平成25年度第一回オンサ見学会報告

平成25年6月14日(金)

(大阪市環境局舞洲工場)

写真 1 大阪市環境局舞洲工場全景


今年度第一回見学会は平成25年6月14日(金)に大阪市環境局舞洲工場を見学しました。大阪市には廃棄物処理工場は10工場あるようですが、舞洲工場はそのユニークな外観から極めて目立つ存在です。阪神高速道路湾岸線を通ったことのある人なら、舞洲地区にテーマパークと見間違えるようなカラフルな2本の塔(煙突)があることに気づかれたと思います。その南側の一本のある工場が今回の訪問先です(写真 1)。

東日本大震災復興の妨げの一つが膨大な量の瓦礫処理とされています。1995年の阪神・淡路大震災を経験した筆者は、阪神間に長い間、山積みされていた想像を絶する瓦礫の山を今でも鮮明に覚えています。近年の阪神間の復興ぶりからはその面影は知る由もありませんが、東日本大震災の被害から一日でも早く立ち直るには瓦礫処理は喫緊の課題であることは容易に理解出来ます。東日本大震災では福島原発事故に伴う瓦礫の放射能汚染の問題があり、「絆」と言いつつ原発事故の影響を殆ど受けていない瓦礫すらその処理を受け入れる自治体が限られました。そのような中で大阪府は東北からの瓦礫を受け入れることを表明し、紆余曲折はありましたが、周到な予備調査の結果、岩手県からの瓦礫焼却が今年の2月に当舞洲工場でスタートしました。

JRゆめ咲線桜島駅に集合後、舞洲地区へのアクセスである舞洲アクティブバスに乗車し、此花大橋を渡って最初のバス停が「環境局前」です。降車すると目の前が舞洲工場で、門を入るとすぐに担当者の出迎えを受け、5階の講義室に案内されました。講義室には神戸からの団体の先客がすでに待っていました。

最初にDVDによる工場の概略についての説明がありました。工事の建設は1997年から始まり、完成は2001年4月でした。総工費はおよそ609億円とのことです。建物は地上7階建て、一部地下2階で、ひときわ目立つ煙突は120mの高さがあるそうです。日本ではちょっとお目にかかれない独特のデザインはオーストリア・ウイーン生まれの画家フンデルトバッサー氏によるもので、「技術、エコロジーと芸術の融和」を訴えた氏の考えが取り入れられたとのことです。因みにデザイン料は6600万円ほどだったそうです。同様のデザインの工場は世界では他にウイーンのシュピッテラウ焼却場1か所とのことですが、筆者にはこのデザインは何となく違和感がありました。しかしながら、環境を大事にしていたという同氏が目指していた植栽が育ってやがて緑で覆われてくると印象も変わってくるかもしれません。同氏はこの工場の完成をまたずに2000年に亡くなられたそうです。

全体説明の後、団体ごとに異なるルートで見学に入りました。最初に案内されたのは3階で、ここからはごみクレーン越しに下のごみピットを眺めることが出来ました。比較するものが見当たらないので、現実の大きさが実感できなかったのですが、相当大きいということは分かりました。基本的に舞洲工場で受け入れているのは大阪市福島区、此花区から収集されたごみで、その内の粗大ごみは不燃性、可燃性に分けられて前処理されます。不燃性ゴミは回転式破砕機に通され15cm程度の大きさに砕かれます。その後、磁選機とアルミ選別機を通して鉄とアルミに分別されこれらはリサイクルに回ります。破砕機には鋼鉄製の刃が取り付けられていますが、4か月程度で角が摩耗してしまうので、一回は溶接で肉盛して再使用するようです。新品と摩耗した刃の実物が展示されていました。一方、畳などの大型可燃性ごみは低速回転式せん断破砕機を通して40cm以下の切片にされます。このように前処理したごみは、ごみピットへ集められ、そこからから焼却炉に送られます。焼却炉は1日当たり450tの能力の炉が二基あり、見学した日は点検直後で一基がスタートしたばかりで、もう一基は休止中でした。通常は二基で一日24時間稼働なので、一日当たり900tの処理能力があります。投入ホッパで焼却炉に送り込まれたごみはまず乾燥火格子で水分を飛ばされ、次いで燃焼火格子で燃やされます。さらに後燃焼火格子に運ばれ、残滓は灰出しコンベアで灰ピットに移されます。この灰は最終的に舞洲隣の埋め立て工事が進む夢洲で処分されるそうです。燃焼に伴い発生する様々な有毒ガスは、それぞれ最適な方法で除去され、無害化された後、大気中に放出される仕組みになっています。

写真 2 廃棄物燃焼処理熱を利用する発電用蒸気タービン

重要なことは燃焼熱を利用してボイラーで蒸気を発生させ、蒸気タービンによる発電を行い、工場内の電力を賄うだけでなく、余剰分は関西電力へ売電しているそうで、それが年間5億円程度になるとのことでした(写真 2)。さらに蒸気の一部は舞洲工場から少し離れた北側にあるもう一本の目立つ煙突のある大阪市の下水汚泥処理工場の舞洲スラッジセンターにおいて熱源等として有効に利用されている旨説明を受けました。

写真 3 見学風景(施設模型を見ながらの説明)

見学ルートには様々な説明パネル、実物あるいは模型が展示され、時には自分で操作する箇所もあって係員の説明を聞きながら、市民の内容の理解を助けるように良く工夫されていると感じました。

再び5階に上がり、巨大な粗大ごみをつかむクレーンをゆっくりと拝見しました。ガラス越しに粗大ごみピットの底を眺めることが出来、高さが40mあるそうです。クレーンの爪は組み立て玩具のガンダムの爪を彷彿させました。最後に中央制御室を窓越しに眺めました

(写真 4)。中央制御室風景

 

この処理工場は一日24時間体制で運転されているそうです。焼却炉が2基あるので、それぞれ1号炉、2号炉と計器パネルの上に表示があり、何となく原子炉を思い出してしまうのは仕事柄でしょうか?

大変大きなプラントですが、これだけの設備が総勢96名のスタッフで運転されていると伺い、これもコンピュータ制御のお蔭だろうと妙に納得してしまいました。

帰路はJR桜島駅に向けて環境局から少し離れた大阪ガス前バス停より乗車いたしました。梅雨の最中とは思えない真夏の太陽の照りつける一日でご参加いただいた方々、どうもお疲れ様でした。

最後に、お世話いただいた舞洲工場スタッフの方々に御礼申し上げます。(大嶋記)