エネルギー・環境・福祉問題の解決を目指して

大阪大学大学院工学研究科・原子力工学専攻・西嶋研究室

 教授・西嶋茂宏、 助教授・泉佳伸、 講師・江間喜美子

 

原子力工学で培った量子線照射効果や磁場などの非電離放射線技術を用いて、エネルギー・環境・福祉問題を解決し、QOL(Quality of Life)を向上させることを目指しています。研究テーマとしては “エネルギー開発のための超伝導技術の確立”、“環境保全・資源循環技術の構築”、“福祉工学用ソフトマテリアルの開発”を行っています。実際の社会に役に立つ技術の確立である応用研究と、理論的バックボーンを形成する基礎研究を両立させて進めていきたいと考えておりますので、皆様のご協力をお願いします。

 

1.   超伝導エネルギー工学

―超伝導磁石の安定性―

磁場閉じ込め型核融合炉では超伝導磁石の安定性は必須です。超伝導磁石は超伝導素線がよじられて、四角いパイプに封入され、その隙間を液体ヘリウムが流れる構造になっています。磁石の中で発生した擾乱を熱として素早く放出することが磁石の安定性にとって重要です。擾乱や熱の発生する状況を計算機シミュレーションで明らかにしています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2. 環境保全・資源循環技術

―磁気分離による環境保全・資源有効利用―

非電離放射線である磁場を高度に利用すると環境保全や資源循環に利用することができます。強磁場の中に、細い磁性線を入れると、その近くに大きな磁場勾配を作ることができます。この磁場勾配を利用するといろいろな物を分離することができます。この手法を高勾配磁気分離といいます。化学薬品処理とは異なるために処理物質の再資源化が容易です。さらに被分離物質に磁性物質を吸着させる方法(担磁法)の開発により適用範囲が広がりました。生物や生体物質にも応用できるようになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図2 高勾配磁気分離システム例

 

 

 

 

 

 

 

 

 


図3 アオコの磁気分離

 

 

3. 量子線プロセス工学

―福祉工学用ソフトマテリアルの開発―

ハイブリッド膜の温度応答変形

 
量子線(電子線、ガンマ線、紫外線、レーザー等)を縦横に利用して、福祉に役立つソフトマテリアルを開発します。主にゲル材料を考えており、ポリマーゲル、生体高分子ゲルの研究を行っています。ポリマーゲルは条件を変えると大きな体積変化を起こしますので、身に着けるアクチュエーターやパワーアシストへの応用、体内で自走する薬の運搬装置として期待できます。一方、生体高分子ゲルでは、人工皮膚・軟骨、生体補填材料への展開を考えています。