頻度は7%に滅る(図U・7の右から4番目の黒丸)。このときのマウスの平均生存日数は480日1日である。
         

  図U・8トリチウム水を毎日飲み続けたマウスの累積死亡率とトリチウム摂取開始後の日数の関係
(Yamamoto,o. et.al :Int.J.Radiat.Biol.73:535-541 1998,より改写)5)
1:240mGy/日,2:96mGy/日,3:48mGy/日,4:24mGy/日,5:9.6mGy/日,
6:3.6mGy/日,7:0.9mGy/日,8:0.2mGy/日,9:0mGy/日.


 図U・8の曲線9は、正常の水を与えられた対照のマウス群である。累積死亡50%到達日数は、他のマウス群がトリチウム摂取を開始した日と同じ日から計算して、794日である。曲線8と曲線9を詳細に比較すると、累積死亡50%の点では、被ばくマウスがわずかに長寿であるが、累積死亡率がもっと大きい領域になると、対照マウスのほうがわずかに長寿の傾向をしめす。しかし、統計的には、実験開始後の同一日数の各点で、曲線8のマウスの累積死亡率と曲線9のマウスの累積死亡率の間に、有意の差はない(図U・8の縦棒参照)。すなわち、一日被ばく線量率が0.2mGyのβ線は、毎日・生涯浴びてもマウスの寿命を短縮させないしきい値である。
 寿命は健康の指標としてはもっとも総括的であるから、つぎの結論を支持する有力な証拠がえられたことになる。“線量0.2mGy の放射線は、毎日一生あぴても健康に無害である。”





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